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思わず夏の暑さを忘れさせる山岳映画『アルピニスト』『神々の山嶺(いただき)』【映画コラム】

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『神々の山嶺(いただき)』(7月8日公開)

(C)Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinema / Aura Cinema

 原作・夢枕獏、作画・谷口ジローの漫画をフランスでアニメーション映画化。セザール賞でアニメーション映画賞を受賞した。

 山岳カメラマンの深町は、ネパールのカトマンズで、孤高のクライマー羽生が、イギリスの登山家マロリーが残した謎を解く可能性を秘めた古いカメラを手に入れた現場に遭遇する。深町はマロリーと羽生について調べ始め、羽生の行方を追うが…。

 マロリーとは、「なぜエベレストに登るのか?」と聞かれ、「そこに山があるから」と答えた有名な登山家。1924年、3度目のエベレスト登山中に行方不明となるが、それが登頂後の遭難だったのか、登頂前に命を落としたのかは謎とされた。夢枕の原作は、その謎から想を得たのだろう。

 99年にマロリーの遺体が発見されたが、携帯していたはずのカメラは見つからず、結局、登頂の成否は分からなかった。夢枕の原作小説が発表されたのは、94年から97年にかけてだというから、遺体発見の前だったことになる。先見の明ありといったところか。

 ところで、先に実写版の『エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)』(16)が作られたが、あまりいい出来ではなかった。それに比べれば、このフランス製アニメは、登頂シーンも含めて、よく出来ているというべきだろう。

(田中雄二)