カルチャー

ノムさん目指してボールで“会話” 京丹後市でキャッチボール大会

優勝した加悦フレンズ。
優勝した加悦フレンズ。

 「三顧の礼」は、三国志の英雄劉備が三度訪ねて軍略の天才諸葛亮孔明を軍師に迎えた中国の“故事”にちなむが、現役を引退した野球の天才イチローは「国民栄誉賞」授与の政府打診を三度断り辞退した。地元愛知県の「県民栄誉賞」も辞退しているから“固辞”の姿勢は徹底している。

 国民栄誉賞の第1号受賞者は世界のホームラン王・王貞治氏。王氏は「彼なりの考えがあるんだろう」とイチローの考えを尊重した。

 国民栄誉賞の全受賞者27人(2019年4月12日時点)のうち野球界は王氏、衣笠祥雄氏、長島茂雄氏、松井秀喜氏の計4人。いずれも球界のスーパースターだが、スーパースターはこの4人に尽きるわけではない。野球好きが数え上げれば両手はすぐ埋まる。

 「ON(王氏と長島氏)がヒマワリなら、おれは月見草」の名言で知られる野村克也氏などはすぐ名前が挙がる偉大な野球選手の一人。現役のキャッチャー時代、打者の耳元に一言ささやき動揺させる「ささやきのノムさん」、監督時代はスポーツ記者を楽しませる「ぼやきのノムさん」、ベテランを活躍させる「再生野村工場」など、独特のキャラクターで玄人好みの野球ファンを魅了した。

 多数の著書には、時に毒を含んだ含蓄のある言葉が並ぶ。言葉の背後にテスト生から戦後初の三冠王に上り詰めた長い苦労の豊富な人生経験がある。

 イチロー引退への最近のコメントも“辛味”がぴりりときき“ノムさん節”は健在だった。

 「『俺は人とは違う』アピールが見え見えに伝わってくる」「確かに、野球においては天才だ。天才から、われわれ凡才に理解できるような話は出てこない。だから、話を聞いてもつまらない」(4月9日・週刊ベースボールオンライン)。

 野村氏は球界5人目の国民栄誉賞には選ばれていないが、野村氏の生まれ故郷の京都府京丹後市には昨春「野村克也ベースボールギャラリー」がオープンし、同氏の輝かしい功績をたたえている。

野村克也氏の地元・京都府京丹後市の「京丹後夢球場」で開かれたキャッチボールクラシック「京都府予選大会」。
野村克也氏の地元・京都府京丹後市の「京丹後夢球場」で開かれたキャッチボールクラシック「京都府予選大会」。

 その京丹後市の「京丹後夢球場」で、2分間のキャッチボール回数を競う、日本プロ野球選手会主催「キャッチボールクラシック2019京都府予選大会」(エイブル、トンボ学生服、ロキソニンS、SSKなど協力)が4月7日開かれた。計16チーム・144人の小学生が参加し、99回を記録した「加悦フレンズ」が優勝した。

 野村氏の少年時代と変わらず野球はいまでも盛んな地域のようだ。優勝した加悦フレンズは4人の女子選手を含む。これらの野球少年・少女にとっては、イチロー引退に関するノムさん節の“滋味”を味わうにはまだ早すぎるかもしれないが、郷土の生んだ野村氏は憧れの野球選手に違いない。

2分間のキャッチボール回数を競い合う子どもたち。
2分間のキャッチボール回数を競い合う子どもたち。

 キャッチボールクラシックの合言葉は「仲間が取りやすいところに…思いやりの心で投げよう」。

 歌人で劇作家の寺山修司氏はキャッチボールを、ボールを投げ受け合う者同士の「会話」と評した。ノムさんの少年時代と今も、キャッチボールのこの本質は変わらない。