まめ学

【選挙の舞台裏】全国比例は残酷比例?(下) “政党名より個人名”の難しさ

IMG_4076 全国比例の候補者や運動員が、広いエリアの活動とともに頭を悩ませるのが、いかに候補者の名前を有権者に書いてもらうか──ということだ。これには、当選順位の決定方法が関係している。

■衆参比例制度の違いと“笑えない”話

 衆議院議員選挙の比例制度では、自分がたくさん議員を当選させたいと思う政党の名を書けば良いのだが、参議院議員選挙の比例区は候補者の名前、政党名のいずれかを書くことになっている。この“いずれか”というのが候補者にとって曲者で、当選議席数は名簿に記載された個人名と政党名の合計で決まる一方、特定枠を除いた当選順位は「個人名での得票数の多さ」で決まる非拘束名簿式が採用されていることから、政党の支持者にどうにか自分の名前を書いてもらおうと必死なのだ。

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 そのため、選挙ハガキを作成する際、自分をアピールするだけではなく、わざわざ投票制度を図表にして掲載、通常だと比例は2枚目の投票であるので、「2枚目は○○に」と丁寧に投票方法を解説する候補者が多い。

 ただ、地域によっては、自治体の首長選挙や議会選挙などとダブル選挙になる場合もある。実際、過去の例では知事選と平行して行われたために、全国比例が3枚目の投票用紙となり、それを知らずにその地域で2枚目をアピールして、大量の無効票が出たという笑えない話も現実にあった。

■選挙ハガキの準備は大変

 ちなみに、選挙ハガキだが、出せる全国比例区の上限数は15万枚! ハガキの宛名書きの作業は膨大なものである上、15万人分の名簿を集めることも気が遠くなる。この点からも、全国比例は残酷比例と言えよう。

 ある、ベテランの現職候補者の秘書は「毎回、ハガキは悩みのタネ。選挙は6年に1回であるため、その間に転居やお亡くなりになった人も多く、前回の名簿がそのまま使える訳ではない。毎回、支援団体から来るものだけではなく、応援してくれる衆議院議員、地方議員などから名簿で協力を頼むことになる」と話していた。

 このようにハガキを出し、握手に握手を重ねて名前をアピールしても、たとえ、支持する政党の候補であっても、簡単に名前を書いてもらえないのだ。

■有名人は有利だけれど…

 かつて、比例区の前身の全国区の時代、青島幸男氏が現職として立候補した際に、街頭演説などの選挙運動を一切しないという独自の選挙活動を行い、公示後、部屋にこもる様子が話題になった。それでいて上位当選を果たしたのは、青島氏が超有名人気タレントであったためであろう。ただ、当時は個人名のみを記す制度だったため、現在の制度でこの運動が通用するかどうかは分からない。

 有名人が有利なのは確かなものの、たとえば、人から頼まれたというケースでは「えっと、誰だっけ?」となり、結局、政党名を書いてしまうことになりかねない。ましてや、組織内候補の場合、確実に候補者の名前を覚えてもらうことは大変な作業。青島さんのようによほどの有名人でもない限り、人の名前など簡単に覚えられるものではないからだ。

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■やっぱり、名前を覚えてもらうのは難しい!

 かつて、新党の全国比例の候補者を応援した関係者の話を聞くと、名前を浸透させるのがいかに難しいか実感できる。

 この関係者は自分の出身地である人口が2万人足らずの地方都市に出向き、親戚を中心に地域をくまなく回った。開票の結果はというと、「絶対に入れる!」という親戚だけで20人はいたのに、その地方都市で候補者が獲得した票は15票──確実に入れると思っていた親戚の数より票が少なかったのだ。こうなると笑うに笑えない。

 では、地域を回った活動が実を結ばなかったのかと言えば、そんなことはない。この関係者は「候補者の個人名は少ないながらも、所属する政党の票は周辺の自治体に比べて5倍も入っていた。つまり、確かに入れてはくれたと思われるが、投票所に行った時には個人名を忘れて政党名を書いた人が多かったのかもしれない」と苦笑する。

■終わりに

 さて、投票が終わった後の開票も、全国比例は長い時間待つことになる。現在、一部の自治体の選挙を除けば、ほとんどが即日開票となるが、参議院選挙の開票は地方区から開票が進むことになる。比例区は候補者が多いために、中位以下の当選者が明らかになるのは夜半以降。最後の当選者が決まるのは翌日早朝とあって、ボーダーラインの候補者やスタッフは徹夜で開票を見守ることになる。全国比例は、開票の時まで残酷比例なのだ。