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外出制限下のフランス、住民たちの日常を描いた「ヒューマニティ通り8番地」 【ネトフリさんぽ⑦】

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 まだまだ現在進行中のコロナ禍。それでも今よりはるかに情報が少なく、分からないことへの恐怖も手伝って家に閉じこもっていた時を振り返る余裕は、少しできたかもしれない。正当な理由なく外に出れば罰金刑が課せられる厳しい外出制限が求められたフランスで、集合住宅で暮らす住民たちの“慣れない”日常と交流をコメディタッチで描いたのが、「ヒューマニティ通り8番地」。国が違っても笑えないほど身近な出来事、自分に置き換えられる心情を、それでも笑い飛ばす痛快な作品だ。

 パリのとあるアパルトマン(集合住宅)に住む住民たちが主人公。持ち家の家族、賃借人、弁護士や売れない歌手、医者など、さまざまな人が同じ屋根の下に住んでいるが、外出制限で毎日を家の中で過ごし、夕刻には医療従事者に拍手を送るためテラスに出て何度も顔を合わせるようになって初めて、互いの名前や職業を知っていく。典型的な都会の一角だ。

 神経質な人は、管理人が郵便や荷物をもってきてくれる時でさえ接触を恐れ、異なる職業の夫婦が同じ家の中でテレワークをすれば、トラブルが持ち上がる。子どもの学校のオンライン授業では、カメラがオンになっていることに気付かず醜態をさらす父親もいて、オンライン会議が始まったコロナ初期の頃のさまざまな笑い話が少々懐かしくなる場面も多い。

 パリのアパルトマンは、構造的に建物に囲まれた中庭があるところが多く、この作品でも、外出できない住人たちが、外からは見えない中庭に集まってせめてものパーティーを開く場面がある。コミュニケーションが多くなれば衝突も増える。医療従事者や、コロナに感染して入院する人など、切実なストーリーをはさみながら、ストックの少ないマスクを持たない人に渡すまいと出し惜しみする夫に「命も大事だけど、人間らしさも大事よ」と一喝する妻の言葉が、この長い外出制限の時期の数えきれない困難を払いのけるエスプリとして効いている。

 現状を若干シニカルに笑い飛ばすのが得意な、フランスらしいストーリーだ。

text by coco.g