文豪ビクトル・ユゴーが自身の最高傑作と評した小説を原作とした、ミュージカル「笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-」が、2月3日から上演される。本作は、口を裂かれた奇怪な顔を持ち、幼い頃から見世物として生きる“笑う男”グウィンプレンが、運命に翻弄(ほんろう)されながら生きる姿を描く。2019年の日本初演に続き、主人公のグウィンプレンを演じる浦井健治に、再演に懸ける意気込みを聞いた。

-再演が決まったときの心境を教えてください。
デア役のお二人を始めとした新しいキャストと、それから初演時のメンバーで帝国劇場バージョンとして立ち上げることができるのがすごくうれしいです。同時に、また新たなトライになると改めて気合も入りました。もちろん、初演をリスペクトしながら演出の(上田)一豪さんとともに、今、自分たちが置かれている日常にリアルに響く作品を作り上げていきたいと思います。一豪さんもおっしゃっていましたが、現在は初演のときと世界が変わってしまいました。原作をビクトル・ユゴーが書いてから百何十年という時がたっていますが、その間、疫病がはやり、その度に立ち向かい、さらには貧富の差が広がり…と人間はさまざまな経験をしてきました。今も「もしかしたら、世の中は戻らないのではないか」という不安定な状況にあり、その中での上演は、ヒリヒリしたものをダイレクトにお客さまに感じていただけるのではないかと思います。
-コロナ禍のこの2年は、舞台での活動に対して思うところも大きかったですか。
そうですね。人とつながることの大切さやありがたみを強く感じることができました。そして、人と人との絆の素晴らしさも実感しました。そうした思いを今作にも反映していけたらと思います。
-2019年の公演は、日本初演ということで、作り上げる苦労や楽しさがあったのではないかと思います。初演を振り返ってみて、どんなことを思い出しますか。
シングルキャストでやらせていただくということの重圧が大きかったです。グウィンプレンは、大きなナンバーを歌い続ける役なので、全編を通しての力の入れ加減を考えながらやらなければいけないとすごく感じました。ずっとロングトーンで、張り上げていると、喉や体力面にも不安が出てきますが、同時に聞いているお客さまも飽きてしまいます。メリハリをつけ、ただ“歌を聞かせる”のではなく、“物語を伝える”ことに特化したいと今は思っています。
-初演時には、グウィンプレンを演じるに当たってどんなところを意識しましたか。
人権というものをもともと持たない、大変過酷な状況下の中で生まれ、同時に一生消えない傷を負わされた人物が生きていくことを、僕自身がきちんと意識しなければいけない。そして、(興行師の)一座が自らのコンプレックスや身体的特徴を見せ物として日銭を稼いで生きているという事実をしっかりと受け止めることが大事だと思いました。希望が見えない中、そうしたやり方でしか生きられなかった人がいたというのは本当にやりきれないことだとも感じました。初演からコロナ禍を経た今回は、デアが思い描いていた夢を最期に見て終わるというような、ある種ハッピーエンドでありたいと考えているので、そうした提案もしていけたらと思います。