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意外と良いかも !?福知山ぐらし 住まい・仕事・子育てを手厚くサポート

福知山城
福知山城

 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公、明智光秀が築いた城下町、京都・福知山。大河ブームで多くの観光客を見込んでいたが、残念ながらコロナ禍の影響は避けられなかった。そんな中、「移住者」に関しては、希望者の数が前年比でなんと2.5倍に増えたそうだ。現地を訪ね、移住者が急増した理由を探ってみた。

■交通の要衝として栄える

 福知山市は京都府の北西部に位置し、周辺を丹波の山々に囲まれた盆地。山陰地方と畿内をつなぐ交通の要衝として栄え、戦国時代には主君の織田信長に丹波平定を命ぜられた明智光秀が城下町を築いた。由良川(ゆらがわ)と土師川(はぜがわ)の合流地点にあたり、たびたび氾濫が起きたが、光秀が行った治水対策により現在の福知山市の礎が築かれた。

■無料でお試し

 「移住先で生活していけるか。地域になじめるか」。移住を考える人が持つ共通の悩みだろう。そんな時、気軽に“お試し”できるとありがたい。そんな望みに応えて、福知山市では入居から3カ月間は家賃が無料(共益費は月額千円)の「お試し住宅」を提供している。

 2LDKのマンションタイプと3LDKの戸建てがあり、家族利用でも十分な間取り。テレビや冷蔵庫を始め生活に必要な家電が完備されているため、何かと入用な引っ越し時の出費を押さえられる。4カ月目以降は使用料(期間により2,500円から17,400円)がかかり、最長で1年間お試し生活を送ることができる。

 市では住宅の賃貸と売買のマッチングサイト「空き家バンク」も運営していて、「お試し住宅」で生活する間に正式な移住に踏み切る利用者も多い。2020年度は「空き家バンク」の申込者数が、前年度65世帯から2.5倍増え165世帯になった。福知山市役所で移住者へのサポートを行う、まちづくり推進課の寺田武史係長は「移住者の傾向は若年層も多く、30~40歳でおよそ40%を占める。コロナ禍の影響やテレワークを活用し田舎でも仕事ができるスキルを持った人が増えた」と分析している。

お試し住宅 鬼の里Uターンプラザ1 (提供 福知山市)
お試し住宅 鬼の里Uターンプラザ1 (提供 福知山市)

 

■テレワークとパン販売

 昨今、耳にすることが多くなった「テレワーク」と「副業」で移住生活を送っているのが、イラストレーターの安岡恵美里さん。以前は鳥取県でチラシや商品のデザイン制作をしていたが、福知山市でパン工房を営む知人から誘われ移住した。現在は「お試し住宅」を拠点に、企業や飲食店のロゴマークなどをデザインする傍ら、週1回パン工房で商品販売を手伝う。パンのパッケージは安岡さんがデザインを担当し、花や草、動物が色鮮やかに、優しいタッチで描かれている。

イラストレーター 安岡恵美里さん
イラストレーター 安岡恵美里さん

 テレワークについて安岡さんは、「依頼主に作品を納品する場合、データで送ることが多いので仕事をする場所を選ばない。自然に囲まれた福知山は制作活動にも良い」と語り、副業のパン販売を「お客さんから自分がデザインした商品の反応をダイレクトに知ることができる」とイラストレーター稼業に生かしている。

 安岡さんを福知山に誘ったパン工房「まころパン」のオーナー岩切康子さんは「市が行うサポートがあることで移住のハードルが下がる。得意なことを生かす移住者からさまざまな刺激をもらっている」と話し、安岡さんがデザインしたメッセージカード付きギフトボックスなど、パンのインターネット販売にも力を入れている。

「まころパン」商品とメッセージカード
「まころパン」商品とメッセージカード

 

■新規就農で家族を養う

 特に若い世代では、住まいに加えて収入源となる仕事を現地で確保することが、移住するうえで大きな要素を占めるだろう。市では移住者の就業に向けて、オーダーメイドで行程を組む「福知山暮らし 体感ツアー」を手掛けている。それを上手く活用したのが、京都市から移住してきた森口和真さん。 

森口さん一家(左端 和真さん)
森口さん一家(左端 和真さん)

 コロナ禍の影響で飲食業からの転職と地方への移住を考えていた頃、「体感ツアー」に参加した。農業をしながら子育てをしたいという希望を市の担当者に伝えたところ、農家で移住経験者3人との面談を組んでもらえ、「人のつながりや地域を知ることができ、移住前に安心感が持てた」と森口さんは当時を振り返る。

 移住後に「三和ぶどう」農園を運営する会社を市から紹介され、地域ブランドを存続させるという使命感を抱き入社を決めた。農園ではブドウのほか、ショウガや枝豆、カブを栽培し加工品も手掛ける。森口さんは農業に関する知識を習得しながら、新しい栽培品種の育成や販路開拓にも意欲を燃やしている。

地域ブランド「三和ぶどう」 (提供 福知山市)
地域ブランド「三和ぶどう」 (提供 福知山市)

 

 現在は「お試し住宅」に妻のあおいさんと4歳の女児、生後4カ月の男児の4人で入居。前職より収入は減ったが、家賃などの出費も下がったため全く不満はない。夕方6時前には決まって帰宅し、家族との時間が取れる生活に幸福感を感じている。今秋には「お試し住宅」の利用期間が終了するが、「空き家バンク」などを活用して近郊でマイホームを探している。

お試し住宅 みわ上川合住宅 (提供 福知山市)
お試し住宅 みわ上川合住宅 (提供 福知山市)

 

 育児にはまだまだ手がかかるが、あおいさんは「近所のおばあちゃんが、買い物する時に子どもを見てくれたり、バスの運転手さんが気さくに声を掛けてくれたりと、地域全体で子育てをしてもらっている」と感じている。市とNPO法人が共同運営する子育て支援施設「すくすくひろば」の存在は、育児をする親たちのコミュニティーづくりにも活用できそうだ。

地域子育て支援「すくすくひろば」
地域子育て支援「すくすくひろば」

 

■まずは自己分析を

 森口さんが「体感ツアー」で立ち寄った農家民宿「ふるま家」。こちらを2012年に開業した沢田さやかさんも移住経験者。自身の体験から移住を考えている人には「今後求めることや実現したいことを書き出し、地方移住と都会生活の良い点と悪い点を整理して」と自己分析を勧め、移住後は「積極的に近所付き合いをしてほしい」と助言する。

農家民宿「ふるま家」
農家民宿「ふるま家」

 

■福知山は肉とスイーツのまち?

 福知山と言えば、歴史や自然といったイメージだが、街の魅力はそれだけではない。福知山肉まち協議会によると、人口10万人あたりの焼肉店店舗数は、都道府県別では石川県が「27.25軒 ※」でトップだが、福知山市に限定して換算すると、石川県を上回る「27.86軒」だという。明治時代に陸軍駐屯地があったことで食肉業が拡大し、家畜商や卸業者が増えたことが理由で、繁華街には精肉店や焼肉店がひしめき合う。
※出典:平成26年経済センサス 総務省統計局

高木屋 焼肉店にて
高木屋 焼肉店にて

 がっつり焼肉を食べた後でもスイーツは別腹。城下町として発展した福知山では、お茶の席や客人をもてなすため、お菓子づくりが昔から盛んだったという。加えて和菓子の材料となる栗や大豆、小豆はこの地方の特産品となっているという地理的優位性もあり、隠れた「スイーツのまち」が築かれた。

足立音衛門「栗のテリーヌ」
足立音衛門「栗のテリーヌ」

 

■「いがいと! 福知山」

 移住者にとって住まいや仕事、子育てに関する地域の手厚いサポートは大変心強いだろう。さらには、福知山から京都や大阪までは車や鉄道で約90分と、都市との程よい距離感も福知山の魅力のひとつ。普段は自然に囲まれてゆとりのある生活を送りながら、ショッピングや旅行の際、都市へのアクセスにも困らない。

 「いがいと! 福知山」が市のブランドメッセージ。移住を検討中の人はもちろん、歴史好き、肉やスイーツを堪能したい人は、ぜひ一度、福知山を訪ねてみては。意外な発見や出会いに巡り合えるかもしれない。