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それぞれ謎の一端が明かされる『エルヴィス』と『バズ・ライトイヤー』【映画コラム】

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『エルヴィス』(7月1日公開)

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 伝説のシンガー、エルヴィス・プレスリーの人生を、マネジャーのトム・パーカー大佐との関わりを中心に、バズ・ラーマン監督が映画化。プレスリーがなぜ早世したのか、なぜ熱望した来日公演がかなわなかったのかなどの、謎の一端が明かされる。

 とはいえ、いわゆる“プレスリー伝説”を見知った者にとっては、正直なところ、あまり新味はないと思われるが、例えば、プレスリーと黒人ミュージシャンのB.B.キング、リトル・リチャード、マハリア・ジャクソンらとの関わり方、プレスリーがジェームズ・ディーンに憧れ、アクターになることを望んでいたこと、バーブラ・ストライサンド主演の『スター誕生』(76)の相手役(実際はクリス・クリストファーソン)の可能性があったことなど、新たに知らされたこともあった。

 何より、プレスリーを演じたオースティン・バトラーが絶品で、歌はもちろん、ちょっとしたしぐさや動きまで、プレスリーを感じさせるところには驚かされた。彼は「プレスリーを演じることは、エベレストに登れと言われたのと同じような感じがした」と語っている。

 一方、名優トム・ハンクスも、特殊メークを駆使して悪名高きパーカー大佐を熱演している。この男がプレスリーに与えた功罪は、もちろん罪の方が大きいのだが、彼がいなければプレスリーは埋もれていた可能性もあるので、この2人の出会いは、ある意味、運命だったのかもしれないと思わされた。

 この映画の核は、そうした2人の、腐れ縁とでもいうような奇妙な関係性を描いた点にある。また、ライブやステージの場面は、ラーマン監督お得意のけれん味たっぷりの演出が施され、バトラーの熱演もあり、とても見応えがある。

 また、パーカーが抱く妄想や夢のシーンは、ボブ・フォッシー監督の『オール・ザット・ジャズ』(79)を思い起こさせるところがあった。

 オーストラリア出身のラーマン監督は、プレスリーを介して50年代から70年代のアメリカを描いてみたかったと語っている。