エンタメ

家族が理解し合うために必要なこと 『パパは奮闘中!』【コラム 映画再見】⑩

(C)2018 Iota Production / LFP - Les Films Pelleas / RTBF / Auvergne-Rhone-Alpes Cinema
(C)2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelleas / RTBF / Auvergne-Rhone-Alpes Cinema

 人生思うようにならないことばかり。まったく理不尽に見える出来事に疲弊することもしばしばだが、中には自分でも気付かないまま作り出している状況もある。子育てと仕事の両立に四苦八苦する父親を描いた『パパは奮闘中!』(ベルギー・フランス合作、2018年)を見ていると、たとえ家族であっても理解し合うためには努力が必要だという、当たり前だけれど忘れがちな原点が浮かび上がる。

 ネット販売の倉庫主任として働く39歳のオリヴィエは、真面目で、同僚の悩みにも親身になる頼りがいのある人柄。妻と二人の子どもと何の問題もなく暮らしていると思っていたが、ある日突然妻が家出。子どもの食事から着替え、学校の送迎からけがの手当てまで、慣れない子育てを仕事と両立する日々が始まった。しかも妻の家出の動機に思い当たることがまったくないのだ。

 だがこの作品を見ている側は、そもそも共働きで、子育て回りの細々した日々の出来事すら全く知らないオリヴィエの慌てぶりを見ながら、いなくなった妻の気持ちに少しずつ近づいていく。手伝いに来たオリヴィエの母親や姉が、イラつく彼を見ながらオリヴィエの父親にそっくりだと言う場面は、世代を超えて女性たちが感じてきたこと、そして男性たちは気が付かなかったことを浮き彫りにする。

 誰にも悪意はないし、誰もが一所懸命生きている。だが、相手を理解するには、たとえ家族であっても相手に関心を向け対話する必要がある。オリヴィエは職場では同僚たちを代弁する組合の“闘士”だが、家では妻や子供たちに、その気持ちを代弁できるほどの目を向けてきてはいなかった。そのことに気付かせてくれるのは、二人の子どもたちだ。

 この作品でもう一つ面白いのは、オリヴィエの職場。世界的に有名なネット販売大手の倉庫を、おそらく誰もが連想する。そこで熱心な組合活動をし社側と衝突を繰り返すオリヴィエの言葉に、ギヨーム・セネズ監督が物語に挟み込んだスパイスの味がする。 6月25日まで、オンラインで開催中の「EUフィルムデーズ2020」で鑑賞できる。

Text by coco.g