交通事故で人を死なせるも、ある事件により当時の記憶を失ったバーテンダーの雨村慎介が、不審に動く周囲の人々や、謎めいた女性・瑠璃子に翻弄されながら、事故の真相にたどり着くさまを描いたハードサスペンス「連続ドラマW 東野圭吾『ダイイング・アイ』」。主人公を演じる三浦春馬が、初物尽くしの本作に携われた喜びや、見どころなどを語ってくれた。

-東野作品のファンは役者の中にもたくさんいらっしゃいますが、三浦さんも興味をお持ちでしたか。
はい。僕も一度は東野さんの作品に出演したいと思っていました。
-東野作品の魅力とは?
行き場のない劣等感や憎しみによって、越えてはいけない一線を越えていくのか…。鬱屈(うっくつ)とした気持ちはどこに昇華されるのか…。そんな思いの中、それでも一生懸命に生きるキャラクターに思いをはせられる描写が多く、想像力をかき立てられるところです。
-本作に引かれたポイントはどこでしょうか。
ミステリーものの主演は単発ドラマではありましたが、連続ドラマでは初めてだったので純粋に面白そうと感じました。バーテンダーの役も記憶喪失になる役も、今までになかったのでチャレンジが用意されている気がして、すぐにやりたいと思いました。ある先輩が「WOWOWのもの作りの姿勢には情熱があって勢いもあるから、いい経験になるよ」と後押ししてくれたことも大きかったです。
-脚本を読んだときの感想は?
映像化したときにも、スリリングでスピーディーな作品になると想像できました。脚本でも、事故のシーンがすごく印象的に強烈に描かれていて、それが彼の記憶を呼び覚ますスイッチになっているから、視聴者の集中力も途切れさせない構成になっていると感じました。
-初のバーテンダー役は、どのように準備されましたか。
大会で日本一になったこともあるバーテンダーの水澤泰彦さんに指導していただきました。シェーカーの振り方、ステアの仕方、一つ一つの所作を良いものにしていく過程がとても楽しく、カクテルを作るシーンは自信を持ってできました。あまりにもはまってしまい、水澤さんのお店のカウンターで練習させてもらうこともありました(笑)。
-ちなみに、お気に入りのカクテルは何ですか。
甘くてクリーミーで柔らかい香りの「アレキサンダー」と「マッド・スライド」です。ふんわりした泡の中にクラッシュアイスがバラついているという対照的なビジュアルも好きだし、作る人によって喉ごしが変わるところも面白いです。
-慎介の内面へはどのようにアプローチしていきましたか。
役作りは自分の想像を膨らませるより、脚本家がキャラクターのバックボーンを細かく書いてくださったものに従って忠実に演じました。原作には書かれていない、両親がなぜ出会ったのか?とか、主人公と両親や兄との関係性などが丁寧に書かれていました。
-現在(インタビュー時)上演中の舞台「罪と罰」でも、自身が犯した罪にさいなまれる青年役を演じていますが、このタイミングでこのような役柄を演じたいという考えがあったのでしょうか。
「罪と罰」は、演出のフィリップ(・ブリーン)から3年前に話を頂いていたので、今回の保身と贖罪(しょくざい)のはざまで揺れ動くという、似た役が重なったことは偶然です。でも、面白そうと思ったからやっているし、今年28歳になって、こういうキャラクターや警官や弁護士など、役の幅がどんどん広がり、どう表現するかのチャレンジをいっぱいもらえることはうれしいです。