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それぞれ謎の一端が明かされる『エルヴィス』と『バズ・ライトイヤー』【映画コラム】

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『バズ・ライトイヤー』(7月1日公開)

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 ピクサー・アニメーション・スタジオの代表作『トイ・ストーリー』シリーズで、ウッディと共に活躍した、おもちゃのバズのルーツが明らかになる長編アニメーション映画。

 バズのモデルは、持ち主のアンディが大好きな映画の主人公“スペース・レンジャー”のバズ・ライトイヤーだった。本作は、その映画『バズ・ライトイヤー』の物語を描いている。監督は長編映画デビュー作となるアンガス・マクレーン。

 そのマクレーン監督は、この映画について、「ある任務のために高速で宇宙船の航行をしたバズが、そのせいで、自分の愛する人々や社会と離れ離れになってしまう。まるで『リップ・ヴァン・ウィンクル』(山の中で酒を振る舞われて寝込んでしまった猟師が、目を覚まして山を降りると20年たっていたという話)のように、バズは自分の知らない未来に閉じ込められ、何としてでも過去に帰ろうとして、若き日の自分の間違いを正そうとする。だから、この映画は自分の時代から放り出されてしまったヒーローの話だ」と解説する。

 つまり、バズの時間は途中で止まってしまうので、これは彼が時間の経過を受け入れる話でもあるのだ。

 それを知って、今回のバズの声がなぜクリス・エバンスだったのか、合点がいった。なるほど、エバンスの当たり役『キャプテン・アメリカ』も自分の時代から放り出されてさまようヒーローの話だったではないかと。

 だから、この映画を一言でいえば、立派な「時間SF」だといえる。相変わらずピクサーアニメは一筋縄ではいかない。また、メカと人間との絡みの描き方では、ちょっと『サンダーバード』を思い出させるものがあった。

 また、バズの声をこれまでのティム・アレンではなく、エバンスにしたのは、「トイ・ストーリー」シリーズのバズとは完全に違うものにする、主人公として、人間としてのバズを表現することにこだわった結果だろう。

 ところで、バズを主役にして、これだけまっとうな時間SFが作れるのなら、ウッディを主役にした西部劇も見てみたいと思った。

(田中雄二)