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ボビー・オロゴンさんが妻への暴行容疑で逮捕、外出自粛で増加のDVから逃れる方法は

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タレントのボビー・オロゴンさんが、自宅敷地内で妻の顔をたたいたとして、暴行の容疑で5月16日に逮捕されました。調べに対し、本人は容疑を否認し釈放されましたが、報道によると、妻は事件後に被害届を提出。報道陣に対して、長年DV(ドメスティック・バイオレンス)を受けていたことを告白し、「家を売りたいから出ていってくれと言われた」などの被害を主張しました。

新型コロナウイルス感染拡大予防のための休業や外出自粛により、生活不安やストレスなどから、DV被害が増加、深刻化しています。政府は、全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた4月のDVの被害相談が、前年同月と比べて約3割増え、1万3272件(5月22日発表、速報値)であったと発表しました。DVが心身に与える影響は。逃れるためにできる対策は。弁護士の中村伸子さんに聞きました。

「自分が悪い」「いつか変わってくれる」と思わず、まずは第三者に早めに相談を。DVを断ち切る選択肢を知っておくことが大切

Q:DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、具体的にどのような行為のことですか?
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「DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)」の定義では、「配偶者からの暴力」とされています。配偶者とは、法律上の婚姻関係だけでなく、内縁関係や元配偶者も含まれます。

DV行為には、4つの種類があります。

①身体的暴力:殴る、蹴るなどの危害を加えられる。
②心理的攻撃:嫌がらせや暴言などのモラハラ行為。
③経済的圧迫:生活費を渡さない、または厳格に家計を握る(レシートがないと支払わない、生活費は1日1000円のみ)など。
④性的強要:相手の気持ちや体調を考えない暴力性のある性交渉など

多くは、殴るとともに暴言を吐かれるなど、どれか1つではなく、何種類かの暴力が重なります。また、子どもを介して心理的に追い込むケースもあります。「しつけ」と称して、子どもに虐待を行い、被害者が止めようとすると攻撃するような行為や、「お母さんはこんなにダメな人だ」と子どもに聞かせ、被害者の悪いイメージを植え付けるような行為などがあります。

DVといえば夫から妻への暴力がイメージされますが、妻から夫へのDVもあります。男性の方が、「世間体から周囲に相談しにくい」「妻から暴力を振るわれても、女性に反撃するのは気が引ける」などで耐えてしまうケースが多いようです。

Q:コロナをきっかけにDV被害が増加、深刻化しているようです。原因は何だと考えられますか?誰でも加害者になる可能性はあるのでしょうか?
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休業や外出自粛により、リモートワークをする人が増えています。本人も慣れないのに、家には休校中の子どもがいて「うるさい」と感じ、ストレスがたまってきます。仕事がなくなった人も、生活や収入への不安が大きく、ストレスとなります。

それまでは、外出や同僚とのおしゃべりなど、ほかにストレスを発散する方法がありましたが、今回は難しい状況です。これまでは、離れたり、時間を置いたりすることで解決できた「ちょっとした言い争い」が本格的なけんかになり、エスカレートしているという状況が考えられます。

コロナをきっかけに、価値観の違いが表面化したという夫婦も多いようです。

例えば、外出自粛で、県をまたいだ移動を控えようという時期に、夫は「ちょっとくらいなら県外に行ってもいいだろう」と思っても、きちんと守りたい妻は「間違っている」と意見し、対立になります。あるいは、日ごろ妻に内緒でパチンコをしている夫が、自粛中にも営業しているパチンコ店に出かけようとすると両者はもめるでしょう。そこから、暴力や暴言につながる可能性は否定できません。

さらに、家庭以外に逃げ場がない点もお互いを追い詰めます。親元が県外にあれば移動できませんし、近くでも、高齢の親への感染リスクを考えると、行くことができなくなった人も多いでしょう。

DVの加害者に、「これだ」というタイプはありませんが、外面がいい人が多いといえるかもしれません。

高学歴で安定した職業に就いている人や、周囲から「優しい」と思われている人などが、実はDVの加害者というケースを多く見てきました。そのせいで、被害者は「周囲に助けを求めても、自分の言っていることを信じてもらえない」と絶望してしまいます。

また、被害者も、専業主婦ばかりではなく、外で働いている人もいます。誰でも加害者、被害者になる可能性はあると思います。

Q: DVの被害を受けると、心身にどのような影響がありますか?また、子どもがいる場合の影響は?
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暴力を一度でも受けると、「反論などをすれば、また暴力を振るわれるのではないか」といつも不安が付きまとい、おびえながら毎日を過ごすことになります。不眠や食欲不振など、体にも不調が現れ、やがてうつ状態になります。

子どもにも深刻な影響を及ぼします。情緒不安定になり、夜中に突然泣き出すなどの行動に現れるようになります。また、「人間関係は力で支配するもの」と思うようになり、周囲の人を尊敬することができなくなるなど、子どもの価値観をゆがめてしまうことにもつながります。

Q:長年DVを受けているにも関わらず、どこにも相談できない人も多いようです。なぜでしょうか?
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被害を受けても、「自分が悪いから」、さらには「自分をよくしようと思ってくれている愛情表現の一つ」と考える人もいます。加害者自身も、「自分が悪いのではない」と思い込んでいる場合が多く、「自分をこんな風にさせる妻の方が悪い」と言い張る人もいます。

また、子どもが生まれるなど、「何かをきっかけに加害者が変わってくれる」と期待してしまうことも、がまんし続ける要因となっています。

「いつもはいい人」「お酒を飲まなければ優しい」などと自分に言い聞かせて、「いつか」を待ってしまいます。ただ、残念ながら、相手を変わらせることは難しいでしょう。

思いきって、加害者の親に相談したとしても、夫婦のあり方に対する意識の違いから、「文句ばかり言うからじゃない?」などと逆に諭され、第三者に相談するまでに至らない場合も多いようです。

Q:DVから逃れるために、どのような対処法がありますか?
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基本的に、DVの問題は、配偶者(加害者)と直接話し合って解決できるものではありません。まずは、弁護士など第三者に早めに相談することが何より大切です。内閣府が4月に開設した、電話やSNSで、24時間相談できる「DV相談+(プラス)」のほか、法律事務所でも、電話やオンライン、LINEなどで初回の相談を受け付けているところがあります。

外出自粛のため、配偶者も在宅しているなど、電話をかけることすら難しいかもしれませんので、SNSやLINEなども有効活用してください。

大まかに、下記のような対処法があります。

配偶者から逃げる
生命に関わるなど緊急性が高い場合は、ためらわずに警察に駆け込みましょう。シェルターのような施設に保護してもらうことも可能です。

配偶者が近づけないようにする
暴力的虐待の場合、裁判所がDV防止法により、「被害者への接近禁止命令」「被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令」を出すことができます。
退去命令は、2カ月間、自宅に立ち入れなくなりますので、その間に住民票を移したり、引っ越しの荷物をまとめたり、新しい生活の準備をすることができます。
転居先の住所などが、加害者に突き止められないようにする措置も同時にとることができます。一度でも配偶者暴力相談支援センター、または警察に相談しておくことが要件になります。

暴行罪などで告訴する
刑法による告訴が考えられますが、子どもがいる場合では、父親が刑罰を受け、犯罪者になることに躊躇(ちゅうちょ)するという人もいます。

離婚する
加害者がすんなり離婚に応じてくれるとは限りません。離婚にもさまざまな手続きが必要で、そこまで考えられない心理状態にある被害者がほとんどです。実際には、まずは別居をして、心身や生活が落ち着いてから、将来的に離婚を考えるというケースが多いです。

DVは、離婚原因として認められる可能性が高いので、被害の証拠は残しておきましょう。暴言の録音や暴力の録画、ケガの画像などは有効な証拠となり得ます。いずれもスマホで簡単に記録できますが、加害者にスマホを管理されたり、破壊されたりという事態も考えられます。記録した時点で、親など信頼できる人に転送するといいでしょう。

DV被害を受けても、「このくらいのことでは離婚できない」「ちょっとたたかれただけ」と思い込んでいる人が多いように思います。もちろん「自分がどうしたいのか」が重要ですが、DVから逃れるための選択肢を知っておくだけでも、「これから」が変わるのではないでしょうか。

「自分はDVを受けているかもしれない」と思った時点で、できるだけ早めに第三者に相談しましょう。

<筆者略歴>

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中村 伸子:弁護士 福岡県福岡市生まれ。
1983年 福岡県立筑紫丘高等学校卒業
1988年 九州大学法学部卒業
1995年 弁護士登録(第47期)
2007年 交通事故紛争処理センター嘱託弁護士
2011年 福岡家庭裁判所家事調停官
2011年 人権擁護委員

中村 伸子:弁護士

(中村 伸子:弁護士)

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