カルチャー

第2回 弁当の日情報交換会 【弁当の日】

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 香川県綾川町の滝宮小学校で2001年始まった子どもが一人で弁当を作る「弁当の日」。現代の子ども
を取り巻く「食のあり方」に投じた小さな一石は、同町で生まれた讃岐うどん同様、大きな取り組みとなっ
て全国に広がっている。
 東京都内で6月14日開かれた「第2回弁当の日情報交換会」(弁当の日応援プロジェクト主催)には、
食育に取り組む約80人が参加。滝宮小学校長時代に弁当の日を始めた竹下和男氏の講演や弁当の日を応援
するスーパーマーケットとPTAの報告を聞き、弁当の日の意義について理解を深めた。

▼100年先を見据えた活動 弁当の日提唱者 竹下和男氏

竹下和男氏
竹下和男氏

 2001年の提唱以來、全国行脚し、弁当の日の意義を説く講演会を2300回ほどこなしてきました。聴
講者は約35万人。今年4月古希を迎え世代交代を意識する年齢になりましたが、100年先の「より良き
人間社会」を見据えて長年取り組んできた弁当の日が実を結び始めています。

 人間には類人猿にない「人間脳」があります。だから人間は他人の苦境にもらい泣きする。およそ25種
類ほどいた「人類」の中で生き残ったのは我々ホモサピエンスだけ。次世代を育てる能力が一番優れていた
からです。「子育ての能力」が人間を人間たらしめているのです。医者から1時間ごとに母乳を与えよと言
われても「夜寝るから、やらない」母親がいます。「子供なんか産むんじゃなかった。子供がいなければも
っと服や化粧品も買え、遊べた」という会話で盛り上がる母親たちが存在します。  

 なんでこんな事になるのか。答えは簡単、そのように育てられたから。「掃除、洗濯、食事の準備・片付
けしなくていい」と育てられたからです。特に「人間脳」が成長する8~19歳の時期にそう言われ続ける
と、自分は何もしなくてよい「世話をしてもらう人」に育ってしまいます。

 脳は3歳までに70%完成します(「スキャモンの発育曲線」)。脳の細胞は死ぬまで変わりません。「
この子さえいなければもっと遊べた」という母親の感性はその子どもの脳の細胞遺伝子に刻まれ、その先さ
らに子どもが生まれるたびに、次の世代、そのまた次の世代へと伝わる可能性があります。

 このままでは「まずいぞ」と気付いてほしい。弁当の日はこの現状を変えるために始めました。
弁当の日は、▽子どもだけで作る▽食材の買い出しから片付けまで保護者は手伝わない▽小学5、6年生か
ら始める―という3つの原則を設けました。点数は一切つけません。子どもの自立が目的だからです。

 多くの児童・生徒は「食事を作ることは自分の仕事ではない。作るのは親」と思っています。そんな児童
生徒は、子どもに食事を作らない親、食事の代わりにお金を渡す親になる可能性があります。 

 弁当の日を経験した子どもたちが二十歳になって言いました。「最初は一人で弁当を作った子はクラスに
いませんでしたが、回を重ねるごとに一人で作れる子が増えました」。子どもたちは、お弁当作りを繰り返
すうちに料理の楽しさに気付きました。大人になり恋人のいる教え子は「お弁当は1つ作るより2つ作るほ
うが楽しい」と言います。子どもが生まれた教え子は「子のために料理することは楽しい、子育ては楽しい」
と語ります。人間は人が喜んでくれると成長します。「料理は楽しい」「子育ては楽しい」という大人の存在が、料理や次世代を育てる育児の楽しさを後世に伝えます。

 子どもはお弁当を無我夢中で作っているうちに「料理の楽しさ」「好きな人に料理を作る喜び」を覚えま
す。そして子育てを楽しむ親になります。
 弁当の日が全国に広がれば日本は変わります。100年後の日本を変える意気込みで弁当の日を始めまし
た。弁当の日を始めてから19年間、お弁当を作った子どもたちの誇らしげな笑顔をカメラに収めてきまし
た。多くの子どもたちが弁当の日で“ 感謝の心”と“自身”を得て成長してくれたと思っています。

▼食で世直しの考えに共感 フレッセイ社長室 

斎藤こずえ氏
斎藤こずえ氏

 

 当社は群馬を中心に埼玉、栃木の計3県で50店舗のスーパーマーケットを展開しています。植木威行社
長が、弁当の日提唱者竹下和男先生と出会ったことで「スーパーマーケットが食を通じて世の中を変えてい
ける」と確信し、弁当の日を軸にした食育活動を始めました。私はレジ担当の責任者から社長室に3年前異
動となり、弁当の日を柱に活動する社長直轄の食育担当を拝命しました。

 弁当の日を実施する群馬県内の中学校のそれぞれの地元店舗では、売り場に弁当の日のポスターを掲示す
るなどして生徒のお弁当作りを地域全体で応援する雰囲気を盛り上げてます。

 地元PTA会長からの「企業が参画することで弁当の日の取り組みの幅がこれほど広がるとは思ってもいなかった」との感謝の言葉は、いまも食育に取り組む際の私の原動力になっています。

 弁当の日が終わった後、生徒たちの頑張りをたたえ生徒たちが作ったお弁当を紹介するポスターを店内に
展示します。保護者の皆さんはじめ多くのお客様は興味深く見てくださいます。

 教職を目指す群馬大教育学部の学生さん対象の食育講座を年2回開き、当社の弁当の日応援の取り組みな
どを説明しています。将来子どもたちに食の重要性を教える側になる学生たちに弁当の日の取り組みを説明
することはとても大切なことです。この学生たちと将来、一緒に弁当の日に取り組む日がくることを期待し
ています。

 「食を大切にする社会貢献活動は我々が想像する以上に尊いものだ。私たちは食で地域を元気する、食で
世直しする」。これが社長植木の決意です。

▼一人で作る楽しさ伝える 東京都足立区立第一中元PTA会長 小林雅行氏

小林氏●
小林雅行氏

 弁当の日当日は、お弁当を作るから保護者も普段より早く起きなければなりません。「負担が大きい」と
いう保護者が当初多かった。

 保護者は弁当の日の前日から買い出しし、当日は手や口を出してお弁当を作っていること当初は多かった
ようです。結局子どもは何もせず、遅く起きて「もう弁当できた」という光景が多くの家庭で見られました。
さらに「弁当が作れない」という若い先生がたくさんいました。

 しかしPTA役員として弁当の日当日の教室を訪れると、子どもたちがみな笑顔でお弁当を囲んでいる。
その光景に感動し、弁当の日をPTA活動のメインにしようと考えました。そこで多くの保護者に弁当の日
当日の子どもたちの笑顔を見てほしいと願い、まず2013年に提唱者の竹下先生を招き、生徒や保護者、
教職員対象の3つの講演会を開きました。その日は弁当の日の話題で家族の会話が弾んだようです。

 2018年も竹下先生に再度、講演してもらいました。このときは対象を広げ、近隣中学校のPTAと一
緒に講演会を開き多くの保護者に参加してもらいました。

 弁当の日は全生徒が参加しますが、3年生最後の弁当の日のテーマは「誰かのために作るお弁当」でした。
子どもたちが作ってくれたお弁当を保護者が持ち寄り、一緒に食べるランチ会を開きました。そこで和やかな
雰囲気の中でお弁当を食べながら先生方のご意見や保護者たちの悩みなどを聞きました。貴重な意見交換の
場として喜ばれました。

 特別支援学級の子どもたちは、弁当の日の実施前に学校で弁当づくりの練習をしています。お弁当を作り
終えるととても素敵な笑顔を見せてくれます。小中学生の時から弁当の日などを通じて「自分一人で
できる楽しさ」を子どもたちに大人がうまく伝えていかなければならないと思います。