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兵庫県明石市長の暴言再び 市長も取り組んだ「アンガーマネジメント」で怒りの正体と向き合い方を知る

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兵庫県明石市の泉房穂市長が、市のイベント開催をめぐり、新年会の席上である市会議員と口論になり、「やめてまえ」と暴言を浴びせていたことが発覚しました。市長は、昨年(2019年)1月にも、市幹部に浴びせた「火をつけて捕まってこい」というような暴言が大きな問題となり辞職。3月の市長選で再当選を果たしました。

今回の暴言を受けた会見で、「(昨年の暴言問題以降)アンガーマネジメントを受講したり、本を読んだりし続けている」と話しました。怒りと上手に向き合うアンガーマネジメントの効果とは。普段の生活で取り入れられることはあるのでしょうか。アンガーマネジメントコンサルタントの谷川由紀さんに聞きました。

自分の中の「べき」との間に生まれるギャップが怒りに。すぐに反射せず本当に怒る必要があるのかを考える

Q:「アンガーマネジメント」とはどのようなものですか?
——–
1970年代にアメリカで生まれた心理トレーニングで、怒りの感情を後悔しないようにコントロールする技術です。

誤解されることが多いのですが、怒りのコントロールとは「怒らない」や「怒らないようにがまんする」ことではありません。必要な場合には、適切な方法できちんと怒りを表現できるようになることを目指します。抽象的な精神論ではなく、「技術」として身につけられるのが特長です。

Q:「怒り」の正体を教えてください。
——–
怒りの正体は、自分の中の「〇〇すべき」という考えにあります。相手やその行為が、自分が思う「当たり前」や「常識」とギャップがあるとき、人は怒りを感じます。

例えば、「上司は部下をフォローすべき」と思っている人が、社内で大きなトラブルがおきているのに上司だけ先に帰宅してしまった場合。その理由が飲み会なら、「上司も一緒に残業して当たり前」という理想とのギャップが生まれ、怒りを感じます。一方、帰宅の理由が入院中の家族のお見舞いなら、自分も「帰宅して当然」とギャップが生まれず、怒りを感じにくいということがあります。

相手や相手の行為を変えるのは難しいことですが、自分の中の「べき」をコントロールすることは可能です。イラッとしたときに、自分の中で裏切られた「べき」は何なのかを一度考えましょう。

その上で、「べき」の境界線を広げていきます。アンガーマネジメントでは「思考のコントロール技術/三重丸」という手法があります。自分の中の「べき」を分類し、次の3つの円で表します。

円の内側から、「①自分の理想と同じ範囲」。その外側に「②理想とは違うが、許せる範囲」。さらに外側に「③許せない範囲」があります。

このうち、②③がイライラするときです。②の許容できる境界線を「せめてここまでなら許せる」と広げましょう。自分が信じている「べき」と、相手が思う「べき」は異なります。相手の「べき」も認めることで、自分もラクになります。

Q:近年、研修などにアンガーマネジメントを取り入れる企業も増加しているようです。アンガーマネジメントを身につけると、どのような効果がありますか?
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職場では、パワハラ防止に効果があります。上司が、まず必要な「怒り」なのかを考え、相手を考慮した怒り方に変わるため、ハラスメントになりにくいと考えられます。さらに、年齢や性別、国籍など、多様性を認めるダイバーシティ経営においても、それぞれの「べき」を認め合い、Win-Winの関係を築くことができるアンガーマネジメントは有効です。

子育て中で、子どもに怒ってしまうことが多いという人は、「感情はぶつけるものではなく、伝えるもの」と意識してください。「なぜできないの?」と感情的に責めるより、「次はこうしてね」など、建設的に子どもに伝えることで、「あの時あんなに怒る必要はなかった」など、後から悔やむことが少なくなります。

また、子どもにもアンガーマネジメントは効果的です。アメリカでは、一部の小学校でプログラムとして導入されており、日本でも今年度から中学校の道徳の教科書に、「生命尊重」「いじめ防止」につながるテーマの一つとして、アンガーマネジメントが掲載されています。

子どもが、怒りの裏に隠された「悲しい」「つらい」などマイナスの感情に気付き、感情を上手に表現し、吐き出す方法が身に付きます。将来、つらいことに直面したときの対処法や、社会に出たときのコミュニケーション力にもつながります。

Q:アンガーマネジメントでは、怒らないことを目指すのではなく、必要な場合は上手に怒るとされています。上手な怒り方とは?
——–
まず、相手が主語になる「YOU(ユウ)メッセージ」ではなく、私を主語にする「I(アイ)メッセージ」を使うことを意識してください。例えば、約束の時間に遅れた人に対して、「どうして時間が守れないのか」と責めるより、「私は、時間を守ってくれないと困る」とする方が、相手に伝わりやすくなります。

また、怒るときには、下記のようなNGワードを使わないようにしましょう。

・責める言葉=「なぜ」「どうして」
・過去を持ち出す言葉=「前から言っている」「何度も言っている」
・決めつける言葉=「いつも」「絶対」
・人によって基準があいまいな、程度を表す言葉=「きちんと」「きれいに」

Q:明石市長も受講したという「アンガーマネジメント」のトレーニング。普段の生活ですぐに取り入れられることはありますか?
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イラっとしても、すぐに「反射はしない」と心がけてください。売り言葉に買い言葉で応じても、いい結果は生まれません。諸説ありますが、怒りのピークは、脳内のアドレナリンが広がる4~6秒だと言われています。怒りを感じてから6秒をやり過ごせば、冷静になれます。

このときに大切なのは、怒った状態のまま、ただ6秒をカウントするのではなく、気持ちを切り替えることです。

アンガーマネジメントでは、100から7ずつ引いた数を数えていく「カウントバック」という手法があります。強制的にまったく別のことを考え、怒りをトーンダウンさせ、冷静になってから、本当に怒る必要があるのかを考えます。

怒りは、0か100か、の二者択一ではなく、実は「幅」があるものです。「温度計」という、怒りの程度を数値化する方法があり、10点満点で3点以下なら「まあいいか」と許す、4~6点は「もやもやが残る怒り」、7~9点は「憤りを感じる強い怒り」、10点は「絶対に許せない」となります。

必要のない怒りは、相手だけでなく自分も疲れます。怒りで後悔しないよう、普段から少しずつ意識してみてください。

<筆者略歴>

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谷川 由紀:社会保険労務士 大学卒業後、旅行会社で勤務。その後、人材業界にてキャリアコンサルティング、営業業務に携わる。在職中の2009年に社会保険労務士試験合格。その後、勤務社労士を経て、2013年に開業、高松太田社労士事務所を設立

2014年度より、厚労省委託事業「育休復帰支援プランナー」として、香川県はもとより、徳島、愛媛、岡山、広島、山口、兵庫等の約200社の育児と仕事に悩みを持つ中小企業に対し、“働きやすく、長く働き続けられる会社”づくりを目指し、企業と従業員双方に対する支援を行う
2016年度は、厚労省委託事業「介護プランナー」として、介護と仕事の両立支援に悩みを持つ中小企業に対する支援業務、厚労省委託事業「女性活躍推進アドバイザー」として、行動計画の策定支援、また女性活躍推進法セミナーに登壇する

また、約11年間の人材業界での経験、外国人技能実習生の巡回指導のキャリアを生かし、ダイバーシティ・非正規雇用問題に関するシンポジウムでは基調講演、パネルディスカッションではファシリテーターを務める
その他、労務問題や年金相談、「アンガーマネジメント(怒りのコントロール技術)」講師として、企業や団体、個人に向け、ハラスメント防止、「お互い様の職場環境づくり」に向けた多様な研修を行っている

谷川 由紀:社会保険労務士

(谷川 由紀:社会保険労務士)

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