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ふるさと納税の返礼品の規制より、住民税の税額控除を廃止すべき

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加熱する「ふるさと納税」の「返礼品」競争

総務省は、「ふるさと納税」の「返礼品」について、各地方自治体に対し、換金しやすい商品券などを贈らないように求め、また昨年4月には寄付額に比べ高額の返礼品を贈らないよう調達価格を寄付額の3割以下にする旨の通知を出していました。

しかし、総務省の通知に応じて改めようとしない自治体も少なくないことから、総務省は、法改正によってそのような自治体を「ふるさと納税」の対象から外すことを検討することにしたとの報道がされています。

総務省の資料によれば、「ふるさと納税」の受入額の合計は平成21年度の約77億円から平成29年度には約3653億円になっています。
参照:「ふるさと納税に関する現況調査結果

「ふるさと納税」の「返礼品」の調達費用の合計は、平成29年度には1406億円に上り、受入額の約38.5%になっています。それ以外の「ふるさと納税」の募集や受入にかかる費用を調達費用に合わせると、約2027億円(受入額の55.5%)となっています。

この金額をみると、各地方自治体が「ふるさと納税」として受入れた合計のうち半分より多くがその募集・受入のための費用ということになります。このように「ふるさと納税」全体の受入金額や費用が増加しています。

以上の状況から言えることは、「ふるさと納税」の増大に伴って自治体間での「返礼品」の競争が激化しているということです。同時に、「返礼品」競争によって「ふるさと納税」の金額が増えたとも言えるでしょう。

トータルで税収が増えるから返礼品も高額化して良い、という話ではない

トータルで「ふるさと納税」が増えるのだから、「返礼品」の競争も良いのではと言う向きもあります。

しかし、「ふるさと納税」が増えることは、単純に「税収が増えること」を意味しませんので、「返礼品」競争は正当化できないでしょう。

「ふるさと納税」が問題のある制度である3つのポイント

ここで、「ふるさと納税」のおかしな看板という性質について考察してみます。

「ふるさと」と言いながら自治体と無関係な人からの寄付も可能になっている

「ふるさと納税」は、そもそも、そのネーミングがおかしいのです。「ふるさと納税」という「寄付」を受ける自治体は出身地など関係している自治体に限定されているわけでもなく、、寄付をする人とこれまで全く関係のなかった自治体でも良いのです。

つまり、寄付の先が寄付をする人の「ふるさと」かどうかは関係ありません。そうなると、「返礼品」が魅力的か、露骨に言えば費用対効果が良い自治体に「ふるさと納税」の寄付先が集まることになります。これが制度趣旨から考えておかしな点の一つ目です。

自治体によって住民税が減収となり公共サービスの低下につながりかねない

さらに、「ふるさと納税」は、「納税」とは言うものの、「ふるさと納税」として寄付した金額に応じて課される所得税や住民税について税額が控除されるというものです。

総務省のホームページで紹介されている制度の概要で出ている例で言えば、年収700万円の給与所得者(夫婦・子無し)が3万円を「ふるさと納税」した場合、2000円の適用限度額を除く2万8000円について所得税が5600円の控除、個人住民税が1万2400円の控除ということになります。

この2万8000円については、もともと負担しなければならない税金の額に含まれるものです。所得税は国税で、個人住民税(都道府県民税と区市町村民税の総称)は地方税です。ふるさと納税をすることで、本来支払うべき現住所の自治体への住民税の一部が他の自治体に支払われることになります。
参照:総務省ホームページ資料

納税者の視点で見ると、「ふるさと納税」は、「返礼品」の分だけ節税になるということになります(正確には適用限度額つまり自己負担額2000円は除いて、です。)。

そして、「ふるさと納税」の寄付金額が大きくなればなるほど、「返礼品」に相当する金額も大きくなります。ただし、「ふるさと納税」として所得税・住民税が全額控除される金額には上限があります。その上限は、収入や家族構成によって異なります。

総務省のホームページに目安として示されている表によれば、「ふるさと納税」をする本人(独身)が年収300万円の場合の全額控除される「ふるさと納税」の年間限度額は2万8000円で、年収900万円で年間限度額15万1000円、年収1800万円で年間限度額49万3000円です。
参照:総務省ホームページ

現状として寄付額の4割近くが「返礼品」の調達費用ですから、これらの年間限度額の4割近くの価値の「返礼品」を受け取ることで事実上の節税となっているといえます。その節税は、年収が高い人ほど効果も大きいことになります。

年収の高い層の税負担を軽減するというのも一種の政策判断ですから、その当不当は各人でお考えいただければと思います。

自治体側からすると、「ふるさと納税」によって、自治体の中で、現在の住民への施策に使うべき住民税が減る自治体と現在の住民でない者から入ってくる寄付金を受ける自治体とが生じることになります。

税の減収が生じているという東京23区や横浜市や名古屋市などは税収が多いのだから減収でも問題ない、というわけではありません。大規模な自治体は住民の数も多くて公共サービスに係る費用も大きくなりますから、サービスの維持・継続に不安が生じます。そういった自治体の住民で「ふるさと納税」によって目先の節税での利益を得ても、自分の住んでいるところの自治体の公共サービスの低下による不利益を被りかねません。

自治体の「ふるさと納税」収入増加政策が地場の経済にマイナスになるリスク

また、「ふるさと納税」によって税収の上がる自治体については、他の自治体と「返礼品」の競争を続けるのに労力を費やすのが適切なのか、地場の経済に負担や混乱を生じさせていないのかというのも疑問です。

「返礼品」をどうするかは「地方自治」の問題ではない

「返礼品」が高騰化してもその「返礼品」を設定した自治体の判断だから「地方自治」として問題ないというようなことを言う人もいるかもしれません。

しかし、「ふるさと納税」は、現在住んでいる自治体の住民税や国税である所得税の控除に関わる問題ですから、「返礼品」を出す自治体だけの問題ではないので、「地方自治」ということで正当化されるものではありません。

結論:「ふるさと納税」自体の廃止か「返礼品」制度の廃止が妥当なのでは

法律に基づく制度は、法改正によって廃止や内容の変更されることがあるのは当然です。「ふるさと納税」の「返礼品」について廃止や規制については、憲法上の問題もなさそうです。

「ふるさと納税」については、上記のように制度そのものに問題がありますので、廃止して良いと私は思います。また、「ふるさと納税」を当面続けるとしても、「返礼品」についての法規制を強化するという総務省の方針は、税収減の自治体の問題を解決しないので、良いとは思いません。

「ふるさと納税」の制度を続けるなら、「返礼品」についての規制よりも、税額控除の対象を国税の所得税のみにして、地方税の住民税の控除をやめるべきだと思います。

<筆者略歴>

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林 朋寛:弁護士

林 朋寛:弁護士 北海道江別市生まれ。平成17年10月弁護士登録(東京弁護士会)、平成28年3月に沖縄弁護士会から札幌弁護士会に登録替え、北海道コンテンツ法律事務所設立。個人の自由や財産の保障に関心。企業経営者の個人的相談からビジネス上の問題に対応。クリエイター、中小企業や各種法人等を顧客とする。国や自治体関係の問題には行政処分や税務調査、審査請求から受任。

(林 朋寛:弁護士)

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