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【コラム】参院選後を見据える石破氏

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 安倍晋三首相の圧勝だと思われていた自民党総裁選。だが、ふたを開けてみれば、石破茂・元幹事長は31.5%の得票率を記録し、それなりの存在感を示した。とりわけ「石破は党員票で善戦」との世論調査に安倍陣営は強い危機感を抱き、石破陣営を切り崩しにかかった。安倍首相は否定したが、斎藤健農相(当時)は「石破氏を支持するなら辞表を書け」と圧力を受けたと公言したほどである。永田町ではその“犯人”は某経済閣僚だと見られている。

 もっとも、石破氏の“善戦”には異論もある。“石破嫌い”で有名な麻生太郎財務相は、「どこが善戦なんだ」と切り捨てた。麻生氏は選挙前にも「派閥解消と言っていたのに言行不一致」「党首が暗い顔でいいのか」とこき下ろした。石破氏は「ずれている」と反論したが、麻生氏に代表される根強い“石破嫌い”が永田町に蔓延していることが、石破氏の最大の敗因である。石破氏の議員票における得票率は18.2%にすぎなかった。

 安倍首相が期待していたほどの党員票を獲得できなかったという意味では、完全勝利からほど遠い。一方、たとえ“善戦”だとしても、総得票数が安倍首相の半分にも満たなかった点では、石破氏は間違いなく敗北を喫した。それに加え、石破票の何割かは“親石破”ではなく、“反安倍”であったと見ることができる。このため、「勝者なき総裁選だった」(無派閥中堅議員)との表現が最も正しい。

 通常、選挙が終われば、少なくとも当分の間は、敗軍の将は兵を語ってはならないし、勝者を批評してもいけないものである。しかし、石破氏はノーサイドどころか、むしろ意気軒高と安倍政権に対する批判を繰り返す。党員票の44.7%の支持が、石破氏の強い自信になっているのだろう。無役の石破氏がマスコミに露出するには、政権批判しか道がないのも確かであるが、「石破さんこそ、われわれの鑑(かがみ)」と真顔で語る野党議員もいる。

 安倍首相が3選を果たすと、次の総裁選は3年後であるかのように断じるマスコミもあった。だが、石破陣営が見据えているのは3年後などではなく、来年の参院選後に他ならない。「参院選で与党が大幅に議席を減らせば、安倍降ろしが始まる」(閣僚経験者)と確信しているからである。「亥年(いどし)選挙は自民党に不利」ともいわれるが、野党協力が実現すれば、自民党の苦戦は現実味を帯びる。

 一方、首相官邸はあの手この手で政権の求心力を維持しようと躍起になっている。山下貴司氏を法相に一本釣りし、領袖としての石破氏の顔をつぶしたのも、その一環である。日朝首脳会談の可能性を示唆したり、北方領土問題解決の燭光を見せたりするのも、さらには来年の衆参同日選挙をにおわせたりするのも、政権のレームダック(死に体)化を何とか阻止するためである。

 しかし、「在庫一掃内閣」とやゆされるように、第4次安倍改造内閣の評判は出だしから芳しくない。今後、憲法改正問題で与党内がぎくしゃくすることも考えられる。来年4月の地方選で自民党にすさまじい逆風が吹けば、「安倍では参院選は戦えない」との声が大きくなりかねない。石破氏は虎視眈々(たんたん)と「閉店セール内閣」になることを待っているのだろうが、ポスト安倍が石破氏になるとは限らないのが政治の世界である。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)