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【インタビュー】映画『マイスモールランド』奥平大兼「こういう問題があると知っていただき、状況が少しでも改善されるきっかけになれば」難民申請が不認定となるクルド人の少女と心を通わせる高校生役に込めた思いとは

【インタビュー】映画『マイスモールランド』奥平大兼「こういう問題があると知っていただき、状況が少しでも改善されるきっかけになれば」難民申請が不認定となるクルド人の少女と心を通わせる高校生役に込めた思いとは 画像1

-イギリス人の父と日本人の母を持ち、映画の製作に当たって2年に渡る取材を重ねた川和田監督や、日本、ドイツ、イラン、イラク、ロシアという5カ国にルーツを持つ嵐さんは、この作品に対して並々ならぬ思いがあっただろうと想像します。そういう思いは、現場でどう感じていましたか。

 この映画やサーリャに対する思いは、僕よりも遥かに強いものがあったはずです。でも、僕が聡太を演じる上でそれを反映してしまうと、役として成立しないと思ったので、そこは追求しないようにしました。その辺は、監督と莉菜さんがきちんと理解しているはずなので、僕は聡太として求められていることをしっかりやろうと。

-その点、この映画の中で聡太の立場は、日常で難民の問題に接する機会が少ない日本人の代表のような存在です。聡太という役を通してこの問題に向き合ってみて、どんなことを感じましたか。

 こういう問題があると知ることができたのは、1人の人間としてすごくよかったです。今回、聡太を演じて気付いたのが、サーリャのような事情を抱えた人が身近にいたとしても、同情して、ことさら優しくしたり、態度を改めたりする必要はないのかなという事です。そういう人たちの中にも、他の人たちと同じように接してほしいと思っている人は多く、特別扱いする方がとげ(のある行為)になるんじゃないかなと。僕にも複数の国にルーツを持つ友だちがいるので、知らなかったためにとげになることをしていたのならもちろん改めます。でも、そういう場合以外は、そのままでいいのかなと。ただ、一番いいのは、こういう問題が解決して、映画にしなくても済むようになることだと思います。

-そういう意味では、難民の問題を扱ったこの映画は多くの人の注目を集めそうですが、その点はどう感じていますか。

 僕自身がそうだったように、こういう問題があることを知らない人もまだ多いはずです。出演したとはいえ、難しい問題なので、どうしたらいいのかという答えは、今のところ僕にも見つかっていません。ただ、まずはこの映画をより多くの方に見ていいただき、知ってもらうことで、状況が少しでも改善されるきっかけになってくれたらと思います。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2022「マイスモールランド」製作委員会