おでかけ

仁淀ブルーがつなぐ地域と人々 訪れた人たちを魅了する川の青さと心豊かに暮らす人々

 超巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に、少女の成長を描いた細田守監督の長編アニメーション映画『竜とそばかすの姫』が今夏に公開された。舞台となったのが、高知県の仁淀川流域だ。
 仁淀川は「仁淀ブルー」と称され、奇跡的ともいわれる川の美しさは全国的にも有名。ただ、仁淀ブルー流域の魅力は、川の青さだけではない。豊な自然の中で生まれた文化や歴史、そしてこの地域に暮らす人々と触れ合うことで、訪れた人はより魅了されるだろう。そんな仁淀ブルーの魅力を紹介する。

『竜とそばかすの姫』主人公のすずが通学で渡る浅尾(あそう)沈下橋
『竜とそばかすの姫』主人公のすずが通学で渡る浅尾(あそう)沈下橋

■神聖な青い滝つぼ「にこ淵」

仁淀ブルーの代表的なスポットの一つ「にこ淵」
仁淀ブルーの代表的なスポットの一つ「にこ淵」

 いの町清水程野(きよみずほどの)に位置する「にこ淵」。仁淀川の支流、枝川川(えだがわがわ)にある「にこ淵」は、仁淀ブルーの代表的なスポットの一つで、美しく幻想的なブルーを見ることができる。
 にこ淵は、水上の化身とされる大蛇がすむ場所で、地元の人は近寄らない神聖な場所とされてきた。滝つぼは、底の岩が見えるほどの透明度で訪れた人々はみな、その青さに息を飲む。太陽の光が注ぐ時間帯や光の角度、加減によって変わる光景は幻想的で、時がたつのを忘れてしまうほどの美しさだ。
 にこ淵へは、急な階段を下りていくため、動きやすい服装とスニーカーなどがおすすめ。神聖な場所のため、入水や飲食、トイレは厳禁。

■安居(やすい)渓谷県立自然公園

川底まで透明な水晶淵
川底まで透明な水晶淵

 仁淀川町の北部にある安居渓谷県立自然公園。西日本最高峰で日本七霊山の一つ、石鎚山系の豊かな森が源の安居渓谷は、安居川上流部に位置し、色とりどりの景色と仁淀ブルーの渓流が続く景勝地で、その長さは約10kmにも及ぶ。
 安居渓谷には、龍が滝を登っているかのような「飛龍の滝」や、背龍の滝、昇龍の滝といったマイナスイオンたっぷりのスポットをはじめ、渓谷の中で最も美しい「ブルー」といわれる水晶淵、水晶淵から少し上流にある砂防ダムの水のカーテンなど見どころがいくつもあり、季節や天気によって、その表情を変える。

水晶淵の奥の砂防ダム(提供:仁淀ブルー観光協議会)
水晶淵の奥の砂防ダム(提供:仁淀ブルー観光協議会)

 映画「竜とそばかすの姫」で、主人公・すずが幼少期を回想し、安居渓谷の澄んだブルーの中を泳ぐシーンでは、その美しさだけでなく、忘れかけていた懐かしく優しい思いが胸をよぎった人も多かったのではないだろうか。

■茶農家が作った究極のお茶スイーツ

茶畑プリン、茶畑 贅沢レアショコラ
茶畑プリン、茶畑 贅沢レアショコラ

 仁淀川町は、高知県内でも有数のお茶どころ。茶栽培の歴史は400年以上といわれ、仁淀川がもたらす澄んだ空気と朝霧、お茶の栽培に最適な寒暖差が、農林水産大臣賞を受賞するなど、全国でもトップレベルのお茶を育んでいる。仁淀川水系の斜面に広がる茶畑では、朝霧をまとった茶葉がたくさんの陽光を浴び、ミネラルをたくさん含んだ土によって「力強いテイストで、香りが強く、うまみが濃い」といわれるお茶が生まれる。

池川茶園
池川茶園

 この最高の茶葉を使った「茶畑プリン」が仁淀川町池川地区にある(株)池川茶園で製造・販売され、話題となっている。
 「茶畑プリン」は、池川茶園の代表取締役を務める山中由貴さんをはじめとする茶農家の女性たちが、1年以上の試行錯誤を経て2011年に発売を開始。当時、池田茶をはじめとする土佐茶の知名度は低く、高知でも素晴らしいお茶が栽培されていることを知ってもらうことが開発のきっかけだったという。

 茶畑プリンは「かぶせ茶プリン」と「ほうじ茶プリン」の2種類。かぶせ茶とは、1番茶の収穫2週間前にネットで覆い、直射日光をさえぎることによって苦みと渋みが抑えられ、うまみと甘味が凝縮したもの。香りが特徴のほうじ茶は、緑茶を工場で焙じてパウダーにしたものを、池田茶園でさらに焙煎。お茶のことを知り尽した茶農家がこだわった逸品となっている。さらに、地元の茶農家自らが採取している100%天然のはちみつを使い、まろやかな甘味に仕上げている。

池田茶園の山中由貴さん(写真右)、松田良子さん(同左)
池田茶園の山中由貴さん(写真右)、松田良子さん(同左)

 山中さんは「お客さまとお話しをすると、パワーをもらえて明るく幸せな気持ちになる。年に1品でも新しい商品ができたらと茶農家のみなさんと一緒に考えているが、お茶はとても繊細。あまり欲張らずにゆっくりと丁寧に作っていきたい。10年目を迎え、かぶせ茶とほうじ茶のショコラを作ったので、ぜひ皆さんに食べていただきたい」と優しいまなざしで語る。

 10年目を迎えた池田茶園では、お茶が飲みたくなるスイーツ作りをコンセプトに新商品「茶畑 贅沢レアショコラ」の販売を開始する。生チョコがふわふわな生地にサンドされ、かぶせ茶とほうじ茶の芳香さがが特徴。池田茶園ではカフェも併設。川の青さを眺め、池田茶園のみなさんと交流しながら、ぜひスイーツを味わってほしい。この土地の文化や暮らす人々を知ることで、仁淀ブルーはより美しく映るだろう。

 池田茶園は、伝統的なお茶の栽培と文化を継承しながら、土佐茶の可能性を広げていく。その挑戦はこれからも続く。

■仁淀ブルー流域の6市町村が協力し魅力を発信 体験イベントを広域で開催

 仁淀川流域の6市町村、「土佐市」「いの町」「仁淀川町」「佐川町」「越知町」「日高村」が協力しさまざまな体験プログラムに参加できる「仁淀ブルー体験博」が始まっている。仁淀ブルーと聞くと川をイメージしがちだが、この地域には文化や歴史、アクティビティ、グルメなど、まだまだ知られていないスポットがたくさんある。

 体験博では、地域の人々を通じてこれらの魅力に触れる33のプログラムを企画。絶景撮影バスツアーやナイトカヤックツアー、野鳥観察、サイクリングツアーなど仁淀ブルーの自然を存分に満喫するプログラム。そして、デイキャンプ、フライキャスティング、ハイキングをはじめ、現役狩猟ハンターと一緒に楽しむわなしかけ競争や、苔テラリウム作り、まき割りとまきで炊く「羽釜ごはん」作り、シェフによるデザートのデコレーション教室、ヒノキを使ったお弁当箱作り、現在建設中の地下放水トンネル見学ツアーなど、趣向を凝らした地域ならではのアクティビティも盛りだくさんだ。
 仁淀ブルー流域の歴史と文化に触れるなら、土佐和紙や和紙を使ったアクセサリー、はがき、手帳作りなどの体験、旧池川町の散策、断崖絶壁に建立された聖神社の参拝、塩、鍛冶、かつお節、干物などの職人による講座や体験会も。土佐和紙は、福井県の「越前和紙」、岐阜県の「美濃和紙」と並び、三大和紙と呼ばれ千年の歴史を持つといわれる。

道の駅土佐和紙工芸村「くらうど」QRAUDでは土佐和紙を使ったさまざまな商品も
道の駅土佐和紙工芸村「くらうど」QRAUDでは土佐和紙を使ったさまざまな商品も

 さらにこの地域には、おいしい食べ物や飲み物が豊富。「うなぎ」「きじ」「土佐赤牛」「栗」「日本酒」「塩」をはじめ、廃校となった小学校を活用し自家焙煎されているコーヒーも。

大正軒のうなぎ定食(うなぎ、うざく、うまき)
大正軒のうなぎ定食(うなぎ、うざく、うまき)
大正軒のうなぎ
大正軒のうなぎ

 6つの市町村、体験プログラムを実施する事業者と協力し、体験博の企画・運営に携わる一般社団法人仁淀ブルー観光協議会の西岡由紀さんは、「仁淀ブルーは天気や時間によっても景色が変わる。天気が良い日は澄んだ水の色や映り込む景色が美しく、雨が降った翌日には滝の水量が増し迫力もある。移りゆく色は美しく、季節ごとにさまざまな表情を見せる。そして、地域のみなさんは、とても温かくてオープン。ぜひ地域のみなさんとコミュニケーションを取りながら楽しんでほしい」と語り、「今年の体験博に参加した方々から嬉しい反響もいただいた。来年も体験博を開催したい」と未来を見据える。西岡さんは、旅行で訪れた仁淀ブルーに魅了され、昨年この地に移住した一人だ。

一般社団法人 仁淀ブルー観光協議会の西岡由紀さん
一般社団法人 仁淀ブルー観光協議会の西岡由紀さん

 仁淀ブルー体験博は、11月下旬まで開催されている。体験プログラムは開催日程や参加人数が限定されているため、詳細は仁淀ブルー体験博公式サイト(https://niyodoblue.club/)または、仁淀ブルー観光協議会(TEL:0889-20-9511)で確認を。

 体験博では、さまざまプログラムを通じて地域の人々触れ合うことができ、その体験はきっと仁淀ブルーの魅力をさらに知るきっかけとなるだろう。

 映画「竜とそばかすの姫」で描かれていた「一歩を踏み出す勇気、そっと優しく寄り添ってくれる人々」。この土地は、訪れた人々にそんな勇気を与えてくれる場所かもしれない。