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名古屋・小5いじめで同級生が10万円以上要求 「恐喝」に当たるのか?

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2019年12月2日、愛知県名古屋市の小学5年生の男児が、同級生6人から繰り返し現金を要求され、あわせて10万円以上を支払っていたことがわかりました。市教育委員会は、いじめの中で被害者に深刻な影響を及ぼした「重大事態」と認定しました。

報道によると、被害児童は「お金を持ってこないと遊ばない」と言われ、8月から10月にかけて、自宅から現金を何度も持ち出し、同級生の飲食やゲームの代金として使ったようです。お金の持ち出しに気付いた母親が学校と警察に相談し、事態が発覚。同級生の行為は「恐喝」に当たるのでしょうか。法的な責任は?弁護士の片島由賀さんに聞きました。

「恐喝」は脅迫・暴行があったかどうかが判断の分かれ目。法的処分は特に小学生では難しい

Q:今回のように、同級生の要求が原因で子どもがお金を持ち出し、同級生が使った代金を支払った場合、被害金額を弁償してもらうことは可能ですか。
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法的には、同級生の金銭要求が恐喝など不法行為にあたるかを争点に、民事訴訟による損害賠償請求を行うことになります。同級生に脅されたことで、お金を持ち出したという因果関係の証明が必要です。

LINEなどでやりとりが残っている場合は、有効な証拠となります。目撃者の証言だけでは、信頼できる証拠となり得ない可能性もあります。被害額について、今回のように自宅の貯金箱から持ち出した場合などは、わかる範囲での申告となります。

民法では、12歳程度から、「自分の行為が法律に反しているかを判断できる」として、本人に責任を問えますが、実際には賠償能力がないため、相手の保護者に対して「責任無能力者の監督義務者等」の責任を問うことになります。

この場合、親の監督が不十分であったせいで、被害を受けたと因果関係を証明することが必要です。いじめに起因した問題に関しては、何らかの予兆があることが多く、保護者が責任を免れるのは難しい場合が多いです。

ただ、被害児童と保護者がどのように解決したいかによって、対処法は変わります。「警察沙汰にして事を大きくしたくない」という場合は、相手の保護者と直接やりとりをして、当事者間で解決できるケースもあります。

一方、警察に捜査を依頼すると、いじめの内容を含め、新たな証拠が出てくる可能性もあります。

Q:金銭を要求した同級生の行為は「恐喝罪」に当たりますか?その場合、法的責任を問うことはできますか?
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今回のケースが、刑法の「恐喝罪」に当たるかどうかは微妙です。

成立する要件の一つに、脅迫や暴行を用いたかどうかがあり、例えば、「お金を持ってこないと殴る、殺す」と言われ、自身に危害が及ぶ可能性があった場合は脅迫、実際に殴られた場合は暴行があったと認められ、「恐喝罪」に当たる可能性が高くなります。けがなどの被害があった場合は、傷の写真や医師による診断書などを証拠として残しておくといいでしょう。

「恐喝罪」に当たる場合でも、刑法上では、14歳未満の者は責任能力がないものとして刑罰が科されません。14歳以上20歳未満では、家庭裁判所の審判により、保護観察処分となり定期的に保護観察官及び保護司による面談を受けるか、被害の程度や回数などにより責任が重いとされる場合は、少年院に送致されます。

Q:これまで「恐喝罪」に当たると認められたいじめに関する裁判例では、どんな処分が下されたのでしょうか?
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平成6年の愛知県西尾市中学生いじめ自殺事件では、当時中学2年生の男子生徒がいじめにより自殺。「いじめられてお金をとられた」という内容の遺書が見つかり、小学6年生のときから被害があったことが発覚しました。

同級生11人がいじめに関わり、被害額は約110万円。主犯格の4人が、恐喝の容疑で書類送検され、うち3人が初等少年院に送致、1人は教護院(現在の児童自立支援施設)に送致される保護処分となっています。

また、平成12年の名古屋中学生5000万円恐喝事件では、当時中学3年生の男子生徒が、約8カ月にわたり同級生グループから繰り返し恐喝され、被害総額は5000万円以上に上りました。被害生徒は入院するほどの暴行を複数回受け、被害届を提出。15人の逮捕者が出ました。うち9人が中等少年院に送致、6人が保護観察処分を受けています。

ただ、被害者の自殺など生じた結果の重大性や、被害額が大きいなど行為の悪質性があると判断される場合でない限り、小・中学生に対する刑事処分は期待できません。多くは、不処分か保護観察処分になります。

Q:名古屋市教育委員会が認定した、「いじめの重大事態」。具体的に、どのような場合が当たりますか?
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「いじめ防止対策推進法」第28条第1項では、「いじめの重大事態」の定義は、いじめにより当該学校に在籍する児童等について、「生命、心身又は財産に重大な被害が生じた」(第1号)、「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている」(第2号)と疑いがあると認めるとき、と規定されています。

文部科学省による「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年3月)では、金品等に重大な被害を被った事例として、「複数の生徒から金銭を強要され、総額1万円を渡した」 「スマートフォンを水に浸けられ壊された」を挙げています。

被害額に関わらず、期間や回数、加害人数のほか、本人が長期間欠席しているなど、複合的に判断され、学校として何らかの対処が必要とされた場合に認定されます。

Q:いじめの「重大事態」に認定されると、その後どのような対応が期待できますか?
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「いじめの重大事態の調査」についても、前述のいじめ防止対策推進法第28条で規定されています。

学校(学校の設置者)による調査の目的は、いじめの事実の解明です。専門家などによる組織を作り、当事者以外にもアンケートなどで何が起きたのかを調査。被害児童と保護者に、その情報を提供しなければなりません。被害児童や保護者が、調査結果に不足や不満を感じる場合は、再調査の申し立てもできます。

報告の結果に基づき、学校は被害にあった児童の状況に応じた継続的なケアを行います。必要に応じて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど専門家の派遣の活用も可能です。調査結果でいじめが認定されている場合には、加害児童についても個別に指導を行うことになります。

Q:金銭がからむいじめの被害者、加害者にならないために、親ができることはありますか?
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被害者に万引きをさせるなど、お金がからむ子どものいじめは以前からあり、中学生以上で多く起こっている印象です。子どもたちがお金について、ゲーム感覚で簡単に考えている傾向があり、スマホの普及に伴い、LINEなどでやりとりがエスカレートするケースも起こっています。

被害者は、お金がからむいじめで悩んでいても、自分から親には言いにくいものです。日ごろからのコミュニケーションを大切に、子どもにおかしい様子がないか常に気を付けておきましょう。

また、おこづかいの管理などを通して「お金は簡単に得られるものではない」と、お金の大切さを教育することも、子どもが安易に加害者側にならないように予防する効果があるでしょう。

<筆者略歴>

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片島 由賀:弁護士 島根県松江市生まれ
学習院大学卒業
平成19年3月 東京大学法科大学院修了
平成20年 弁護士登録(広島弁護士会所属)

片島 由賀:弁護士

(片島 由賀:弁護士)

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