社会

動揺にもヒエラルキーがある ノートルダム修復の巨額寄付へ疑義

ノートルダム大聖堂
ノートルダム大聖堂

 猛火の中で折れる尖塔。パリのノートルダム大聖堂の火災の様子に世界中が釘付けになった。永遠にそこにあると思っていたものが失われる恐怖や喪失感。直後から続々と集まっている企業や富裕層からの寄付金はすでに8億ユーロ、日本円にして約1000億円を超えていると言われる。そんな中で、フランス代表でも活躍した元サッカー選手、リリアン・テュラム氏が、ノートルダムの火災と、地中海で命を落とす多くの難民の悲劇が人々に引き起こす感情を比較し、「動揺の仕方にもヒエラルキー(序列)がある」と疑義を呈した。

 元々、人種差別問題などと闘う活動に積極的に関わってきたテュラム氏。パリジャン紙など地元メディアが伝えたところによると、偏見や差別をテーマにした中高生との交流会で、テュラム氏がコルシカ島を訪れた際、「僕もパリジャンだから、大聖堂の火災にはもちろん驚き、動揺した。こんな大惨事を前に動揺するのは当然のこと」と火災に言及。「それでも、そういう感情の中にもヒエラルキーがあると思うことがある」と話した。「地中海を渡ろうとして、多くの人が命を落としている時、世界はこんな風には動揺していないように見える」。

 また、「他人が入ってくるのを嫌って壁を築こうとする人間が、一方で消火を手伝おうか?とツイートする」と、移民の流入を阻止するため、メキシコ国境の壁建設を計画しているトランプ米大統領の行為も皮肉った。

 フランス国内では、大聖堂修復のための寄付金がさまざまな地方自治体からも集まっているが、各地にはやはり修復を必要とする文化遺産がある。パリのノートルダムはもちろん大切だが、地元は後回しなのか?という声も上がり始め、一気に集まった巨額の寄付金が、新たな論議の的になっている。

text by coco.g