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「マスク熱中症」の不安 暑い、息苦しい夏場のリスクや予防法は

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5月上旬から、全国各地で最高気温が30℃以上となる真夏日が観測されています。新型コロナウイルスの感染防止のため、政府の専門家会議が提示した「新しい生活様式」では、外出時に会話する場合など、症状がなくてもマスク着用を求めています。気象庁は、今年の夏の気温を、全国的に平年並みか高くなると予測。暑い季節に、マスクを着用して生活することは、これまで考えられなかったことです。

総務省消防庁によると、2019年の熱中症による救急搬送者は、5月から9月までに、全国で7万1317人でした。気温が高い中、マスクを着用することで熱中症のリスクは高まるのでしょうか。新型コロナウイルスの感染と熱中症、両方の予防を行う方法とは。内科医の大西勝也さんに聞きました。

夏場はマスク内に湿気がこもり、息苦しさを感じる。特に高齢者では、口の中の湿気により、のどの渇きを感じにくくなるため、より一層のこまめな水分補給を

Q:気温が高い中で、マスクを着用していると、熱中症のリスクが高まりますか?
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マスクと体温の関係を調べたある調査によると、外気が22~24℃でサージカル(医療用)マスクを着用し、普通の生活をした場合、口の中の温度は上がらず、全身の体温も上昇しないという結果が出ています。同じ条件で運動をした場合は、口の中の温度が少し上がったものの、全身の体温には影響しませんでした。

外気が24℃以上の場合、つまり夏場の気温では口の中の温度が上昇することはわかっていますが、体温への影響は明らかにされていません。ただ、口の中の温度が上がると、肺に送られる空気の温度が上がると考えられるため、全身の体温が上昇する可能性は否定できないでしょう。

また、外気の温度が高い中でマスクをつけると、マスク内に湿気がこもるため息苦しい状態になります。肺に疾患がある人や、高齢者や子どもでは、息苦しさを感じやすいでしょう。やわらかい素材のマスクでは、汗や吐いた息による湿気を含むと、ペタッと口に密着し、ふたをされたような状態になることがあります。通気性が悪くなるので、心臓や呼吸器系が弱い人などは、注意が必要です。

通常、感染予防の観点から、マスクを付けたり外したりすることは推奨されません。マスクを付けた状態では、水分補給のたびに外す必要があり、面倒に感じることから水分補給の頻度が少なくなります。その点でも、より一層、熱中症への対策が必要でしょう。

Q:冷感素材など、夏用マスクに変える方がいいのでしょうか?
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本来、マスクを着用する目的は、唾などが飛び散らないように、飛沫感染を防ぐことです。まずは、その機能を確保することが何より大切です。

マスクの望ましい付け方は、いったん付けたら、家に帰るまで付けたままでいることです。表面にウイルスが付いているかもしれませんので、表面を触ったり、そのままバッグの中に入れたりすると、接触感染のリスクが高まります。

そのため、夏でもマスクを不快と感じず、長時間つけることができるように、ひんやりとした冷感素材、空気を通す通気性、マスクの中の湿気をとる速乾性など、マスクを快適に着用する工夫は必要だと言えます。

Q:熱中症になりやすい高齢者や子どもが、マスクをつける際に気を付けることは?
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人間は汗をかくことで体温調節をしていますが、高齢者は、老化により体温調節の機能が落ちてくるため、高温多湿の環境でも汗をかきにくく、体に熱がこもりやすくなります。

また、子どもは、遊びなどに夢中になっていると、体温が上昇していても自分で認識することができません。周りの大人が異変に気付いたときには、すでに熱中症の症状が出ているというケースが多くあります。

さらに、高温多湿の環境でマスクを付けると、口の中には湿気があるので、のどの渇きを感じにくくなります。マスクを外すことも億劫になるので、水分をこまめにとらず、知らないうちに脱水状態になってしまいます。尿の量が減っていないかにも気を配り、喉が渇いているかどうかに関わらず、時間を決めて、こまめに水分を補給することが大切です。

また、散歩など、屋外でもあまり人に会わないのであれば、マスクをつける必要はありません。国立感染研究所が示している、新型コロナウイルスの患者から感染する可能性のある「濃厚接触」は、手で触れることのできる距離(目安は1メートル)で、必要な感染予防策なし(マスクなし)で、15分以上の接触(会話など)があった場合とされています。このような状況を避けることもポイントです。

Q:スポーツ時も熱中症になりやすいとされます。マスクを着用しても大丈夫ですか?
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マスクの機能にもよりますが、前述のとおり、24℃以下の気温ではサージカル(医療用)マスクを付けて運動を行っても、体温の上昇は認められなかったという調査結果があります。

ただ、マスクを付けると、普段、鼻呼吸の人は口呼吸になります。口から吐いた息が、マスクの中にこもり、低酸素状態になりやすいことが懸念されます。さらに、この不快感がストレスとなり、自律神経のバランスが乱れ、体温が上がる可能性があるため、熱中症の危険性も高まると言えます。

運動をする際には、感染予防の観点では機能が落ちますが、横から空気が入りやすいタイプのマスクの方がいいでしょう。普段であれば、「息苦しい」と感じた時点で本人がマスクを外すでしょうが、熱中症の症状が出て、意識がもうろうとしている状態では、その判断もつかなくなることが考えられます。

部活動などであれば指導者が配慮し、30分に1回くらいの頻度で休憩をとり、水分補給とあわせて体調をこまめに確認することが、いつも以上に必要です。

Q:熱中症対策と新型コロナウイルス対策の両方を行うには、どうすればいいですか?
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熱中症の予防は、「高温多湿の環境を避ける」「水分をこまめにとる」こと。また、新型コロナウイルスの予防は、「3密(密閉・密集・密接)を避ける」「マスクを着用する」「手洗いをする」ことです。

両方に有効な対策としては、引き続き不要不急の外出をできるだけ控え、特に「高温多湿」「人が集まる」場所には行かないようにすることが理想です。また、散歩など、人がいない場所ではあえてマスクをする必要はありません。むしろ、熱中症対策である水分補給を心がけてください。

一方、人と会う場所では、新型コロナウイルスの飛沫感染を防ぐために、マスクを正しく着用することが大切です。暑いからといって、鼻を出して口だけ覆うなど、中途半端な付け方では意味がありません。しっかり鼻と口を覆うことが原則です。暑さによるマスクの不快感や息苦しさをできるだけ少なくできるような、夏用のマスクを選ぶことも効果的です。

その上で、マスクを外すのが面倒でもこまめに水分補給をしてください。「のどは渇いていない」と思っても、定期的に水分をとることが大切です。マスクの付け外しの際には、マスクの表面にウイルスが付いているかもしれないので、触れないように注意しましょう。

<筆者略歴>

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大西 勝也:内科医 1965年三重県津市生まれ
1987年三重県立津西高等学校卒
1990年三重大学医学部卒
1996年三重大学大学院卒
2009年大西内科ハートクリニック開院
日本内科学会認定 内科専門医
日本循環器病学会認定 循環器専門医
三重大学大学院循環器腎臓内科客員准教授

大西 勝也:内科医

(大西 勝也:内科医)

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