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ながらスマホ自転車運転での死亡事故に有罪判決 重い?軽い?

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ながらスマホで自転車運転、死亡事故で有罪判決

昨年(2017年)、ながらスマホで自転車運転中に、歩行者と衝突し、死亡させたという事故で先日、自転車を運転していた加害者が重過失致死罪で有罪との判決が出されました(報道によると、禁錮2年、執行猶予4年)。

自転車の場合の処罰規定はどうなっている?刑法上は過失致死傷罪など

これまで、自転車というといわゆる「ママチャリ」のような、漕いでも速度に限界があるものが多かったと思いますが、今ではサイクリング用自転車や電動アシスト付き自転車の増加で、手軽で便利に移動できる交通手段としての利用が増えてきました。その一方で自転車による事故の相談は増加してきているように思います(注1)。筆者も交通事故の法律相談を受ける中で、ここ最近自転車による事故に関するものが急激に増えてきていると実感します。

参考:「自転車事故の実態」(自転車の安全利用促進委員会)

傘差し運転など危険な場合については、現在道路交通法改正を受けて、多くの地域で施行細則を設けて規制をしており、違反すると安全講習を受けないといけない場合が出てくるようになったのは記憶に新しいところです。

さらに、自転車運転中に交通事故を起こし、相手が怪我を負ったり、死亡した場合には、刑法上、過失致死傷罪にあたるとされており、重大な過失とされると重過失致死傷罪にあたることになります。過失傷害罪は30万円以下の罰金または科料、過失致死罪は50万円以下の罰金、重過失致死傷罪は5年以下の懲役、禁錮または100万円以下の罰金とされています。過失傷害は親告罪(裁判とするのに告訴が必要)となっています。

自動車と自転車では懲役・禁固刑の上限で違いがある

これに対して、自動車事故の場合は、かつては刑法の業務上過失致死傷罪で処罰されていましたが、今は平成26年施行の「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」を根拠に処罰されることになっています。これによると、飲酒による等危険運転ではない状態で起こした事故によって、相手に怪我を負わせたり、死亡させたときは、7年以下の懲役、禁錮または100万円以下の罰金とされており、懲役・禁錮刑の上限で重過失致死傷との違いが出てきます。

より重大な過失があるとされるのはどんな場合?具体的なケースを紹介

このように、過失致死傷と、重過失致死傷とでは、罰金の上限の部分で違いがある上、何よりも懲役・禁固刑という身柄拘束を伴う刑があるかどうかという大きな違いがあります。そのため、「重大な過失」があるといえるかによって、課される刑罰が異なってくることになります。

「重大な過失」とは、「注意義務違反の程度が著しい場合、つまりわずかな注意を払うことで結果の発生を回避できたのに、怠って結果を発生させた場合」をいうとされています。この場合は、発生した結果が重大なこと、結果を発生すべき可能性が大きいことは必ずしも必要ないとされています。ただ、これだけですと抽象的ですので、具体的なケースでどういった場合に「重大な過失」があるとされたか見た方がわかりやすいと思いますので、以下にざっと紹介してみます。

重過失が認定された裁判例ではどんな点を考慮している?

  • 無灯火・速度超過であること(時速約30Km、下り坂でノーブレーキ)
  • 雨交じりで無灯火、視界悪い
  • 飲酒してから自転車を運転、交通量多いのに俯いたまま走行
  • 赤信号を見落とし歩行者と激突
  • 夜間ロードレース用自転車を運転中、見通しの悪い橋であるに関わらず速度調整をせずに歩行者と激突し歩行者死亡
  • 電動アシスト自転車を高速度(時速15km前後)で走行して園児と衝突

このように、その当時の交通状況(歩行者で混雑、視界が悪い)、被害者の状況(俯いていた、高齢者や歩行者など)といった事情を踏まえつつ、そういった状況に対応できるような自転車の走行状況であったかどうかなどを総合的に考慮して、加害者側に「重大な過失」があったといえるかを判断しているといえます。

今回のケースではどんな点が「重大な過失」とみたか?

特に最近増加してきている、電動アシスト付き自転車の場合、速度も出る上、重量があるものが多いことから、歩道での事故の場合には重過失にあたるかどうかで大きく考慮されやすいといえます。

今回の事故は報道によると、
・電動アシスト付き自転車である上に、
・片方にスマホ持ち
・もう片方に飲料の容器を持って
・しかも画面を見ながらのながら運転

という状態だったようですので、比較的低速であっても前方不注視の状況で、すぐさま停止するという措置を取ること自体が難しいといえます。そのため、こういった事情を踏まえて「重大な過失」があるとされたといえます。

量刑はどんな点を考慮して決めた?

他方、量刑についてですが、自転車事故の場合はこれまでは罰金刑になることが割とあったのではないかと思いますが、最近では悪質な事例が増えてきており、懲役刑・もしくは禁固刑になることも増加しているようです。

量刑は、事故時の注意義務違反の程度、怪我や死亡といった結果の重大性の程度、被害者死亡の場合には処罰感情や被害弁償の程度、反省の有無等を踏まえて最終的に決めることになります。

今回は事故時の注意義務違反の程度や死亡事案であることを踏まえて禁錮刑が選択され、他方で速度が10km以下と低速であったこと、保険による賠償の見込みがあることなどから執行猶予付きの判決になったのではないかと思います。

まとめ

ながら運転については、以前ポケモンGOの事故が多発して社会問題になったことがありますが、この場合は自動車事故のため、量刑はより重くなる傾向があります。実刑のケースも複数見られるところです。

自転車も先の電動アシスト付きのものや、より軽く速度が出るものも増えてきていますので、これまで以上に運転する側には注意を求められるようになってきていると思います。運転する人ひとりひとりが気をつける必要があることはもちろんですが、自転車は免許制度でなく、自動車と違い講習を受ける機会も(違反しない限り)ないので、自転車走行の注意点や危険性などを改めて認識する場を設けることなども今後はより一層必要になってくるのではないかと思います。

<筆者略歴>

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片島 由賀:弁護士

片島 由賀:弁護士 島根県松江市生まれ 学習院大学卒業
平成19年3月 東京大学法科大学院修了
平成20年 弁護士登録(広島弁護士会)
法律業務全般を取り扱っています。
(離婚問題、相続、財産管理・遺言、交通事故、借金問題、退職・職場環境、その他)
広島弁護士会
人権擁護委員会(両性の平等部会)、民事・家事委員会、消費者問題対策委員会、弁護士業務妨害対策委員会、生存権擁護委員会、広島県中小企業家同友会(中支部)

(片島 由賀:弁護士)

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