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話題を集めた頼朝役を終えて「三谷さんには感謝しかないです」大泉洋(源頼朝)【「鎌倉殿の13人」インタビュー】

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 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。7月3日放送の第26回「悲しむ前に」では、主人公・北条義時(小栗旬)の主君で、ここまで物語をけん引してきた鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(大泉洋)がついにこの世を去った。今までの頼朝像を覆す斬新なキャラクターは大きな注目を集め、数々の悲劇を引き起こすたびにSNS上で「全部大泉のせい」などと話題になった。その大泉が、ここまで演じてきた頼朝役と本作を振り返ってくれた。

源頼朝役の大泉洋 (C)NHK

-ここまで出演してきた本作の印象は?

 毎回素晴らしいんですけど、こんなことを言うと失礼かもしれませんが、今回は三谷(幸喜/脚本)さんの円熟期の集大成のような大河ドラマなのかなという気がします。海外のドラマを見ていると、やっぱりすごいじゃないですか。本当に面白いし、すごく重厚なものが多い。そこと比べてしまうと、どうしても日本のテレビドラマはどこか成熟していないような気持ちがあって。でも、今回の「鎌倉殿の13人」って、初めて「日本にもこんなにすごいドラマがあるんだ!」って自慢したくなるような…。あくまで僕の個人的な感想ですけど。

-改めて三谷作品の魅力を感じた部分はありますか。

 三谷さんが書いているので、単純な笑いの要素もあるんだけど、笑いから“どシリアス”への振り幅がすごい。ファンの皆さんがよく「風邪を引きそうだ」と言っていますが、本当にそんな感じですよね。笑っていたところからこんなシリアスになっちゃうんだとかね。

-その中でも特に印象的なエピソードは?

 (頼朝が、佐藤浩市演じる上総広常を謀殺した)第15回。やっぱりあんなに面白い回はないと思いましたね。あれで日本中から嫌われましたけど(笑)。あのときも三谷さんからメールが来て、「案の定、日本中を敵に回しましたね」って一言目に書いてあって、最後に「でも僕は大好きです」って(笑)。明らかに面白がっていますよね(笑)。

-本作の頼朝は、従来とだいぶイメージが違いましたが、どんな印象を持っていましたか。

 自分が演じる役ですから、皆さんが言うほど僕は嫌いじゃないです。彼がやっていることはとても正しいというか。でも演じる上では、どこか孤独な人というか、ちょっと生い立ちが不幸だったと思いますね。子どもの頃、家族を殺された上に、自分も伊豆に流され、人をなかなか信用できないところがあったんだろうなと。いろんな人に対して、頼朝なりの愛情はあったと思うんです。政子(小池栄子)や子どもたちだったり、義時や義経(菅田将暉)だったり…。ただ、彼にとって一番大事なのは、自分のことや、自分の一族のことなんですよね。全ては自分の、源氏の一族が末代まで繁栄できるようにということしか考えていないと思うんです。

-確かにそうですね。

 もちろん、兄弟は大事なんだけど、自分に取って代わる可能性が一番あるのも兄弟だったんですよね、あの時代は。だからやっぱり、義経にしても、範頼(迫田孝也)にしても、弟とはいえ排除せざるを得なかった。そこがまた、彼が孤独で人を信じ切れないからこそなんでしょうけど。ただ、あの時代を見ると、兄弟や親を排除することが実はものすごく多いわけです。今回はそこが見事に描かれちゃっているから、頼朝さんはどうしても嫌われちゃうんだけど、「みんなそうじゃないか!」と私は思ったりもするんですけど(笑)。

-そんな孤独で人を信じられない頼朝が、なぜ義時を信頼したのでしょうか。

 頼朝は、直感的な判断で人を見ていたと思うんですよね。義時については、もう会った途端から好きというか。義時は真面目だし、野心がない。そういうところを見ていたんじゃないですかね。結局、義時は頼朝に付いていき、どんどん変わっていってしまうわけですけど。そこもまた「大泉のせい」って言われちゃうんだろうな(笑)。

-おっしゃるように、義時はだんだん頼朝に似てきました。

 それが顕著になるのは、頼朝が亡くなってからだと思います。曽我兄弟の敵討ちの収め方とかも、義時ならではというか。そういう、とっても賢い人だっていうのを、頼朝は見抜いていたんじゃないですかね。

-なるほど。

 「鎌倉殿の13人」は、頼朝が死んで息子の頼家(金子大地)の時代になってからが本番。だから当初、小栗くんとLINEでよく、「早く大泉死んでくれないと困る」とか、「三谷さん頼朝を描き過ぎ」とか言っていたんだけど、最近になって「いやあ、頼朝さんは死ぬのが早過ぎた」って手の平を返された(笑)。頼朝がやっていた厳しい決断を、今度は自分で下しているんだろうなと想像しているんだけど。