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話題の分析手法「カスタマージャーニー」 ANAが顧客満足度の向上に活用し“世界最高”の評価

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グラフ1 「カスタマージャーニー」という言葉をご存じだろうか? ビジネス界、特にマーケティングの世界で注目され始めているので、耳慣れないという人も今から覚えておいて損はない。

 あなたが春物のシャツを買うとしよう。まず、商品のことを認知しなければならない。次に、その商品をどういう方法で買うか。それらを検討した上で購入に至る。購入後も着方を考えたり、それにふさわしいジャケットやボトムが欲しくなるかもしれない。この一連のプロセスを「旅=ジャーニー」に例えたのが、「カスタマージャーニー」だ。

 購買過程での顧客の行動やその間の心理的変化なども分析することがポイントになる。「そうは言っても、一人一人考え方や感じ方が違うのでは?」 その通り。実際に分析を行う際は、顧客の多様性に注意しなければならない。

 経営コンサルタントの竹内幸次氏が解説する。「いくつかのパターンに分けて分析するのが、一般的なカスタマージャーニーの方法となっている。顧客も市場も常に変化している。外部要因の影響にも配慮し、顧客の多様性を柔軟にひもといていくことが重要」

 竹内氏によると「カスタマージャーニーへの注目度が高まったのは、ビッグデータを分析したり、活用したりする技術が向上しているのもポイント」という。その日の天気で顧客の行動や心理状態が影響されることは以前から知られており、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどではすでに取り入れられている。今後、さらに分析技術が向上すれば、カスタマージャーニーの考え方がいろいろな業界で活用されるであろうこともうなずける。

 では、すでにどのくらいのビジネスマンがこの言葉を理解し、活用しようとしているのか。

グラフ2  生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(東京)が、25~59歳の会社員で、「カスタマージャーニー」という言葉を聞いたことがあると答えた500人にインターネットで調査した。「意味を理解している」のは全体の45%だった。その人たちに「どこでその情報を見たか」と尋ねたところ、最も多かったのが「Webニュース」(41%)で、以下、「雑誌」(34%)、「新聞」(28%)、「テレビ」(27%)と続いた。「取引先の人との話」(13%)、「同僚との話」(13%)、「上司との話」(12%)も侮れない。既に職場に浸透しつつあるところも見受けられる。

 さらに「意味を理解している」と答えた人に対し、企業のどんなシーンで役立つかを複数回答で質問したところ、69%が「顧客満足度の向上」と答え、57%が「自社サービスの課題発見」、同率で「サービス改善のヒントの発見」と回答した。

 そんな状況の中、すでに「カスタマージャーニー」の考え方を生かして、顧客満足度を高めている先進的な企業もある。英国・SKYTRAX社の「エアーライン・スター・ランキング」で最高評価を受賞している全日本空輸(ANA)だ。

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ANA2 ANAの長尾若氏は言う。「カスタマージャーニーの考え方の通り、私たちがお客さまにご提供するサービスは、飛行機に搭乗している間の時間だけではありません。登場前の時間や到着した後の時間もお客さまにとって大切な時間。サービスにご満足いただけるかは掛け算で決まると考えています。サービスをご利用いただく過程で一つでも0点のものがあれば全ての評価が0点になってしまいます」。サービスクオリティーを考えるときに、顧客の期待に応え、さらにその期待を超えることを常に意識しているという。「例えば、機内食をプロデュースするコノシュアーズに新たに4人のシェフ・料理人を加え、機内食のメニュー開発をさらに進化させています。また海外8都市16路線で著名ホテルとコラボレーションしたり、海外のお客さまにも人気の高い『一風堂』ラーメンの導入路線を増やしたりしています」

 そうした努力が評価され、ANAは、SKYTRAX社の「エアライン・スター・ランキング」で最高評価となる「5スター」を2013年から3年連続で受賞している。顧客が“5つ星”レベルのサービスを体感できる航空会社に認定される「5スター」を獲得している航空会社はわずか7社(2015年3月時点)で、国内ではANAだけだ。

 「5スター」を獲得するのは、海外では非常に注目度が高い。「今回の受賞には、海外のお客さまからの評価も後押しとなったように感じています。これからもお客さま一人一人に向き合い、サービスのクオリティー向上を進めていきたい」と長尾氏は意欲を見せる。

 ちなみに、英語で「旅」を意味する単語には、ジャーニー(journey)のほか、トリップ(trip)、トラベル(travel)などもあるが、ジャーニーは旅の中でも「比較的長期間の、目的や計画に縛られない気ままな旅」というニュアンスを含んでいる。顧客の気ままな行動を柔軟に捉えて分析を行うことが鍵といえそうだ。

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