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発達障害のある人の問題行動はどのようにすれば減らせるか?

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発達障害のある子供にどのように対峙していけば良いか

発達障害のあるお子様について相談に来られる保護者の多くは、我が子の問題行動に悩まされ、心身共に疲弊しています。そして、どういう対応をすれば問題行動を無くせるかを訊いてこられます。問題行動というのは定型発達の子供にも勿論ありますが、発達障害の子供は障害の特徴故に問題行動が起きることが多々あります。問題行動には必ず原因があり、それが障害の特徴によるものか、そうでないかを見極め、その子に合った支援をしていかなければ問題行動の軽減、収まることは難しい。実体験としてそのように感じる人は多いのではないでしょうか?

※これから書くことは、全ての発達障害のある人に当てはまるわけではありません。同じ診断名でも、アプローチの効果がある人、効果がない人がいます。「効果がある人もいる」という認識で読んでいただければと思います。

なぜ問題行動を起こしてしまうのか?

保護者から相談を持ち掛けられると、何故問題行動を起こしたのかを尋ねるようにしています。すると、「分からない」「〇〇するのが嫌いだから」といった答えが返ってきます。問題行動の原因を考える際、問題行動中と前後の状況、本人の考えや価値観、環境・人といった要素から推測していきますが、発達障害のある人(疑い含む)は障害の特徴(例:こだわり)、認知特性、感覚といった要素も加味する必要があります。単体で問題行動が起きることはほとんどなく、様々な要素が複雑に絡み合って問題行動が起きることが多いです。長年、色々なタイプの発達障害のある人達と関わってきていますが、一番原因として多いと感じるのは自己防衛反応による行動。自分を守るための行動が結果的に問題行動として映るというのをよく見かけ、よく聞きます。二番目に多いのは、認知の歪みによる誤学習。これは子供が大きくなるにつれて顕著に表面化し、仕事場でも見かけます。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の幼児が起こした問題行動と手立て

活発なA君は日々楽しく幼稚園で過ごしていましたが、幼稚園で発表会に向けての練習が始まると、落ち着きがなくなり、部屋から脱走を繰り返していました。園の先生は言葉で説得を試みたり、注意をしたりしましたが効果はなく、ほとほと困っていました。一向に改善される様子がなかったので保護者も心配になり、私に相談してきました。A君はASD(自閉症スペクトラム障害)の診断がおりています。ASDのある人は環境の変化に弱いという特徴があり、発表会の練習という非日常は不安でしかありません。そんな不安から自分を守るために部屋から脱走を繰り返していたのです。また、発表会は決まった所に立ち続けなければいけないのですが、どこに立てば良いかすぐには分からないために不安が増加し、脱走の一因となっていると推測。

これら原因を推測した上で、保護者に手立てを提案。その手立てを園の先生に実行してもらうよう、保護者からお願いして頂きました。まずは環境作り。A君が立つ場所に予め動物シールを貼っておいて、そこがA君の立つ所だと視覚的に分かりやすく明示します。動物シールを使用した根拠は、A君の発達検査と普段の様子から、抽象的なもの(数字等)よりも具体物の方が有効だと考えたからです。

次に人的環境の調整。ASDのある子供は人への関心が薄いなんて言う人もいますが、それは人によります。むしろ人への関心が強く、影響を受けやすいというのが私の見解です。実際、A君は比較的仲の良い(気になる)子供が二人おり、その子達の近くで昼食をとらなければ気が済まないという、こだわりがありました。発表会ではその子供達の間に立つように変更してもらい、それにより、非日常の中にも日常を感じられるようにしました。効果は徐々に表れ始め、脱走という問題行動は無くなったそうです。幼児期は障害特性が強く表れる時期ですが、特性ばかりに意識すると間違った支援に繋がりかねません。どんな物が好きか、どんな人に影響を受けやすいか等、保護者、園の先生、専門家の三位一体で、その子自身を観て最良の支援に繋げたいですね。

ASD(自閉症スペクトラム障害)と思しき青年が起こした問題行動と支援

自己理解を深める、社会の現実を知ってもらう等のために、担当している生徒(18歳以上)と登録制のバイトを一緒にすることがあります。多くの現場に赴くので、色々な方達と出会います。中には、「あの人は俺よりも支援がいるんちゃうん?」と生徒が言うほど、特性が如実に表れている人と出会うことも度々あります。

ある現場でのこと。イベント設置作業のお手伝いをする現場だったのですが、スタッフとバイトを含めて50~60名ほどいました。その中に、落ち着きなくずっと辺りをウロウロしていて、常同行動や独り言をずっと言い続けているASDと思しき人(Bさん)がいました。他の人達は変な人という感じで見ていましたが、個人的には非常に気になっていました。トラックから重い機材をひたすら建物の中に運ぶという作業で、トラックの前にバイトの方達(10名)は二列に並び、機材を受け取ります。Bさんも最初こそ並んで受け取っていたのですが、時間が経つにつれて独り言とウロウロ動くのが強まります。列には並んでいるものの、Bさんが機材を受け取る番になると、さりげなく(?)列の後に並びなおすようになりました。しまいには、その現場からしばらく消えるという問題行動に発展。何故そのような問題行動を起こすようになったのか。その場の状況や行動等から、誤学習をしたのではと推測しました。周りの人達は、奇異な人間に映ってしまうBさんを避けるようにしていたがために、問題行動を起こしていても誰も注意せず。列に並びなおしたり、周辺をウロウロしていたりしても、誰からも注意を受けないので、Bさんは自身の行動はやっても良い行動という誤学習をしたのかもしれません。

全くの赤の他人ですが、何か手をうたなければBさんにとって今後不利益なこと(例:バイトに呼ばれない)が起きる可能性があります。性格上そういう人達を見ると放っておけない人間なので、さりげなく支援をすることにしました。支援というのは本来アセスメントをとった上でやるものですが、そんなことはできないので、その場の情報のみで実行。簡単な会話は成立し、言われた事は素直に聞きそうなタイプに思えたので、CCQ(Calm、Close、Quiet)を意識しつつ、目を見据えながら(意識がこちらに向いているのを確認するため)「列から出ない」「機材を運び終えたらすぐに列に戻る」を伝えました。そして、時折重い機材を一緒に運ぶことがあったので、その度に感謝の言葉をかけました。効果はあったようで、問題行動を起こすことはなくなり(多少のウロウロはありました)、仕事も他の人達と同様にこなすようになりました。

注意をしたところで問題行動がなくなるとは限らない

問題行動を起こすと、周りの人達は(保護者含む)問題行動を減らすために、厳しく注意や叱責をしてしまいがちです。効果のある人はいますが、発達障害のある人は負の感情に対して、定型発達の人よりも敏感なことが多いのです。そのため、厳しく注意や叱責をすると逆効果になることがあります。さきほどのBさんの場合では、恐怖感が増大して常同行動や独り言、ウロウロする頻度が強まる可能性があったので、してしまった行動は注意をしないように心がけました。

仕事場でもできる問題行動を減らす方法

問題行動を減らす手法の一つに、「子供が問題行動を起こす→周りの人は無関心を装う→子供が問題行動を止める→止めたことを褒める」といったものがあります。年齢が低いほど効果的で、私もよく使う手法です。しかし、この手法は家庭や学校内での問題行動に対して出来ることで、仕事場となると難しいと感じます。仕事場で実行しやすい支援は、「視覚化」と「言葉がけ」の二点。「視覚化」は問題行動を起こさなくて済むようにするための予防策として使われ、「言葉がけ」は問題行動を起こしてからの対応策として使われることが多いです。

どんな仕事でもルールは存在しますが、「視覚化」はそれを明確化したもの。「視覚化」の効果は支援対象者の認知特性によって変わってきます。イラストを使う方が理解しやすい人、写真を使った方が良い人、カラーよりもモノクロの方が見やすい人、文章だけの方が良い人、数字をところどころに散りばめた方が理解しやすくなる人もおり、簡単なようで難しい一面もあります。ただ、ハマると効果は大きいです。色々な現場に行く仕事や変化の激しい仕事では、「言葉がけ」による支援がメインになると思います。「言葉がけ」をする時はC(Calm/穏やかに)C(Close/近くで)Q(Quiet/静かに)が基本。しかし一つ注意点があり、毎回同じ調子で伝えると危険な行動が本当に危険だと認識しにくくなることがあります。人の命に関わるような危険な行動をとった場合は、ガツン言うことも必要になるでしょう。ほぼ間違いなく凹み、しばらく引きずると思うので、その後のフォロー(例:ささいな事で褒める)は欲しいところです。問題行動を減らそうという気持ちが強いために、長々と話す人がいますが、それは効果が薄いです。能力的に理解が追い付かないこともあれば、発言の解釈を間違えることもよくあるので、端的に伝えることが必須。実際Bさんに伝えた時も、「列から出ない」「機材を運び終えたらすぐに列に戻る」の二点だけにしています。何かを伝えるなら2~3つがちょうど良く、さらに新しい事柄を伝えるなら、既に伝えたことを実践できるようになってからが効果的です。

日々の生活や仕事に追われて、どんな支援が有効かと考える暇はないと言う人もいます。それならせめて、CCQと端的に伝えることだけでも実践してみてはいかがでしょうか?変化が徐々に見えてきます。

<筆者略歴>

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安藤 和行:ひだち教室長 大学時代のボランティア活動で、自閉症という言葉を初めて聞く。
保育所で3年間勤務。その中で自閉症の子供と関わる。
大阪府にある障がい者対象のグループホームで、世話人として2年間勤務。
大阪市にある幼児教室で、発達障がい児部門の部門長として11年間勤務。
2018年、子育て・自立サポート「ひだち教室」を設立する。

安藤 和行:ひだち教室長

(安藤 和行:ひだち教室長)

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