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【コラム】関心は早くもポスト総裁選

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 いよいよ9月7日に自民党総裁選が告示となる。だが、3選を目指す安倍晋三首相は国会議員票のみならず、党員票でも圧勝する見通しで、ファンファーレが聞こえる前に順位が確定した感がある。のみならず、台風や地震などによる大型自然災害の発生は、現職の安倍首相に一段と有利に働く。「これでは総裁選はますます盛り上がらない。天まで石破を見限った」(石破派若手議員)と嘆く声も聞かれる。

 だが、永田町は静まり返っていると思いきや、すでに関心は選挙後の党役員人事と内閣改造に集まっている。永田町の住民たちは国民生活や国際情勢には無頓着でも、人事に関しては目と鼻がすさまじく利く。「各派の領袖が安倍を支持しているのは、一にも二にもポストのためだ。干されるのが怖いのだろう」(政治部デスク)と言い切る者さえいる。

 最も注目されているのは、時折奇怪な行動を取ることも噂される二階俊博幹事長の処遇である。すでに議員を引退している高村正彦氏が副総裁を降りれば、二階氏が「昇格」するとの見方もある。だが、二階氏周辺は「幹事長として失敗はない。オヤジの恩を忘れて副総裁に祭り上げようとすれば、倒閣運動が始まるだろう」(二階派若手議員)と強気である。

 幹事長人事をめぐっては、甘利明元経済再生相や菅義偉官房長官の名前も浮上している。とりわけ安倍首相は、盟友の甘利氏を何らかの形でもう一度表舞台に上げたいといわれている。岸田文雄政調会長の横滑りを期待する者もいるが、安倍3選を支持するバスに乗り遅れたツケは大きい。結局、大山鳴動しても、二階氏の留任で落ち着くかもしれない。

 安倍首相のまな板の上には竹下派も載せられている。竹下亘会長は総務会長であるにもかかわらず、自派の参院議員とともに石破支持に回った。石破陣営の選対本部長には竹下派の尾辻秀久元参院副議長が就いたが、多くの衆院議員は安倍支持を鮮明にした。選挙後の人事次第では、竹下派は分裂騒動に突入する可能性もある。

 竹下派を弱体化させれば、安倍首相にとって大きなメリットがもたらされる。いずれ竹下派の一部と石破派が合流するとの見方もあるため、非主流派を徹底的に干すことにより、安倍首相は退任後も影響力を残せる。竹下氏を総務会長ポストから降ろせられれば、安倍首相は「お友だち」の下村博文元文科相を充てる選択肢も手に入る。

 入閣運動を巡っても、激しさが増している。麻生太郎副総理兼財務相は何らかの形で政権中枢に残ると見られているし、主要閣僚も留任する可能性は高い。だが、野田聖子総務相や林芳正農相を交代させるとなると、その後任が注目される。女性閣僚は誰なのか、小泉進次郎氏は入閣するのか、といった話題が、永田町雀たちの中でささやかれている。

 いくつかの閣僚ポストは、総裁選の論功行賞で決まる。このため、入閣適齢期の〝大臣病患者〟たちは、目の前にぶら下がるニンジンを追い求めて懸命に選挙運動を繰り広げている。とりわけ萩生田光一幹事長代理や西村康稔官房副長官などは初入閣を目指し、「見え見え、やり過ぎ」(閣僚経験者)と、やゆされるほど躍起になっている。

 役員人事と内閣改造は9月の最終週にも行われる予定であるが、派閥連合政権の色彩を大きく失うとは考えにくい。だが、総裁としての安倍首相の最後の任期である以上、「安倍色」がより鮮明に放たれることになる。このため、安倍首相の真の評価は総裁選における得票数よりも、来月の内閣支持率のほうに正しく表れるはずである。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)