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初診でも「オンライン診療」が可能に 遠隔診療は日本の医療が変わるきっかけになるのか

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病院に行かずに、インターネットを通じて、自宅などで医師の診察が受けられる「オンライン診療」。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中、厚生労働省は、4月13日から特例として、感染流行期間に限り、初診時のオンライン診療を解禁しました。これまで、初めての診察や新たな症状での診察では、対面での診察が原則でした。

日本でのオンライン診療は、2018年に保険適用となりましたが、ほとんど普及していません。中国などではすでにオンライン診療の民間サービスが拡大しており、新型コロナを機にさらに普及が加速しているようです。

新型コロナウイルスをきっかけに、日本でもオンライン診療が広がるのでしょうか。遠隔医療システムなど、医療のICT環境に詳しい嗣江建栄(しえけんえい)さんに聞きました。

新型コロナウイルス感染拡大を機に今後も普及が進む。地方の医師不足や人口減少による医療機関縮小など、日本の医療問題を解決できる可能性にも期待

Q:新型コロナウイルス感染症対策の特例として、オンラインによる初診診療が解禁されました。具体的にはどのように診療、薬の処方が行われるのでしょうか。

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患者が予約時に入力する問診票などをもとに、医師が「オンラインによる診断や処方が医学的に可能」と判断する場合は、スマホやパソコンなどのテレビ電話を通じて、医師による視診・問診が行われます。

診察にあたり、本人確認が必要のため、医療機関指定のプラットフォームにアップロードするといった方法で、保険証とあわせて免許証など顔写真の提示が求められます。医療費の支払いも、振込やクレジットカード利用など、病院に足を運ばなくても完結する仕組みがとられるケースが多いようです。

オンラインによる初診診療の解禁に伴い、特例として、新型コロナウイルス感染流行期間に限り、服薬指導と薬の受け渡しも自宅でできるようになりました。院内処方でない場合は、医療機関が処方せんを薬局にFAXで送付、後日原本を郵送します。患者が、ビデオ通話などで薬剤師と話し、服薬指導を受けると、薬局から薬が直接配送されます(院内処方の場合は医療機関から配送)。ただし、処方には、1週間の上限があり、麻薬(医療用)や向精神薬、安全管理が必要なハイリスク薬などは、処方できません。

Q:オンライン診療のメリット、デメリットを教えてください。

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医療機関の外来診療を受診する人数を、仮に10人とすると、そのうち半数ほどは、オンラインでも診断できるケースが多いとされています。今回の新型コロナウイルスのような感染症の流行時には、医療機関を訪れる人数を減らすことで、患者だけでなく、医療従事者も含めて感染の拡大を防ぐことができ、大きなメリットとなります。

平時では、どちらかといえば患者側のメリットが大きく、通院や待ち時間の負担が減り、利便性が高まります。定期的に診察が必要な場合、高齢者や体が不自由な人だけでなく、仕事などで忙しい人にとっても受診のハードルが下がります。

医療機関にとっては「地方などで医師の数が不足している」「総合病院がなく全般的な診療が難しい」などのケースを、オンライン診療を活用することで、医療サービスを向上することができます。

一方、デメリットは、画面を通じた視診と問診のみで診断しなければならない点です。インターネット環境が安定しなければ、視診の精度が落ちる恐れがあります。また、患者の胸の音を聞く、お腹を触ったときの反応を見るといった身体所見がとれないことは、リスクとなり得ます。

また、対面に比べると、医師と患者のコミュニケーションがうまくいきにくいことも懸念され、「言った・言わない」などのトラブルが起こる可能性もあります。

Q:中国では、オンライン診療の市場が拡大しているようです。実際、中国ではどのような状況ですか。

中国は、オンライン診療のような新しい取り組みも、まずは一度実施してみて、それから法整備が検討されます。入念な研究や試験をもとに、法整備がされてから初めて実施される日本と比べると、新たなサービスがスピード感をもって進む傾向があります。

人口1000人あたりの医師数を比べると、日本2.4人に対し、中国1.6人(経済産業省2017年「医療国際展開カントリーレポート 重点国の基礎データ比較」、該当データは2014年調査)と、中国が少なくなっています。中国では評判のよい医師に診察してもらいたくても、国土が広く、病院に行くことが物理的に難しいこともあり、オンライン診療へのニーズは高いようです。

数年前から、アリババなど民間のIT企業大手が医療分野に参入し、「ネット病院」として各医療機関の医師と提携することで、オンライン診療サービスを展開しています。

また、政府も2018年ごろから、オンラインで診察、薬を処方する資格を持つ「インターネット病院」を、実験的に各地域で指定しており、今回の新型コロナウイルス感染拡大にも後押しされ、指定病院が増加傾向にあります。

実際に利用数も伸びており、それに伴い、例えばオンライン診療費は無料で、薬の処方にのみ費用がかかるなど、患者にとってのサービスも充実しています。

Q:日本国内で、オンライン診療がそれほど進んでいない理由は何ですか。

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日本医療ベンチャー協会の調査によると、オンライン診療への対応医療機関は約1200で、全国の医療機関の1%未満と、まだ普及には至っていません。オンライン診療のシステム導入は、セキュリティ対策さえきちんと行っていれば、それほどコストをかけなくても導入できますが、医療機関は積極的にオンライン診療を進めていない状況です。

要因の一つに、外来での診療と比べて、手間や時間が格段に削減できるわけではないのに「診療報酬が低い」ことがあります。また、医師からは「保険請求の手続きが面倒」という声も挙がっています。

Q:今後、日本でも、オンライン診療が広がっていくと考えられますか。

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これまでは患者側からのニーズがそれほどありませんでしたが、新型コロナウイルスの影響で、「診察はしてほしいが、病院にあまり行きたくない」と考える人が増えています。そのため、オンライン診療の認知度が高まっており、医療機関からシステム導入の問い合わせも多くなっています。新型コロナウイルスが収束した後も、一つの流れとして広がるでしょう。

これから少子高齢化により、地域によって医師数の偏りがますます問題になってきます。オンライン診療により、都市部の医師が地方に住む患者を診察することができれば、地方の医師の負担解消につながります。

また、日本の人口減少により、医療機関や医療従事者を維持しにくいとして、厚生労働省では、全国の病床を削減する計画を進めています。ただ、平均寿命を比べてもわかるように、世界でトップクラスを誇る日本の医療を縮小させることはもったいないことだと考えています。

2019年6月の厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」によると、国外に所在する患者に対するオンライン診療やオンライン受診も許可されています。

中国やアメリカなどでは、すでに海外からの患者をオンライン診療で受け入れています。

「国内での診療が滞らないように、時間帯を区切って海外の患者を自由診療で受け入れる」「医療機関の負担にならないように問診表の翻訳や患者の通訳は第三者機関が担当する」など、方法次第で人口減少による医療機関の収入減を補うことができ、日本の医療の発展に貢献することができるのではないでしょうか。

<筆者略歴>

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嗣江 建栄:遠隔医療支援システム開発及び製造・販売 1964年 中国広東省生まれ
1988年 来日
1996年 千葉大学工学部工学研究科修士課程修了
半導体に関する研究所に勤務
1999年 「ViewSend」販売代理店勤務
2010年 ViewSend ICT株式会社設立

嗣江 建栄:遠隔医療支援システム開発及び製造・販売

(嗣江 建栄:遠隔医療支援システム開発及び製造・販売)

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