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【洋楽を抱きしめて】学校教育に疑問を投げかけたスーパートランプの「ロジカル・ソング」

『ブレックファスト・イン・アメリカ/スーパートランプ』 (ユニバーサルミュージック)
『ブレックファスト・イン・アメリカ/スーパートランプ』
(ユニバーサルミュージック)

 一聴すると言葉遊びのようでもある。確かに韻を踏んだ形容詞をこれでもかと繰り出してくる歌は印象的だ。だが、スーパートランプのロジャー・ホジソンによると、彼のペンによる「ロジカル・ソング」は学校教育の在り方に疑問を投げかけているのだという。

 若い頃は人生に疑問を持たず幸せだったのに、学校に行くことで分別があり(sensible)、論理的で(logical)、責任感があり(responsible)、実際に役に立つような(practical)人間になる方法を教え込まされるのだ、と「ロジカル・ソング」は歌われる。

 学校教育は生徒たちに忠告も忘れないという。「言う事に気をつけろよ、さもないと彼らはお前のことを急進派(radical)だとか、リベラル(liberal)だとか、狂信的(fanatical)だとか、犯罪者(criminal)だとか呼ぶことになるだろう」。

 この作品は、ホジソンが10年間全寮制の学校に通わされた経験に基づいている。
 「学校は表面的なことはともかく、内面的なことは教えてくれない。彼らは直感や心に従って行動する術を教えてくれない。彼らは命(あるいは人生)とは何かについて納得のいくような説明をしてくれない。教育には大きな欠陥があるのだ」とホジソンは2012年の音楽専門ウェブサイト「ソングファクツ」とのインタビューで語った。

 ホジソンは19歳で学校を卒業する時にはすっかり混乱してしまっていたという。社会に出るための心の準備が出来ていなかったからだ。「ロジカル・ソング」はそんな彼の当時の「混乱」から生まれたのだとホジソンは振り返った。

 「ロジカル・ソング」はスーパートランプが1979年に発表した大ヒットアルバム『ブレックファスト・イン・アメリカ』からシングルカットされ、一部の人々からは内容が政治的ではないかとの指摘もあったが、ポップなメロディにも助けられ、全米6位を記録した。

 チャート首位を記録した同アルバムからは、「ロング・ウェイ・ホーム」(全米10位)、「グッドバイ・ストレンジャー」(全米15位)などのヒット曲も生まれた。

 スーパートランプの歴史は60年代後半までさかのぼる。ホジソンのハイトーンな声で歌われる幻想的な楽曲とバンドの創設者リック・デイビスの低めの声によるブルージーな楽曲が、バンドの当初のプログレ・サウンドの中心だった。

 ’74年発表の3枚目のアルバム『クライム・オブ・センチュリー』がヒット。人気アーティストの仲間入りをする。そして『ブレックファスト・イン・アメリカ』で大ブレークする。

 ホジソンは、’82年のアルバム『フェイマス・ラスト・ワーズ』発表後、バンドを脱退し、ソロに転向する。その後、バンドは再結成と休止を繰り返している。

 話を「ロジカル・ソング」に戻そう。学校教育を批判した内容にも関わらず、実際の学校現場で最もよく引用される歌詞だといわれる。ホジソンは皮肉交じりに言った「みんながつづりたいような多くの単語があるからだろうね」。

文・桑原亘之介