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浮かび上がる孤独の輪郭 ドイツ映画『希望の灯り』

(C)2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH
(C)2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH

 生きることの厳しさを浮き彫りにしつつも、愛おしい寓話のような作品だ。ドイツ・ライプツィヒ近郊の巨大スーパーを舞台に、そこに働く人々の慎ましく実直な日々と、静かに交錯する内面を描いた映画、『希望の灯り』が公開されている。

 無口な主人公クリスティアンは、新人の在庫管理担当。つかず離れず、父親のように見守りながら仕事を教えるのは、旧東ドイツへの郷愁を胸に秘めるブルーノだ。菓子担当のマリオンに恋心を抱きつつ、休憩室でコーヒーを飲みながらクリスティアンが交わす数少ない会話。タバコを吸いながら聞くブルーノの追憶。互いを大切に思うが故に、それぞれが抱えるさまざまな事情に干渉し合うことなく過ごす彼らが、悲劇の後にその慎ましさを後悔する姿は、胸が痛くなるほど愛おしい。

 印象的なのは、フォークリフトと音楽。閉店後に店内にかかるバッハ。高く積まれた在庫の棚の間を滑るように行くフォークリフトが“のっている”のは、シュトラウスの旋律だ。映画の終盤、闇に沈む冷たい夜の風景の中で、巨大スーパーの在庫棚の間が“帰る家”になっていることに気付く。だからかもしれない。原題は”In the Aisles”(通路で)だ。ドイツ「再統一」後の変化に気持ちを置き去りにされた人々の苦悩と孤独の輪郭が、アウトバーンを行く長距離トラックの前照灯に浮かび上がるような作品だ。

 無口なクリスティアンを演じたフランツ・ロゴフスキは、この作品でドイツアカデミー賞主演男優賞を受賞している。

text by coco.g