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「トナラー」に松本人志も困惑、他人との距離が近い人、それを不快に感じる人の心理とは

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お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんがテレビ番組の中で、ジムや電車などで、他のスペースが空いているのにも関わらず隣に来る「トナラー」の視聴者投稿に激しく共感し不満を爆発させました。電車やバスなどで、「満員でもないのに、見ず知らずの人がわざわざ隣にやってきて座りストレスを感じた」という経験を持つ人は意外に多いようです。

それでなくても、この時期、多くの人が新型コロナウイルス感染の不安から、他人との不必要な接触を控えたいと思っているはず。社会全体が他人との距離の取り方に神経質になっているときに、自分とは違う距離感覚は、これまで以上に大きなストレスを生む要因のひとつになりそうです。

多くの人が行き交うオープンスペースで、楽に過ごせる空間「パーソナルスペース」は人によって違うのでしょうか。なぜ、他人のスペースを侵すような行動をとる人がいるのでしょう。また、それをことさら不快に思う心理は、どのようなところから起因するのでしょう。心理カウンセラーの青柳雅也さんに聞きました。

不快に思う他人との距離感は人が心に持つ「縄張り意識」。踏み越えてはいけない心の境界線

Q:行列や乗り物の車内などで、距離を詰めてくる人をストレスに感じるのはなぜですか?
——–
個人差はあるものの、人は他人に近寄られると不快に感じる心理的空間「パーソナルスペース」があります。

相手との関係性によって、侵入されると不快に感じる距離は、縄張り意識とも呼ばれ、アメリカの文化人類学者エドワード・ホール氏の発表によると以下の4つに分類されます。

1.恋人や家族同士の「密接距離」(0~45cm)
2.友達同士の間にある「個体距離」(45~120cm)
3.同僚や仕事仲間などの間にある「社会距離」(120~350cm)
4.講演会などで聞き手・話し手の間に発生する「公衆距離」(350cm~)

経済的に世の中が豊かになればなるほど、人は「個人」を意識するようになります。例えば、昭和初期なら、雑魚寝をしたり、茶の間に家族が集まって1台のテレビを見たり、というのが一般的な家庭の風景でした。やがて生活が豊かになると、子ども1人に1部屋が当たり前になり、リビングにいても家族がそれぞれの端末で別の画面を見ている、という風に家庭内の様子も変わってきています。

加えて、日本人は欧米人と比べて、必要以上に他人と接触する習慣がありません。現代では、若い世代を中心に、自分とそれ以外の人との距離が近いことに慣れない人が多くなっているのかもしれません。

Q: トナラーと呼ばれる人はどんな人でしょう?
——–
その人と認識していて、何かの目的があるというわけではないのに、満員でもない電車やバス、ジムのランニングマシンなどでわざわざ隣に来る、レジなどの行列で後ろにぴったりくっついてくるといった行為をする人がいます。

前述のパーソナルスペースが極端に狭い人が、こうした「トナラー」になりがちです。また、年齢では精神的発達が未熟な子どもや、羞恥心が薄れ始める中高年以上に多いかもしれません。

傾向としては、「自己中心的で周りに気を使わない」「こだわりが強い」「空気が読めない」といった人たちです。
他者との距離感のつかみ方が苦手なアスペルガーなどの発達障害の人に、こうした行為が見られることもあります。

Q:トナラーに遭遇して、ことさら不快に思う人とそうでない人がいるようですが。
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大抵の人は、パーソナルスペースを侵されると、多かれ少なかれ不快に感じるものです。

どうしても十分なスペースが確保できない満員電車やエレベーターなどで、大して見たくもない中づり広告や時刻表を見たり、風景に目を凝らしたりするのは、物理的に距離を取ることが不可能なら、視線だけでも離したいという本能的な気持ちが働くためです。

これをあまり不快に感じないという人は、もしかすると、自身が距離感に無頓着な、まさに「トナラー」なのかもしれません。

子どもがそうであるように「他人をジロジロ見る」「相手と極端に近い距離を取る」などは、子ども自身があまり気にしていないために、そうした行為をするのであって、ほとんどの人は、「自分がされると嫌だ」と思うような行為は、極力しないものです。

Q:見ず知らずの人だけではなく、職場や家庭で感じるストレスにも距離感が関係していますか?
——–
たとえ親子であっても、人と人との間には「別の価値観や考えを持っている」ということをお互いに認め合うべき心理的な境界線があります。

これをきちんと認識できていれば、職場や家庭内の人間関係もスムーズに築くことができますが、境界線を認識できずにいると、職場や家庭だけでなく、恋愛や友人関係でも行き違いや摩擦が多く、ストレスフルな関係ということになります。

人間関係では、本来その人が考えるべき課題を、その境界を踏み越えて入ってしまったがために、お互いにとって不幸な結果を招いてしまうことがあります。

「子どもの進路について親が必要以上に干渉する」「上司が部下の仕事に対してあれこれ過剰に指示する」などがそうでしょう。
これは、子どもや部下のストレスを増大させ、経験の機会を奪い、本来の能力を十分に発揮できなくする行為です。

これを避けるために、自分の課題と他者の課題を分離していくことを、アドラー心理学では「課題の分離」と言います。

「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」ということわざのようなことです。
つまり、馬を水辺まで連れて行くまではその人の課題でも、水を飲むことは牛の課題であり、そこまでは立ち入るべきではない、という考え方です。

Q:体の距離感と心の距離感についての感じ方の傾向を知ることで、仕事や恋愛などの対人関係をスムーズに築くことは可能ですか?
——–
パーソナルスペースを尊重し、お互いの境界線を明確に意識することが、人間関係を築くうえでとても大切なことです。さらに、戦略的にポジションを意識することで、パフォーマンスを上げることも可能です。

例えば、外向的な人は向かい合った近い距離の方が親密になりやすく、内向的な人は正面より、少し斜めの位置を取ったほうがリラックスできるでしょう。

これを応用すると、協力してひとつの作業などを行うには横並び、「競争して課題を解く、議論を戦わせるといった場合は向かい合う位置関係が、より効果的な結果を生むはずです。

それにしても、豊かになればなるほど、他者との距離を遠くに取りたがる個人主義が際立ってくるというのも悲しい気がします。
近隣に福祉施設を建設することに反対したり、公園で遊ぶ子どもたちの声や、除夜の鐘にさえも「うるさい」と言ってみたり、人間関係のギスギスした話題も多くなりました。

他者との距離感に敏感にならざるを得ないこんな世の中ですが、せめて心の距離は近くに寄り添い、心を一つにして困難に立ち向かう、そんな時代にしたいものです。

<筆者略歴>

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青柳 雅也:心理カウンセラー どのジャンルでも対応できる心理カウンセラー。18年間のサラリーマン時代を経て、人の心の在り方に関心を持ち、「髪の毛のある街のお坊さん」を目指すことを決意し心理カウンセラーに。海外のような遅いテンポでのカウンセリングは日本に合っていないことに気づき、独自手法を編み出し、問題や悩みの短期解決を実現する。豊富な臨床経験から信頼の声も高く、活動も心理学講座「青い柳のココロカフェ」や、コラムの執筆活動、教育機関での非常勤講師、企業のメンタルケア、ときにはテレビ出演など多岐にわたる。

青柳 雅也:心理カウンセラー

(青柳 雅也:心理カウンセラー)

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