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【スピリチュアル・ビートルズ】コロナ禍での希望! ロックダウンに負けず作られたポールとリンゴの新作

『マッカートニーIII』(ユニバーサル・ミュージック)
『マッカートニーIII』(ユニバーサル・ミュージック)

 新型コロナウイルスが世界中にまん延する中、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターはロックダウン(都市封鎖)を逆手にとって創作活動に励み、それぞれ新作を世に問うことで危機にある今こそ再び「愛」のメッセージを発信し続けている。

 2020年はコロナ禍で、ポールもリンゴもライブ活動を自粛せざるを得なかった。ポールは5月下旬から6月半ばにかけてフランス、オランダ、ドイツ、イタリア、スペインを回る欧州ツアーを予定していたが、中止を余儀なくされてしまった。

 リンゴも昨春に予定されていたオール・スター・バンドの北米ツアーを今年に延期した。先行き不透明な情勢だが、現段階では6月1日から全米ツアーを行う予定となっている。

 そんな中、ポールは昨年4月18日に行われた、グローバル・シチズン主催の世界保健機関(WHO)による新型コロナ対策を支援するためのオンライン・コンサート「ワン・ワールド:トゥゲザー・アット・ホーム」に自宅からリモートで参加し、ビートルズ時代の作品「レディ・マドンナ」を電子オルガンの弾き語りで歌い上げた。

 パフォーマンスの前にポールは次のようなメッセージを発した。「今夜、真実のヒーローたち、すなわち世界中の医療従事者たちを称えるこのプログラムに参加出来て光栄です」。

 続けて「私の母メアリーは第二次大戦中と直後に看護師をしていました。だから多くの時間、医者、看護師そして医療従事者と関わりを持ちました。彼らは私たちを健康でいさせてくれたのです。愛しています。どうもありがとう」と語った。

 もちろん、コロナ感染症の拡大は、ポールやリンゴたちの活動を制約し、彼らにもステイ・ホームを余儀なくさせたことは言うまでもない。だが彼らは根っからのミュージシャンである。「おこもり」を逆手にとって新たな創作活動に励んだのである。

 ポールが「Made in Rockdown」とする新作『マッカートニーIII』が12月18日に発売された。この作品についてポールは「家族と一緒に農場でロックダウン生活をする中で、毎日、自分のスタジオに行っていたんだ。アニメのための音楽で手を加えなければならないものがあって、それが終わった時に、次は何をやろうか?と思ったのだ」と語った。

 「何年にもわたってやりかけた曲があって、完成途中で残されていたので、手元にある曲についてどうしようかと考え始めたのだ。そして毎日、それらの曲を書いた楽器でレコーディングを始めて、そこにさらに楽器を重ねていったのだけれど、すごく楽しかったよ。仕事として音楽を作るというよりは自分のために音楽を作るという感じだった」とポール。

 オープニング曲「ロング・テイルド・ウィンター・バード」はまさに同じコロナ禍に生きるファンたちに向けて語りかけているかのようだ。「会えなくて寂しい? 君はぼくを感じる? 会えなくて寂しい? 君はぼくを感じる? 会えなくて寂しい? 君はぼくを感じる? 僕に触れる?」と繰り返し歌われるアコースティックなナンバーである。

 アルバム2曲目の「ファインド・マイ・ウェイ」にもコロナ禍の影響がうかがえる。「君はかつてこんな日々を怖れなかった。でも今の君は不安に圧倒されている。君を助けてあげよう。君のガイドにさせておくれ。たどり着く手助けをするよ。君の中に感じる愛に」。

 「スィーズ・ザ・デイ」について、ポールは「パンデミックの影響を受けていて、「辛い時期があっても今を生きよう」って歌っているのだ。感染拡大を乗り切るためには、いいことに目を向けてそれをつかむ努力をした方がいいということをぼく自身やこの曲を聴いている人にも思い出させてくれるだろう。間違いなくぼくの助けになった曲だ」という。

 「今を楽しめ」というメッセージが込められた歌である。
 このポールが一人で楽器を全て演奏した“ワンマン・アルバム”は12月下旬、全英アルバム・チャートで初登場1位に輝いた。ポールがソロで全英1位を獲得するのは、1989年の『フラワーズ・イン・ザ・ダート』以来、何と31年ぶりのことだった。米「ビルボード」誌のアルバム売上ランキングでも1月初めに首位を獲得している。

 一方、リンゴは昨春、自宅のスタジオでニュー・アルバムのレコーディングに取り掛かった。制作は10月まで続いたという。リンゴが英「デイリー・ミラー」紙に語ったところによると、ロックダウン下、リンゴはロサンゼルスにある自宅でレコーディングをしたり絵を描いたり、健康のためジムで運動をしたりして過ごしているという。

 「自宅のスタジオでプレイするために人を呼んでも、まずコロナウイルスに感染しているかどうかのテストをしなければいけないのが不便だね。自分でスタジオを持っている人はそこで演奏出来るから、ロックダウンによる重圧を少しは和らげられたかな」。

 約半年かけたレコーディングの成果として完成したのが5曲入りのEP『ズーム・イン』(Zoom In)だ。このタイトルは、コロナ禍で引き合いが急速に増えたクラウド・コンピューティングを使用したウェブ会議サービスなどを提供しているカリフォルニア州サンノゼを拠点とする会社ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの「ズーム」をかけたものだ。

 昨年12月半ば、このEPからの先行シングル「ヒアズ・トゥ・ザ・ナイツ」(Here’s to the nights)が発表された。歌詞の一部は「一緒に騒ごう。上品なハチャメチャをしようじゃないか。ぼくたち皆そうしたんだ」と歌われる。リンゴは公式ホームページで「これはぼくたちがみんなで声を合わせて歌えるような歌だ。ぼくは新年に間に合うように出したかったのだ。というのもタフな年の締めくくりにはうってつけの歌だからだ」と述べた。

 このシングルには豪華なゲスト陣が参加している。ゲスト・シンガーは、ポール、ジョー・ウォルシュ、コリーヌ・ベイリー・レイ、エリック・バードン、シェリル・クロウ、フィネアス、デーブ・クロール、ベン・ハーパー、レニー・クラビッツ、ジェニー・ルイス、スティーブ・ルカサー、クリス・ステイプルトン、ヨーラの面々。

 他の4曲のタイトルは「Not enough love in the world」、「Teach me to tango」、「Zoom in Zoom out」と「Waiting for the tide to turn」だということが分かっている。特に最後の曲などは「この波が戻っていくのを待っている」ということでパンデミックの終息を待ちわびる心持ちを歌っているのではないか。このEPは3月19日に発売される予定だ。

文・桑原亘之介