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【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第二十一回「篤太夫、遠き道へ」熱量が高い栄一と冷静な慶喜、対照的な2人の芝居がシンクロした名シーン

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 「勝つことばかり知りて、負くることを知らざれば、害その身に至る。己を責めて人を責むるな。及ばざるは過ぎたるより勝れり」

 徳川昭武(板垣李光人)と共にパリ万博を訪れる使節団に加わることになった主人公・渋沢栄一(篤太夫/吉沢亮)は、第15代将軍に就任した主君・徳川慶喜(草なぎ剛)と対面。弟の昭武をパリに派遣する慶喜の深い思いを知った栄一の口から、思わず徳川家康の遺訓がこぼれる。すると慶喜もそれに続き、交互に暗誦。最後は声をそろえて締めくくり、2人は笑みを交わす…。

渋沢栄一(篤太夫)役の吉沢亮(左)と徳川慶喜役の草なぎ剛

 7月4日に放送されたNHKの大河ドラマ「青天を衝け」第二十一回「篤太夫、遠き道へ」の一幕だ。事前に示し合わせたわけでもないのに、家康の遺訓を暗唱する2人のリズムが自然にシンクロしていく。吉沢と草なぎの名演もあり、普段は離れている2人が強い絆で結ばれていることを実感させ、胸を打つ名シーンとなった。

 この後、栄一はパリに旅立ち、一方の慶喜は将軍として幕府のために尽力と、別々の場所で活躍することになる。つまりこの対面は、しばしの別れのあいさつとなったわけだ。では、2人はどんな歩みを経て、この名シーンにたどり着いたのか。

 実質的な2人の初対面となったのは、第十四回「栄一と運命の主君」。この回、栄一が乗馬中の慶喜を待ち伏せ、押し掛ける形で謁見したとき、慶喜はその熱弁にほとんど反応する様子を見せなかった。

 だが、次第に栄一がその才覚を発揮すると、第十八回「一橋の懐」では、「一橋領内の特産物で商いをして、一橋家の財政を安定させたい」という進言を慶喜が受け入れる。これをきっかけに、2人の間は型通りの主従関係から、冗談も交える和やかなムードに変わり、距離がグッと近づいていった。

 その間、徐々に距離感を変化させていく吉沢と草なぎの芝居も絶妙だった。バイタリティー豊かで“おしゃべり”な栄一を熱量高く演じる吉沢と、“英まい”と評されながらも、今一つつかみどころのない慶喜を冷静に演じる草なぎ。

 振り返ってみると、ここまで2人が直接言葉を交わした場面はわずか9回ながら、それぞれが築き上げてきた“熱量が高い栄一”と“冷静な慶喜”という対照的な芝居が、場面に応じて巧みにバランスを取ることで、徐々に接近していく空気感を醸し出していったように見える。

 こうして少しずつ歩み寄っていった末、2人の芝居がついにシンクロしたのが、第二十一回の家康遺訓の暗唱場面だったのではないだろうか。