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SNSなどで広がる「出勤再開うつ」 五月病と同じ?不安の原因と予防方法は

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5月25日に、全都道府県で緊急事態宣言が解除されました。これに伴い、通勤が再開されるという人が多いでしょう。中には、テレワークやオンライン会議など、新しい生活にせっかくなじんできたところで、以前の生活に戻りたくないという人もいます。「満員電車が憂うつ」「このまま在宅勤務を続けたい」など、Twitterでは「#出勤再開うつ」というハッシュタグで、不安の声が広がっています。

新型コロナウイルスがなくなったわけではないため、第2波、第3波の流行に警戒する必要があり、働き方や生活がすっかり元通りになるとはいえません。例年、ゴールデンウィーク明けに見られる「五月病」のように、環境の変化にストレスを感じている状態なのでしょうか。不安の原因や、新たな生活を無理なく進めるためにできる予防法とは。心理カウンセラーの青柳雅也さんに聞きました。

大きな変化をストレスと感じ「五月病」のような状態に。やりたいことを1つでも見つけ、ネガティブな気持ちも親しい人と共有するなどにより少しでも変化を楽しむ

Q:緊急事態宣言が解除され、通勤の再開が「憂うつ」という声が出ています。不安の原因は何でしょうか?
——–
不安の原因の一つに、大きな環境の「変化」があります。ネガティブであれ、ポジティブであれ、変化があることに、人間はストレスを感じます。特に、緊急事態宣言下では、人と直接会うことを避けて生活してきた人が多いので、通勤の再開により、人と対面で話すことなどに大きな変化を感じやすいでしょう。

自粛期間であった4月は、通常、新入社員に限らず、異動や転勤などで、職場が変化する時期です。リモートワークなどで多少のやりとりがあったとしても、初対面に近い状態で、新たな環境に慣れなければいけないこともプレッシャーになります。

また、新型コロナウイルスが完全に収束したわけではないので、「通勤の満員電車が怖い」というような、感染リスクへの不安も続いています。

Q:例年の「五月病」と同じような状態になるのでしょうか?
——–
毎年、ゴールデンウィークなど長期休暇が終わるころに、「社会復帰できるかな」などと、休暇明けの生活を心配してつぶやく人が多くなります。自粛生活の解除も同じような心理状態であり、「五月病」がはやる状況と同じと言えます。

「五月病」とは医学的な病名ではなく、その時期に多いストレスに起因する身体症状のことを総称したものです。医療機関では、「軽度のうつ」や「適応障害」「自律神経失調症」などと診断される場合があります。

「五月病」になりやすいのは、まだ起きていない先のことを考えすぎて不安になりやすい人や、人とのコミュニケーションが苦手な人です。実際、自粛が解除され、「早く会社に戻りたい」「外に出て活動したい」という人は外向的な人が多く、「解除されるのが不安」という人は内向的な人に多い印象です。

例年、職場や学校などの環境が変わる3月~5月や、学校の夏休みや冬休み明けなどに、自殺者が増えます。会社や学校などが再開される「アフターコロナ」にも、仕事や生活に急激な変化が起こっているため、自殺者が増えることが懸念されます。

Q:「五月病」のような状態では、体や心にどのような影響がありますか?
——–
疾患によって異なりますが、下記のような症状が現れます。

・なかなか寝付けない、明け方に目が覚めるなどの睡眠障害
・体重の急激な増減
・これまで興味があったことに関心を持てなくなる
・身だしなみに気をつかわなくなる
・集中力が下がる
・いろいろなことに意欲がなくなる
・毎日が憂うつ

どんな人でも、2、3日ほど憂うつになることはありますが、その状態が10日以上続く場合は、早めに病院に行きましょう。そのままにしておくと、「うつ病」や、社会生活に支障をきたす「適応障害」、過呼吸などが認められる「パニック障害」などにつながる可能性があります。

心の病気は、慢性的なストレスにより脳がダメージを受けることにより起こります。そのため、ストレスに耐えればいいというものではありません。一度、病気になってしまうと、治るまでに時間がかかります。

また、ストレスにより自律神経が乱れることで、オン・オフの切り替えがうまくいかなくなります。体が常にオンの緊張状態になり、肩こりや腰痛、頭痛、腹痛といった体の不調が現れます。

Q:新入社員は、通常でも特に「五月病」になりやすいと言われています。新型コロナの影響で、さらに心配されることは?
——–
新型コロナウイルスをきっかけに、思い描いていた社会人としてのスタートが大きく異なっている人が多いと思います。自分が期待していたイメージと現実との間に、ギャップが大きければ大きいほど、ストレスを感じやすくなります。

これは、新入社員に限らず、今春入学した学生も同じ状況と言えます。実際に、大学に入学して積極的に勉強したいと思っていたのに、新型コロナの影響でオンラインで授業を受講することになり、イメージと違って悩んでいるという相談もありました。

また、自粛期間が続いたことで社内の人と直接会うこともできず、入社したという実感もわきにくい状況にあったと考えられます。その状況が一変し、「新しい職場に慣れる」「時間に余裕がない中で研修などのカリキュラムをこなす」など、急激に環境が変わるため大きな不安を抱えやすいと言えます。

Q:「出勤再開うつ」を予防するにはどうすればいいでしょうか?
——–
大きく3つのことを心がけてみましょう。

能動的な目標を持つ
多くの人が、新しい生活に対して「〇〇したくない」「なりたくない」など、やりたくないことを想像しがちです。「〇〇をしたい」「やってみたい」と、能動的な目標を1つでも持つことができれば、意識が変わります。

良い時間だけでなく、嫌な時間もきちんと味わう
自分にとって嫌な時間を「がまんしよう」という気持ちでいると、いつまでたっても嫌なことに慣れることができません。

「上司と会いたくない」など、客観的に自分が何をどう思っているのか自覚し、向き合うことで経験値として生かされます。これは、「今この瞬間」に集中し、ストレスをケアする「マインドフルネス」の手法です。

人間の行動のうち、90%以上は無意識だと言われています。

例えば、自転車に乗ったときに「ペダルをこぐ」「ブレーキをかける」など、一つ一つの行動に意識を集中させる人は少ないでしょう。特に、現代人はマルチタスクに慣れており、「心ここにあらず」の状態が続いています。今いる時間に自分の意識を取り戻すことは、ストレスの軽減につながります。

自分の気持ちを誰かとシェアする
ネガティブな気持ちは共有しにくいですが、心の内だけでがまんしていると客観的にとらえることができません。友人や家族など親しい人に伝えると、客観的なアドバイスをもらえたり、自分自身も現実的に考えることができたりします。他者の「脳」を活用できるという人間の強みを生かしましょう。

また、出勤時間に合わせて起床し、日光を浴びるなど生活リズムを整えておくことも、出勤が再開したときの変化が少なくなるため、ストレス軽減に有効です。

「五月病」のような状態を感じたら、未病対策として早めにケアすることが大切です。コロナによる変化を、どう感じるかは心身に大きな影響を与えます。例えば、人類が二足歩行に進化したのは、「二足で歩いてみたい」と前向きに考えたのではなく、地上に降りざるを得ない事情があったからという説があります。

ウイルスにより、やむを得ず変化した社会に慣れていくことは、進化するチカラ「適応力」を得る機会なのかもしれません。変化を楽しむ視点を持ち、少しでも前向きにとらえるように意識できるといいですね。

<筆者略歴>

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青柳 雅也:心理カウンセラー どのジャンルでも対応できる心理カウンセラー。18年間のサラリーマン時代を経て、人の心の在り方に関心を持ち、「髪の毛のある街のお坊さん」を目指すことを決意し心理カウンセラーに。海外のような遅いテンポでのカウンセリングは日本に合っていないことに気づき、独自手法を編み出し、問題や悩みの短期解決を実現する。豊富な臨床経験から信頼の声も高く、活動も心理学講座「青い柳のココロカフェ」や、コラムの執筆活動、教育機関での非常勤講師、企業のメンタルケア、ときにはテレビ出演など多岐にわたる。

青柳 雅也:心理カウンセラー

(青柳 雅也:心理カウンセラー)

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