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新天皇即位で恩赦の検討 恩赦とは?今の時代に適当なのか?

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新天皇即位にあわせて「恩赦」の実施が検討されている

来年(2019年)5月1日に新天皇が即位することに伴い、恩赦の実施が検討されているとの報道がありました。

そもそも「恩赦」とは、国家の刑罰権を行政権において軽減ないし消滅させる制度のことで、我が国では、内閣の行う事務として憲法73条7号に「大赦」、「特赦」、「減刑」、「刑の執行の免除」及び「復権」の5種類が定められるとともに、恩赦法が定められています。

このうち「大赦」は、政令で定められた特定の種類の罪の犯罪者につき刑罰権を消滅させるものであり、「特赦」は、有罪の言い渡しを受けた特定の者につき刑罰権を消滅させるものです。海外にも同様の制度があり、例えば、1987年に発生した大韓航空機爆破事件で死刑判決を受けた金賢姫が、最終的に恩赦により死刑を免れたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

恩赦は司法が確定した刑罰を行政が軽減・消滅させてしまうという性質を持つ

このような恩赦の一番の問題点は、司法権の判断によって確定した刑罰を行政権が軽減ないし消滅させるため、三権分立の原則に反することになるのではないかといったことです。しかし、恩赦はもともと憲法自体が認めている制度であるため、三権分立の例外として許容されているということができます。

恩赦には誤判の救済や量刑の不均衡を是正する役割もある

では、このような例外を設ける意義ないし必要性はどこにあるのでしょうか。いくつか挙げられていますが、主なものの一つが誤判の救済です。厳しい再審の手続では救済されないような案件に対して、恩赦を適用する必要があるというわけです。

そのほか、社会情勢の変化に伴い過去の量刑が相応しくなくなったと考えられる場合に、恩赦を適用することにより量刑の不均衡を是正することができるということや、刑事政策的な観点から犯罪者の改善更生に資するということなども挙げられています。

「時代遅れ」ではなく「時代に即した」制度運用を期待したい

このような恩赦制度は時代に即していないのではないかといった疑問もあるようです。確かに、天皇家の慶弔時に行われることが多いといった意味では、なんとなく時代に即していないともいえますが、上記のとおり、社会情勢の変化に伴い過去の量刑が相応しくなくなったと考えられる場合に必要な制度という点を強調すれば、むしろ時代に即応させるための制度ということもできるでしょう。

終戦直後の時期には、死刑囚に対し恩赦が行われた事例もあったようですが、直近に行われた恩赦は、現在の皇太子が成婚されたときのことで、その大半が公職選挙法違反だったようです。ただし、公職選挙法違反について恩赦の対象とすることについては、時の行政権が都合よく運用するのではないかといった懸念を否定することはできません。

被害者感情を考慮すると軽微な犯罪のみに抑制的に適用していくのが良いのでは

恩赦があくまでも三権分立の例外である以上、恣意的な運用は避けなければなりませんし、凶悪犯に対して適用するというのでは、被害者ないし遺族を蔑ろにするものとして国民の理解は得られないでしょう。これらを踏まえると、恩赦は軽微な犯罪にのみ抑制的に適用していくことが基本ではないでしょうか。

<筆者略歴>

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田沢 剛:弁護士

田沢 剛:弁護士 東京大学法学部卒業、同年司法試験に合格。2年間の司法修習を経て、裁判官に。名古屋、広島、横浜などの裁判所で8年間裁判官を務め、退官。裁判官として、一般民事、行政、知的財産権、刑事、少年、強制執行、倒産処理などの事件を担当。2002年に相模原市で弁護士事務所を開業。2005年に新横浜にオフィスを移転し、新横浜アーバン・クリエイト法律事務所を開設。現在に至る。オールラウンドに案件を扱うが、なかでも破産管財人として倒産処理にあたるなど、経営問題に辣腕を振るう。

(田沢 剛:弁護士)

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