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【大河ドラマコラム】「麒麟がくる」第二十七回「宗久の約束」で描かれた光秀の今後を占う三つの対話

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 NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。10月11日放送の第二十七回「宗久の約束」は、室町幕府再興を目指す足利義昭(滝藤賢一)の上洛を実現するため、織田信長(染谷将太)の命を受けた明智光秀(長谷川博己)が、京の情勢を調査しに行くという展開だった。その中で、光秀の今後を占う上でポイントになりそうな三つの対話が繰り広げられた。それを、ここで振り返ってみたい。

今井宗久役の陣内孝則

1.信長との微妙なすれ違い

 前回、義昭の上洛を実現させ、「大きな世を作ろう」と意気投合した光秀と信長。ところが今回、義昭との初対面を果たした信長は、将軍、すなわち武家の棟梁としての義昭の資質に疑問を感じる。これに対して、その心配を打ち消すように「あのお方(=義昭)を生かすも殺すも、信長様次第」と告げる光秀。「義昭を奉じて上洛」という史実を踏まえつつ、光秀と信長の間に生じた微妙なすれ違いがここで描かれた。

 さらに終盤、信長から「そなたは、義昭さまのおそばに仕えるのか、それとも、わしの家臣となるか。今、それを決めろ」と迫られた光秀は、やや間をおいて「将軍のおそばに参ります」と答える。後に「本能寺の変」へと至る2人の関係を考えると、ここが一つのターニングポイントになりそうな気がする。

2.駒との再会

 美濃を追われた光秀が越前に逃れて以降、別々の人生を歩んでいた庶民の娘・駒(門脇麦)と、京で久しぶりに再会。義昭の上洛をめぐって言葉を交わすが、2人の意見は対立する。上洛の際、戦が起きる可能性を問われ、「戦は避けたいが、戦のない世にするためには、やむを得ない」と答える光秀。だが、自身も戦災孤児であり、今や薬で人の命を救うことに日々を費やす駒は、その考えを受け入れられず、光秀にこう反論する。「足利様に申し上げてください。上洛をなさるのなら、刀を抜かずにおいでくださいと。織田様に申してください。私たちの家に、火をつけないでくださいと」

 世を動かす立場にある武士と、それに翻弄(ほんろう)されながら生きる庶民。光秀と駒の視点の違いは、物語の幅を広げ、光秀という主人公に深みをもたらすことにつながっている。物語が後半に突入した今、この2人の対話は、さらに重要なものになっていくのではないだろうか。

3.商人・今井宗久との初対面

 堺の豪商で茶人としても知られる今井宗久(陣内孝則)と初めて対面する光秀。信長・義昭の上洛を平和的に進めるため、敵対する三好方への協力をやめさせたいというのが、その狙いだった。

 そんな光秀に、宗久はこう告げる。「堺の商人は、異国との商いで生きております。それが守られるなら、三吉様、織田様、どちらがお勝ちになってもよいと思うております」と。

 自らの正義を信じ、世を動かそうとする武士の論理とも、「人が苦しむのは嫌」という庶民の駒とも違う、「自分たちの利益さえ損なわれなければいい」という商人・宗久の論理。初めて出会ったその考え方は、これから光秀にどんな影響を及ぼしていくのか。気になるところだ。

 次回、「新しき幕府」では、上洛を果たした義昭が、いよいよ幕府の立て直しに挑む。そして、片岡鶴太郎演じる室町幕府重臣・摂津晴門も登場。一癖ありそうな人物を交えて、新たな局面を迎えた光秀、信長、義昭らの運命がどう動いていくのか。ますます目が離せなくなりそうだ。(井上健一)