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【大河ドラマコラム】「麒麟がくる」 第三十六回「訣別(けつべつ)」光秀と正親町天皇の対話が意味するもの

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 「それはできませぬ…御免!」。あふれる涙を拭いながら、思いを断ち切るように将軍・足利義昭(滝藤賢一)の前から立ち去る光秀…。NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。12月13日放送の第三十六回「訣別(けつべつ)」のクライマックスでは、織田信長(染谷将太)との戦いを決意し、味方につくことを求める義昭と、それを拒む光秀がたもとを分かつ姿が描かれた。

明智光秀役の長谷川博己

 麒麟がくる平和な世を築くため、義昭と信長の間を取り持って室町幕府再興に尽力した光秀。だが、両者の決裂が決定的になった今、その夢はついえた…。光秀の悲しみを伝える長谷川博己渾身(こんしん)の演技が、見る者の胸を打つ名シーンとなった。

 このクライマックスのインパクトの大きさに隠れがちだが、この回では冒頭、光秀が帝(=正親町天皇/坂東玉三郎)と言葉を交わすシーンがあったことも忘れてはならない。

 信長が拝謁を繰り返す帝のことを知りたいと思った光秀は、伊呂波太夫(尾野真千子)を通じて、公卿の三条西実澄(石橋蓮司)と出会う(第三十五回)。そのお供という名目で御所を訪れる光秀。だが、拝謁は許されていないため、庭で待機していると、内裏から和歌が聞こえてくる。

 その歌の内容から、平穏な暮らしを求める帝の思いを知った光秀は、みすの奥に向かって、思わず「私もそのように生きたく存じまする」と言葉を放つ。かねてから興味を持っていた光秀がそこにいることを知った帝から「目指すはいずこぞ?」と尋ねられた光秀は、「穏やかな世でございます」と答える…。

 感極まる光秀のクローズアップで終わったこの場面、正親町天皇役の玉三郎のみやびなたたずまいも魅力的で、たちまち帝に心を奪われた光秀の心情がひしひしと伝わってきた。

 今回は、光秀が初めて帝と言葉を交わす場面で始まり、義昭との決別で幕を閉じた。光秀の仰ぎ見る相手が、義昭から帝にシフトしていくことを暗示する構成も鮮やかな回だった。

 そしてもう一つ、今回で注目したいのが、光秀と信長の帝への向き合い方の違いだ。共に帝を敬ってはいるものの、その心にある思いは異なる。信長が帝への拝謁を繰り返す根底にあるのは、「褒めてくれるから」という個人的な理由であり、帝の意思とは関係ない。これに対して光秀は、今回を見る限り、「穏やかな世が訪れてほしい」という願いを帝と共有している。