エンタメ

【洋楽を抱きしめて】「追憶」――思い出が呼び起こす青春時代の生きざま

『追憶/オリジナル・サウンド・トラック』(Sony)
『追憶/オリジナル・サウンド・トラック』(Sony)

 米歌手バーブラ・ストライサンドの代表曲のひとつとして人気の高い「追憶(The way we were)」。――思い出というのは美しいものだ、だが決していいことばかりではない。思い出すことさえ辛いこともある。だから忘れてしまおうと思ったこともある。でも思い出すのだ。必ず思い出すのは笑い声、そしてあの頃の私たちのあるがまま――。

 若い頃を振り返ってみると、仲間あるいは恋人同士で笑いあった、そういう場面に象徴されるような当時の自分たちのあり方ないしは生き方、言い換えるならば「あるがままの生きざま」だけは忘れられないのだ、とバーブラが繊細かつ情感豊かに歌い上げる。

 作詞はアラン・バーグマンとマリリン・バーグマン夫妻。作曲はマービン・ハムリッシュ。
 1973年に公開された、シドニー・ポラック監督の恋愛映画『追憶』の主題歌だった。

 バーブラはロバート・レッドフォードとともに主役を演じた。バーブラ演じる左翼的思想を持ち、堅物なケイティとロバート演じるスポーツ万能、遊び好きで人気者のハベル。大学時代に知り合った二人は水と油のように正反対ではあったが引かれあうようになる。

 ケイティはハベルの友人たちのブルジョア気質などが嫌で一時別れそうになるも、結婚。だが、いわゆる赤狩りのマッカーシズムの時代が到来し、そのことが二人の生活に亀裂をもたらしていく。ハベルもふとしたことから不倫、ケイティは深く傷つく。ハベルもケイティの理想主義についていかれず、二人は娘を授かったのち離婚することとなる。

 のちにケイティは偶然ハベルと再会。ハベルもケイティも再婚していた。ケイティはハベルに現在のパートナーと一緒に遊びに来るようにと誘う。それを断ったハベル。ケイティは二人の間の娘が順調に成長していることを告げ、その場で別れる。

 バーブラは1942年、ニューヨークのブルックリンで生まれた。62年にミュージカル「あなたには卸値で」でブロードウェイに出演、歌手としてもデビュー。その後、ニューヨークとロンドンでの「ファニー・ガール」の成功で大スターとなる。

 ちなみに64年から72年にかけて、バーブラは18枚のシングルを米ビルボード・トップ100入りさせた(フレッド・ブロンソン著「ビルボード・ナンバー1.ヒット」音楽之友社)。「ピープル」(最高位5位)、「ストーニ―・エンド」(最高位6位)などである。

 74年になってバーブラにとって待望のナンバーワン・ヒットが生まれる。それが「追憶」である。73年11月24日に92位でチャートインし、同名映画のサウンドトラックが発売されるや人気が沸騰、74年2月2日には首位の座を射止めることとなった。

 バーブラの快進撃は続いた。「スター誕生の愛のテーマ」(77)、ニール・ダイアモンドとのデュエット「愛のたそがれ」(78)、ドナ・サマーとの共演「ノー・モア・ティアーズ」(79)、「ウーマン・イン・ラブ」(80)という全米1位も生んだ。

 ここ日本では特に、ビージーズのバリー・ギブらがプロデュースを手掛けたアルバム『ギルティ』の人気が高い。全世界で2000万枚以上の売り上げを記録したという。

文・桑原亘之介