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【洋楽を抱きしめて】ディスコの女王ドナ・サマーのなまめかしいため息――「愛の誘惑」

『愛の誘惑/ドナ・サマー』(ユニバーサルミュージック)
『愛の誘惑/ドナ・サマー』(ユニバーサルミュージック)

 ドナ・サマーが米国の音楽シーンに本格的に登場したのは1975年秋。カサブランカ・レコードからの最初のシングルである「愛の誘惑(Love to love you baby)」が、セクシーなため息が全編にわたって散りばめられていたことから、大いに話題になったのである。

 ドナのセクシー・ボイスを中核に据えた作品作りを思いついたのはカサブランカ・レコード社長ニール・ボガードであった。それを形にしたのは約一年前に出会っていたプロデューサーのジョルジオ・モロダーとピート・ベロッテのコンビだった。

 約17分にもわたるロング・バージョンがディスコ向けに生まれ、それは同名アルバムのA面すべてを使って収録された。ドナのセクシーな「あえぎ声」のハイライトがつなぎ合わせられたシングルも、全米ヒットチャートの2位まで上昇した。

 ここからドナの快進撃が始まった。シンセサイザーを有効に使ったリズム感あふれるイタリア出身のモロダーのビートがディスコで大いに受け入れられ、’77年秋には、その典型的なナンバーともいえる「アイ・フィール・ラブ」がヒット。

 翌’78年には『ライブ&モア』に収められた組曲を短く編集してシングルカットされた「マッカーサー・パーク」でついに初の全米首位を獲得する。

 ’79年には代表的アルバム『華麗なる誘惑(Bad girls)』を発表。第一弾シングルの「ホット・スタッフ」は、中間部に元ドゥービーブラザースのジェフ・バクスターのギター・ソロをフューチャーしており、これまた全米ナンバーワンヒットとなる。

 ロック・ディスコ・サウンドがキマっている同名アルバムのタイトル曲も、シングルチャートの1位となる。これはストリート・ガールを歌ったもの。さらにシングルカットされた「ディム・オール・ザ・ライト」は1位を逃すものの、大ヒット。

 すでにこのころにはディスコ・クイーンの名をほしいままにしていたドナ。しかし、快進撃は止まらない。次にドナはバーブラ・ストライサンドとのデュエットに挑む。火花を散らすかのようなアメリカの女性トップ・ボーカリスト二人による「ノー・モア・ティアーズ」も全米1位を記録。バラードからディスコ・ビートへと移っていく部分も聞きものだ。

 80年代に入っても「ワンダラー」(最高位3位)、これも3位まで上昇した「情熱物語(She works hard for the money)」、「イッツ・フォー・リアル(This time I know it’s for real)」(7位)などをヒットさせたドナ。

 その後も、米ビルボード誌のダンスあるいはクラブ・チャートにおいてトップ10入りの常連だったディスコの女王。2008年には久方ぶりのアルバム『クレヨンズ』を発表、残念ながら、彼女にとって最期のアルバムとなってしまった。

 2012年5月、ドナは肺がんのため亡くなった。享年63歳。
 早すぎた死を惜しむ声が後を絶たない。

文・桑原亘之介