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令和納豆がクラウドファンディングの返礼で支援者とトラブル、企業の魅力を伝えるブランディングに問題が?

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(画像転載元:http://safe-crowdfunding.jp/)
納豆ご飯専門店「令和納豆」が、「水戸を納豆で元気にしたい」と、クラウドファンディングで資金を集め、令和元年(2019年)7月10日「納豆の日」に開店しました。同店では、「購入型クラウドファンディング」を通じ、1万円の支援をしてくれた人への返礼(リターン)として、「納豆ご飯セット一生涯無料パスポート」を提供しました。

しかし、この無料パスの利用法などについて、一部の会員が「店側から一方的に権利を失効された」とSNSに書き込み拡散されました。同店からすると「規約にある『当店と会員の信頼関係が損なわれたと認めた場合』に該当する」という理由があったようですが、同店が全額返金するという騒動となりました。

今回の件では、「地方創生につなげたい」などの企業理念に賛同して、応援の気持ちを寄せてくれたとする企業側と、特典のお得感を優先する一部の会員との間で認識の相違が浮き彫りに。そこには、クラウドファンディングの仕組みの問題とは別に、多くの人に企業理念を伝えることの難しさがあるようにも見えます。企業のブランディングとは何か、ブランディングコンサルタントの堀田周郎さんに聞きました。

ブランドの価値は受け手が決める。価値を伝えるためには適切なコミュニケーション活動が必要

Q:クラウドファンディングとは、そもそもどのようなものですか?
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クラウドファンディングとは、インターネットを介して不特定多数の人から少額ずつ資金を調達する方法です。

個人や企業など、「こんな商品やサービスを作りたい」「世の中の問題を解決するためにこのような活動をしたい」といったアイデアや思いを持つ人が〝立案者〟として発信。それに共感し、「商品やサービスを試してみたい」「応援したい」と思った人は誰でも〝支援者〟となることができる仕組みです。支援の方法によって、寄付型、購入型、融資型、ファンド型、ふるさと納税型などがあります。

魅力的なリターンには支援が集まりやすく、逆に予定通りに支援が集まらなければ成立しないというリスクもありますが、多くの人に企業理念を伝え、ファンを増やすためにはとても有効な手段です。

Q:クラウドファンディングで、立案者と一部の支援者との間でリターン利用について認識の違いが起こる場合は、リターンの内容に問題があるのでしょうか?
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立案者と支援者が商品やサービスを通して、人と人とのつながりを実感できることが、クラウドファンディングの魅力のひとつです。

支援募集の際には、立案者はなるべく「多くの人の関心を集めること」「注目されること」を目指します。その際、魅力的な特典を用意することは、支援者の心をつかむためにとても有効です。

例えば、今回の令和納豆の「納豆ご飯セット一生涯無料パスポート」は、インパクトのある特典だったため、注目度を高めるという点では成功だったと言えるかもしれません。しかし、実際に特典を利用する際の店舗での説明や、クラウドファンディングの大前提である「企業理念を伝える」ということにおいて、立案者と支援者との間に十分なコミュニケーションが成立していたか、という点については疑問が残ります。

クラウドファンディングは、企業の経営理念に対する「共感を拡散する」ための絶好のブランディングツールである反面、支援者とのコミュニケーションが不足すると、企業のマイナスイメージを拡散してしまう危険性があるので注意が必要です。

Q:多くの人に企業理念や活動を広報し、理解を得るためのブランディングとは、どのようなものですか?
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ブランディングと言うと、「商品や企業の知名度を上げるためのもの」とか、「高級なイメージを持たせるもの」と誤解されることが多いのですが、そのような活動ではありません。

ブランドとは、競合する商品やサービスと区別する利用者の心の中にある価値であり、ブランディングとは、その価値を狙ったターゲットの心の中に刻み込むためのコミュニケーション活動です。

大企業の場合は、不特定多数の人に対して広く価値を伝える必要がありますが、中小企業や個人商店の場合は八方美人になる必要はありません。ある限られたターゲットに向けて「伝えたいメッセージ」を届けることがブランディング成功の鍵となります。

Q:ブランディングにおいて必要なこととは、どのようなことですか?
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企業に地域活性化や地域創生の切実な思いがあったとしても、その思いが伝わらなければ、共感を呼ぶことはできません。企業は商品やサービスの持っている以下のような価値を、あらゆるコミュニケーション手段を使って、利用者に良い印象を伝えることでブランディングを図ります。

① 品質や性能といった機能的価値
② デザインや信頼感といった情緒的価値
③ よりよい社会づくりへの貢献といった社会的価値

しかし、必ずしも企業側が意図した通りに価値が伝わるとは限りません。ブランドの価値を決定するのは、情報の発信者ではなく受け手です。わかりやすい例としてとして、よく恋愛に例えるのですが、一方的に「私は魅力的です。好きになって」と叫ぶだけではだめで、相手から見てどんなところが魅力的に思えるかと、相手に刺さるアプローチをしなければ相思相愛にはなれません。

ブランディングは受け手側の視点から考えていくことが大切です。

Q:企業と利用者の認識の違いからトラブルが起きたときの対処の仕方で、さらにイメージを損なうことがあります。何が問題でしょうか?
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ブランドイメージを構築するには時間がかかりますが、壊すのは一瞬です。ブランドで最も大切なものは「信頼」です。謝るべき点は真摯な態度で謝罪し、今後の対応を具体的に説明することが大切です。企業側の一方的な主張やその場限りの言い逃れをしてしまうと、ブランドイメージの失墜だけでなく、経営自体を脅かしかねません。

また、企業内の全ての人が、ブランドの理念を共有していることも大切です。利用者に直接関わる従業員一人一人に理念が浸透していなければ、ブランドの信頼を獲得することはできません。

しかし、ターゲットを絞り込むほど熱狂的なファンが増える一方で、同時にブランドを嫌うアンチも増えてきます。すべての人に受け入れられるブランドは存在しません。

正しい企業理念を実践している自負があれば、時には嫌われる勇気も必要だと思います。

<筆者略歴>

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堀田 周郎:ブランディングコンサルタント 1958年、兵庫県生まれ。黎明期からインターネットを活用し、地元ですら無名だった家業の播州ハムを全国ブランドに押し上げることに成功。また、地域ブランドづくりも積極的に行ってきた。2016年より自身の実践を基にコンサルタント活動を開始。独自の価値の発見と一歩抜け出す仕組みづくりを得意とする。

堀田 周郎:ブランディングコンサルタント

(堀田 周郎:ブランディングコンサルタント)

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