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Jリーグがリモートマッチに「投げ銭」導入 スポーツ観戦や音楽ライブなどエンタメのマネタイズや新しい応援スタイルとして定着する?

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観客動員がストップしていたプロスポーツのゲームや、有名アーティストのライブその他のエンタメ公演などが、新しい応援方法を模索しながら動き始めています。
Jリーグでは、無観客試合の名称を「リモートマッチ」とネーミング。遠隔応援システムや、ライブ配信による遠隔応援システムの実証実験では、好プレーに対して投げ銭ができる「スポーツギフティング」の企画も取り入れ、サポーターだけでなく選手にも好評だったようです。

Jリーグは厳戒態勢ながら、段階的に会場への動員が始まっています。また、コロナ禍により上演・公演ができず大きなダメージを受けている全国の劇場やライブハウスを主な活動拠点とするアーティストなども、積極的に導入を進めているようです。

好きなスポーツチームやアーティスト、さらには劇場やライブハウスを少しでも応援したいというファンの思いを届けられる投げ銭は、コロナ後も新たな応援システムとして定着するのでしょうか。WEBマーケッターの川村高大さんに聞きました。

投げ銭を導入することで、ライブ配信はエンタメの一つのツールとして盛り上がりを継続。価値が高まるリアルライブも今後の業界の工夫に期待

Q:投げ銭とは、路上でパフォーマンスをする大道芸人に「気持ち」としてお金を提供するイメージですが、Jリーグが練習試合のリモートマッチで導入したスポーツギフティングはどのような投げ銭システムですか?
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「投げ銭」という言葉には、ミュージシャンや大道芸人などが路上でパフォーマンスをして、それを見た人が良いと思ったらコインなどを投げ入れるもの、または舞台の演者に提供する「おひねり」のようなイメージがあります。

コロナ禍によって、ライブハウスや劇場で活動できなくなったアーティストやプレーヤーが、オンラインでパフォーマンスを配信し、それに対して「応援」の気持ちを込めて届けるツールとして取り入れられているようです。

Jリーグでは、ようやく上限5000人の観客数に限って、スタジアムでのゲームを開催。国の方針により、収容人数の半数までとするなど段階的に緩和していくようですが、新たな収入源の確保のために、練習試合で試験的にオンラインでの投げ銭システムを導入したようです。

浦和レッズや鹿島アントラーズでは、公式YouTubeチャンネルで試合をライブ配信し、スポーツのニュースや動画を楽しめるアプリ「Player!」の寄付機能を用いて、500円から金額を設定して視聴者がギフティング(投げ銭)できる企画を行いました。

その後YouTube Liveで試合映像を中継、さらに音声配信アプリ「stand.fm」でも試合音声を生配信し、YouTube Liveでは「スーパーチャット」機能で、stand.fmでも「贈り物」機能で、共に視聴者から「投げ銭」できる仕組みを導入しています。ファンが良いゲームの流れや特典の際に投げ銭を入れるシステムは、まさにご祝儀のようなイメージで、多くのファンに好意的に受け止められたようです。

Q:いまだ厳しい状況にあるライブハウスやインディーズミュージシャンなどは、活動継続のためにオンライン配信に活路を見いだしています。動画配信で直接収益を得られるシステムには、どのようなものがありますか?
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動画ストリーミングアプリの機能を使って、視聴者から課金ポイントを受け取る方式は、近年一部のアイドルや一般人の間でも利用が広がっています。それぞれの課金システムは異なりますが、投げ銭機能を持つプラットフォームも増えています。以下は主なもので、これ以外にも多数存在します。

【17LIVE(イチナナ)】
視聴者からの支持(ギフトアイテムやコメント)を受けてポイント獲得数などが一定以上になると、特典や賞品、現金が得られる。 各プロダクションと業務提携したイベントでは、「賞金」のほか「メディア媒体掲載」などの特典も。

【YouTube】
ライブ機能「YouTube LIVE」で、「スーパーチャット」を利用した投げ銭。スーパーチャットの利用には、チャンネル登録者数や過去の動画再生実績などの条件がある。

【TwitCasting(ツイキャス)】
チケット購入型ライブ機能「プレミア配信」。ツイキャスのアイテム収益(投げ銭)機能で、配信中に視聴者から収益を受け取ることができる。

【SHOWROOM(ショールーム)】
視聴者は配信画面上にアバターで登場。配信者に対するコメントや「ギフティング」(有料アイテム課金制度)ができる。各プロダクションと業務提携したイベントや共同オーディションでは「各メディアへの掲載権・出演権」「楽曲提供」などの特典が得られるものも。

【ニコニコ生放送】
ギフティングによるポイント収入、チャンネルの有料化。エモーション機能、コメント機能など、動画への参加方法も多彩。

Q:投げ銭には、収益を得ることのほかにどのような意味がありますか?
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「投げ銭」とは、パフォーマンスに対価を支払うというよりは、そのパフォーマーに対して、今後の活動を応援するためのツールとしての意味合いが大きいものです。

実は一般的な経済活動においても、今後この「応援されるものかどうか」ということが、焦点となってくるのではと感じています。つまり、パフォーマンスと同様、どのような商品やサービスでも、利用者から応援されないものは衰退していき、応援されるに値する商品やサービスのみが残っていく、というような考え方です。

「投げ銭」とは、そこに価値を見いだした人が持つ「投票権」のようなものとも考えられるのではないでしょうか。

ある面では、商品やサービスのアイデアに共感して寄付などをするクラウドファンディングにも似ています。しかし投げ銭は、必ずしも対価や返礼を求めることが目的ではなく、「将来、共に喜びを分かち合いたい」といったパフォーマー自身の理念や行動、パーソナリティーなどに共感し応援するという部分が、より大きいように思われます。

Q:ライブエンターテインメントは、空間を共有するところに醍醐味があるものですが、オンラインで画面越しの配信に投げ銭システムを導入することのメリット・デメリットは?
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確かに、お気に入りのアーティストのパフォーマンスを、会場にいて生で体感できる喜びはとても大きく、何ものにも代えがたいものです。

それでも動画の視聴は、すでにアーティストやアイドルなどを、より身近な存在に感じることができるツールとしてファンの間に浸透しています。場合によっては、コメント機能を利用した自分の発言に対して、アーティストからダイレクトに返信が来ることもあり、リアルライブより直接的なコミュニケーションが取れるということもあります。

投げ銭やコメント機能などの応援システムで、そのアーティストなどへの支持を表すことは、リアルライブとは楽しみ方が異なるものとして、エンタメの一つのスタイルとなっていくでしょう。

アーティストの方も、少なからず、コロナ禍での貴重な収益となることは間違いないですし、視聴者の反応が収益にも顕著に表れ、多くの応援を得るためのパフォーマンス向上の刺激にもなるでしょう。

一般的な企業活動と同じで、アーティスト自身を商品とすると、投げ銭機能を利用することで、パフォーマンスをアーティストの自己満足で終わらせることなく、何が求められているのかを知るデータの一つにできるというメリットもあります。それは、アーティスト自身のブランディングにつながるものとなります。
ただし逆に考えれば、その身近さゆえに、何かのきっかけでマイナスイメージに転じるリスクがあるとも言えるでしょう。

特に音楽パフォーマンスでは、配信設備の構築にコストが掛かる場合があります。動画配信の際の回線の中断などは、そもそもパフォーマンスの大敵です。複数のカメラを設置するなど、高度な映像や音響を配信するための環境を整えるには、専門家の知識や技術も必要になります。

Q:投げ銭は、今後エンタメ業界の資金調達方法として定着するのでしょうか?
国は経済活動を進めるために、イベントの開催制限を段階的に緩和する方針です。とはいえ、新型コロナの感染状況はいまだ厳しいものがあり、ライブハウスのステージなど屋内イベントについて、以前のような業態に戻るには、まだ時間がかかりそうです。

KDDIはアーティストらに、拡張現実(AR)などのデジタル技術を駆使したライブ映像の撮影から配信、課金までの環境を提供するサービスを開始。高速・大容量の第5世代(5G)移動通信システムを活用し、アーティストやイベント主催者を支援するとしています。

チケット大手のぴあや動画配信のSHOWROOM(ショールーム)、LINEなども同様の事業を展開するようです。ライブ配信を、投げ銭というシステムを導入することで、エンタメの一つのツールとして成熟させていくことは、業界の大きな流れとして今後も盛り上がりを見せていくでしょう。

ウィズコロナの世界になって、より価値が高まるであろうリアルライブもまた、これまで以上に渇望されると思われます。今後の業界の工夫が期待されます。

<筆者略歴>

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川村 高大:WEBマーケッター 10代のころから音楽・写真・動画制作をはじめ、クリエイターとして活動。自らの音楽イベントの企画や動画制作も手がけ、インターネットの普及とともにWEB事業に活路を見出し、独学でWEBマーケティングを学び、2010年に個人事業主として独立。2015年WEBTRIBE株式会社を設立。クリエイターとしての視点をWEBマーケットに生かすことを強みに、お客さまと共に考え、お客さまと共に行動するパートナー企業を目指しています。

川村 高大:WEBマーケッター

(川村 高大:WEBマーケッター)

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