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PCデポ高額請求問題が投げかけたこれからの消費者保護のあり方

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PCデポ高額請求問題の背景にあるもの

PCデポ高額請求問題は,IT化社会の中で生活しなければならない高齢者が消費者被害に巻き込まれる危険性を浮き彫りにしました。
今後,人口に占める高齢者の割合が増加していることに鑑みると,特定商取引法による規制の対象を拡げていくことも検討する必要があるのではないでしょうか,考えてみました。

不当な契約を締結させられる危険性は高齢者に限らず存在する

契約が有効に成立するためには,その契約のもたらす法律効果を理解できる能力,すなわち意思能力があることが前提です。
従って,意思能力がない者による契約は無効となります。
しかしながら,意思能力のない者であっても,社会の一員である以上,財産上の権利・義務の主体となり得るのであって,契約社会から完全に排除してしまうわけにはいきません。
一定の年齢に達した高齢者だからといって,意思能力がないなどと一律に決めることはできませんが,契約の相手方にとってみれば,一旦締結した契約が,事後的に意思能力がなかったなどと主張されて契約が無効になってしまうようでは,不測の損害を被りかねません。
そこで,このような意思能力の劣っている者の財産管理能力を補完するために設けられたのが,成年後見制度ということになります。

しかしながら,十分な判断能力がないところにつけ込まれて,事業者により不当な契約を締結させられ,多額の損害を被ってしまうということは,何も高齢者に限ったことではありません。
昨今のように,事業者側と一般消費者との間に,そもそも持っている情報量や交渉力に格段の違いが出てくると,「契約の当事者は対等な関係にあること」を前提に定められた民法では対処し切れなくなってしまいましたので,新たに特別法を定めて消費者を積極的に保護するようになってきているのです。

特定商取引法による規制の対象を拡げていくことの検討も必要

今回のPCデポの問題の1つとして,サポート契約をした高齢者の方には必要なさそうなオプション契約がいくつも含まれていたということが挙げられています。
かつて,布団や着物など,特定の人物(高齢者が多い。)に対し訪問販売により次々と商品を売り付ける商法が問題となりましたので,このような過量販売は,現在,特定商取引法という法律で規制されるようになっています。
ただ,あくまでも訪問販売ですので,店頭での契約の場合は対象外です。

次の問題は,中途解約により高額な解約料を請求されたという点です。
消費者を保護するための基本法となっている消費者契約法9条1号によれば,解約金等を定めた条項も,消費者側の解約によって,相手方たる事業者に通常生ずる平均的な損害額に相当する解約金等の支払義務を負わせるところまでは認めるが,それを超える部分は認めないものとされています。
但し,この「相手方たる事業者に通常生ずる平均的な損害額」を超える部分が無効であることについては,最高裁により,業界の事情に詳しいわけではない消費者側が立証しなければならないものとされてしまったため,消費者保護を目的とする法律の趣旨に照らして疑問を禁じ得ないところですが,いずれにしても,事業者側の言いなりに支払う必要はありません。

なお,このPCのサポート契約については,無条件解約にできるクーリングオフの対象となっていればよかったのでしょうが,特定商取引法上,クーリングオフの対象となる継続的サービス取引には,エステティックサロンや語学教室などのみが指定されており,PCのサポート契約は指定されていません。

IT化社会が進んだ今,特定商取引法による規制の対象を拡げて行くことも検討する必要があるかもしれません。

<筆者略歴>

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田沢 剛:弁護士

田沢 剛:弁護士 東京大学法学部卒業、同年司法試験に合格。2年間の司法修習を経て、裁判官に。名古屋、広島、横浜などの裁判所で8年間裁判官を務め、退官。裁判官として、一般民事、行政、知的財産権、刑事、少年、強制執行、倒産処理などの事件を担当。2002年に相模原市で弁護士事務所を開業。2005年に新横浜にオフィスを移転し、新横浜アーバン・クリエイト法律事務所を開設。現在に至る。オールラウンドに案件を扱うが、なかでも破産管財人として倒産処理にあたるなど、経営問題に辣腕を振るう。

(田沢 剛:弁護士)

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