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金融サービスとテクノロジーの融合が海外投資呼び込む アイルランド政府産業 開発庁が好調な成長要因を分析

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アイルランド政府産業開発庁

 

 アイルランド政府産業開発庁の日本事務所はこのほど、新型コロナの動向や、ウクライナ情勢、資源価格・物価の高騰といった世界情勢の中でもアイルランドは好調なペースで成長を続けているとして、金融サービスを巡る企業活動がそれを支える要因だとする見解を公表した。

 アイルランド政府産業開発庁は、アイルランドの産業開発、海外からの直接投資などを推進する目的で設立された政府機関。日本代表を務めるデレク・フィッツジェラルド氏が見解をまとめた。

 それによると、欧州連合(EU)欧州委員会が公表した「2022年春の経済見通し」で、アイルランドの2022年の経済成長率は5.4%、2023年には4.4%と欧州でかなり高い成長率を記録すると予測している。見解は、成長要因の一つがFDI(海外直接投資)の成功だと指摘。海外企業がアイルランドに拠点を置くなど投資をするのは、企業にとって魅力的な法人税率だけではなく、若い世代が多い人口構成と、国の積極的な教育への投資が生み出した優秀な労働力が雇用できる環境であることが大きな要因だとしている。

 アイルランドには、過去1年半に300社以上のグローバル企業が拠点を開設するなど投資を行っているといい、その中には米系証券会社フィデリティ証券、米系金融機関ステート・ストリート、フィンテック(ITと金融を融合させた新サービス)企業のストライプといった金融サービス企業が含まれているのが特徴だとしている。

 例えば、アイルランドにオフィスを開設した最初の外資系銀行の一つであるシティは、55年以上にわたって事業を展開。今年4月、現在のアイルランドの従業員数2500人を今後1 年で300人増員すると発表したという。

 フィッツジェラルド氏は、多くの金融サービス企業がアイルランドに集結するのは、国の積極的な教育への関与がもたらす優秀な人材に魅力を感じているからだと指摘。例えばアイルランドは、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の教育を受けた学生がEU内で最も多く、同分野での女性の比率が2番目に高い国というデータがあるとした上で、European State of Tech Report 2020では、欧州内でソフトウエア開発者と人工知能(AI)開発者が多い国として評価されていると説明している。

 こうした状況の背景には、アイルランドでは大学を卒業するまで、ほぼ全ての教育費を国が負担するため無料であることが挙げられ、大学や研究機関は定期的に産業界と連携して、テクノロジーやフィンテック企業のトップを招いて講義をするなど政府、産業界、学界が協力して人材の育成を行う環境が機能していると強調する。

 見解では、近年の金融サービスとテクノロジーの融合は、グローバル企業の投資に大きな変化を与えたことに加え、コロナ禍により思いもよらず加速したテクノロジーに対応した新たな金融ビジネスのため、優秀なエンジニアの雇用こそが、継続的な成長の原動力となっていると結論づけている。