エンタメ

【洋楽を抱きしめて】雑誌の中とじヌードの天使を歌ったJ・ガイルズ・バンド

『フリーズ・フレイム/J.ガイルズ・バンド』(ユニバーサル・ミュージック)
『フリーズ・フレイム/J.ガイルズ・バンド』(ユニバーサル・ミュージック)

 J・ガイルズ・バンドの1981年から 82年にかけて6週全米1位を記録した大ヒット曲「堕ちた天使」の原題は「Centerfold」。研究社『リーダーズ英和辞典』によると、「雑誌の折り込み見開きページ」、「見開きページに載っているヌード写真(モデル)」とある。

 その通り、この作品は、学生時代には天使のようだった娘が、年月を経てパラパラと(?)見ていた雑誌の折り込み見開きページでヌードになっているのを見つけてしまった主人公の驚きと興奮が歌われているのだ。だから「堕(お)ちた」天使なのだ。

 あこがれていた天使をヌード雑誌の中とじで見つけた主人公は、血が凍り、思い出は崩れ落ち、完全に裏切られてしまった、という。彼女にすっかりいかれていた主人公にはネグリジェ姿の彼女を見ることさえ刺激が強すぎたというのに。

 だが切り替えも早い主人公――雑誌が次の号に変わったら服を着た彼女とドライブに行きたいものだ、という。そして「二人でモーテルへ行って/今度は二人だけで過ごそう」と気分は一人で高まる。思い出のページは破られてしまったが、「どうしても我慢できない/ああそうさ、やっぱりあの雑誌を買おう!」と正直だ。

 J・ガイルズ・バンドの歴史は60年代後半にまでさかのぼる。カリスマ的シンガーで一時は「アメリカのミック・ジャガー」とも称されたピーター・ウルフ、ギタリストのジェローム・ガイルズらにより結成される。リズム・アンド・ブルースに根ざしたソウルフルなロックンロールで独自の道を歩むバンドとして知られるようになる。

 70年代にはシングルを10曲以上チャートインさせる。だが、’75年のソウルフルなバラード「傷だらけの愛」(Must of got lost)の12位が最高位にとどまる。’78年にアトランティック・レーベルからEMIアメリカに移籍すると、彼らはリズム・アンド・ブルース色を抑え、ポップな味を加え、商業的に成功するようになった。

 ’81年リリースのアルバム『フリーズ・フレイム』が大ヒット。第一弾シングル「堕ちた天使」は彼らにとって初めての全米ヒット・チャートのトップとなる。アルバムの同名タイトル・トラックも最高位4位を記録、J・ガイルズ・バンドは全盛期を迎える。

 そんな成功の中、リード・ボーカルのピーター・ウルフが ’83年に脱退。’85年にバンドは活動を停止した。その後は何回か再結成してツアーを行っていたが、2017年4月11日にバンドのリーダー、ジェローム・ガイルズが71歳でマサチューセッツ州の自宅で死去、バンド活動には事実上の終止符が打たれた。

文・桑原亘之介