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新型コロナによる巣ごもりで悪化する「依存症」、飲酒量やスマホ、ゲーム時間の増加が背景に

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新型コロナウイルス対策による外出自粛の中で、「アルコール依存」に関する相談が急増しているそうです。在宅勤務などで家にいる時間が増え、終電などの時間も気にせずに飲めるので、「お酒の量が増えた」と感じている人は多いのではないでしょうか。また、休校により、時間を持て余した子どもたちの「スマホ・ゲーム依存」を心配する声も多く聞かれます。

緊急事態宣言が解除された地域があるものの、東京や大阪など、特定警戒の8都道府県では、自粛が続き、自宅にこもる生活をせざるを得ない人がまだ多くいます。友だちとも会えず、単調な毎日に、知らず知らずのうちにたまるストレス。自分や家族が依存症に陥っているかどうかの目安や、依存症にならないための対策は?精神科医の鹿島直之さんに聞きました。

「生活に支障が出る」「周囲に嘘をつく」などがあれば、強い依存の状態。1日の行動を記録し、本人が悪影響を認めることが抜け出す一歩に

Q:休業や外出自粛など、家にひきこもる生活を強いられることで、依存症になるリスクは高まりますか?
——–
「休業で会社に行く必要がなくなる」「休校で学校に行けない」といった場合に、何もすることがない時間が増えます。

時間があることで、それまで断酒していたとしても、ついアルコールに気持ちが向いてしまうことが、容易に想像できるでしょう。また、報道などで、繰り返し不安をあおるような情報にふれているうちに、不安が強まり、望ましくない対処行動として、特定の対象に依存し、不安を解消しようとされる人もいるように思います。

依存症は、依存する対象によって、主に2つの種類に分かれます。

①物質依存症:薬物やアルコールといった、依存性が強い物質に対する依存症です。
②過程依存症:ギャンブル、ゲーム・スマホなど、特定の行動プロセスに対する依存症です。医学的には正式に分類されるまでに至っていませんが、買い物依存やセックス依存、摂食障害なども当てはまります。

現代社会にあって、物質的な豊かさを背景にしたインターネット技術の進歩により、オンラインゲームやネットショッピングなど、オンラインのサービスが広く普及したことで、いつでもどこでも気軽に楽しめることが増え、依存症を引き起こす依存の対象が広がっているのではないでしょうか。

Q:そもそも、依存症とはどのような状態になることですか?
——–
依存症の人では、依存の対象である物質または行動が、やみつきになる強烈な快楽を与えてくれるものとして、日常生活での優先順位が一番になります。その使用や行動をやめようとすると、身体的または精神的に苦痛となる「離脱症状」が現れ、「やめたくてもやめられない」状態になります。

前述のアルコールや薬物などの物質依存では、摂取をやめようとすると、頭痛や発汗、手の震えといったように、身体的依存に基づく、体の離脱症状が現れることがあります。

一方、ギャンブルやゲームなどの過程依存では、その行動をやめようとすると、身体的な離脱症状は見られないものの、精神的な依存に基づく、焦りやいらいらといった感情が見られます。

外出自粛の中でも営業するパチンコ店が社会問題となりましたが、社会的な批判にさらされても、感染リスクがあっても、パチンコに出かけてしまうのは、まさに依存の心理状態です。本人にとっては快楽を求めることが自然な行動であり、たとえそれが命に係わる状況でも、依存の対象を優先してしまうのです。

Q:自分や家族が依存症になっているかどうかを知る目安はありますか?
——–
どの依存症にも共通する、大きく2つの目安があります。

まず、生活に支障が出る状態が数カ月など、長期にわたって続いている場合は依存症と言えます。「睡眠や食事といった日常生活の基本がおろそかになる」「仕事や学校に行けない」「お金を工面するために生活費にも手をつける」などの悪影響が出てきます。

また、依存状態が進むにつれ、家族や友人など周囲が悪影響に気付くようになります。一方、本人は依存症であることを自覚しない、または認めないことが多く、周囲からその依存に基づく悪影響について注意されると、口論になることがよくあります。
また、周囲には実際に「飲んでいるお酒の量を少なく」あるいは「やっているゲームの時間を短く」見せかけたり、嘘をついたりすることすらあります。

実際に、依存症の疑いで医療機関を受診するケースでは、家族が気付いて本人の受診を促すことがほとんどです。

Q:新型コロナをきっかけに、アルコール依存症の相談が増えているそうです。アルコールに限らず、すでに依存症の人は、どのような影響が心配されますか?
——–
社会的な行動が制限されることで、親しい他者とのコミュニケーションが失われ、孤立してしまうと、さらに依存状態を強めることになります。アルコール依存症として治療を継続し、断酒中であったとしても、専門機関や自助グループなどとのつながりが途絶え、孤立状態になることをきっかけに飲酒欲求が強まり、再び飲酒してしまうことが考えられます。

例えば、新型コロナウイルス以前から社会問題となっている引きこもりの人の大半が、ゲーム依存症、もしくはその傾向が強いように思います。自宅の一室にどっぷり引きこもり、外部はもちろん、家族とのコミュニケーションすらほとんど拒絶し、ひたすらゲームに依存している方は少なくありません。

Q:依存症にならないために、どのような対策ができますか?
——–
依存から抜け出す第一歩として、毎日の行動を記録してみましょう。アルコールの摂取量、ギャンブルに使ったお金、ゲームやスマホをした時間などを記録し、自分への悪影響をきちんと受け止めてください。まずは、本人が「やめよう」という気持ちになることが重要です。

ただ、何かを「やめる」ことだけに取り組むのは、難しいことです。

依存の対象に代わるものとして、本人の趣味や嗜好に合うもので「自分の役に立つ」「充実していた」と思える活動を思い出し、それに取り組むことが重要です。

依存状態になっていると、依存の対象以外の優先度が低くなるため、周囲の人とのつながりが希薄になります。特に、自分のことをわかってくれ、自分を元気づけてくれる人とのコミュニケーションは大切にしてください。

また、ゲームやネットなど依存の対象にのめりこんでいると、昼夜逆転の生活になりがちです。乱れた生活リズムを整えるための運動や、欲求に流されない心理状態を保つため、気持ちを落ち着ける瞑想を毎日行うことも有効な方法です。

<筆者略歴>

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鹿島 直之:精神科医 ・ 1995年 東京慈恵会医科大学卒業
・ 1996年 国立精神・神経センター武蔵病院にて研修
・ 1998年 東京慈恵会医科大学付属病院本院精神科勤務
・ 1999年 横手厚生病院勤務
・ 2002年 東京慈恵会医科大学付属第3病院精神科勤務
・ 2006年 町田市民病院精神科勤務(医長)
・ 2007年 成城大学非常勤講師を兼務
・ 2009年 平川医院勤務
・ 2011年 町田まごころクリニックを開業

鹿島 直之:精神科医

(鹿島 直之:精神科医)

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