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オホーツクの流氷と山々が育む豊かな漁場 全国の水産業者が絶賛する枝幸(えさし)ブランド

オホーツクの流氷と山々が育む豊かな漁場 全国の水産業者が絶賛する枝幸(えさし)ブランド 画像1

 全国の水産業者が絶賛する質の高い水産物を供給し、わずか8,500人ほどの人口ながら年間の水揚高が100億円を超える町がある。北海道のオホーツク海に面する枝幸町(えさし町)だ。南北に総距離が58kmもある海岸線と山々に囲まれた枝幸町は、北海道で流氷が一番早く接岸する町としても知られる寒冷地で、内陸部の歌登(うたのぼり)地区は、冬になると気温がマイナス30度を記録することも珍しくない。

■オホーツクの流氷と山々の澄んだ水が枝幸の海を豊かな漁場にする

山々からの澄んだ水が海に流れ込む。写真奥は「最北の名勝 北オホーツク道立自然公園 北見神威岬」

 枝幸町で水揚げされる水産物がおいしい秘密は、その海にある。

 北海道、サハリン、カムチャッカ半島、千島列島に囲まれたオホーツク海にはアムール川(ロシアと中国の国境を流れる川)から淡水が流れ込む。アムール川の淡水はオホーツク海の海水と混ざり、塩分の少なくなった海水は表面に浮き、塩分の多い海水は下に沈む。海中で塩分の少ない層と多い層の二層ができ、12月初旬には塩分濃度が低い層が結氷し、流氷が作られ始める。

 アムール川の近く、シャンタル島付近で凍り始めた海は、大陸棚の浅い部分を覆い、南に範囲を広げていき、流氷となって1月下旬から2月の間には枝幸に接岸する。

 枝幸の海は、沖合数十kmにかけて大陸棚があり、遠浅な地形で海底の多くが砂地になっている。春になると、山間部に積もった雪が溶け出し、土の下の地層にゆっくりと時間をかけてしみ込み、濾過されミネラルをたくさん含んだ水は川となり、枝幸の海に向かっていく。流氷の底部で繁殖した植物プランクトンは栄養豊富な枝幸の海によって育ち、枝幸の海は豊かな漁場となるのだ。

 豊かな海を守るためには人間の努力も必要だ。枝幸では、「100年かけて100年前の自然の浜を」「子や孫に水産資源と豊かな環境を引き継ぐ」を合言葉に沿岸漁業を守るための植樹活動を行っている。1983年から漁協の女性部が中心となり始まった活動は、現在までに1万8,900本以上のアカエゾマツやヤチダモ、ヤマハンノキなどを植樹するまでになっている。また、2007年には枝幸「魚(うお)つきの森」植樹協議会を設置。「東都生活協同組合」「枝幸漁業協同組合」「北海道漁業協同組合連合会」の三者が協定を結び、交流企画や植樹活動を行う。

■水揚げ国内最大級の毛ガニ

身がぎっしり詰まって、ミソも甘い枝幸の毛ガニ:枝幸町提供

 寒さも残り、春の便りが少しずつ聞こえ始める3月の中旬。枝幸町では毛ガニ漁が始まる。道内の市場でも最高級の評価を受ける枝幸の毛ガニ。その水揚げ量は年間232tに及び、国内最大級を誇る。枝幸では、専用の「カゴ」を用いる「カニカゴ漁」で身がギッシリと詰まった毛ガニをとる。また、メスの毛ガニや規定のサイズ以下はとらないことで、水産資源を守る。

 枝幸では、毎年7月の第1日曜日とその前日に「枝幸かにまつり」が開催される。開催場所となる「ウスタイベ千畳岩」には毎年全国から約2万人の観光客が訪れ、にぎわいを見せる。ウスタイベ千畳岩は、それ自体が景勝地であるだけでなく、全面芝生のキャンプ場も隣接しており、キャンプシーズンにはキャンピングカーが200台以上も並ぶことがあるという。カニを食べるためのハサミとビニールシート、お土産用のクーラーボックスは「枝幸かにまつり」の3種の神器だ。

■食感がシャキシャキ!!のホタテ貝柱

水揚げされるホタテ

 6月になると、枝幸ではホタテの漁が始まる。枝幸ではホタテの漁場を4つに区切り、1年ごとに区画をかえて稚貝を海に放し、4年間成長させて収穫する「4輪採制」を採用している。外敵の駆除や改良が行われた海底の砂地の中で4年間、たっぷりと栄養を蓄えたホタテが育つ。

 枝幸沖の砂地で育ったホタテの貝殻は薄く、他で水揚げされたものと比較すると一目瞭然だ。ゴツゴツした石の中で生活しているホタテは、石に当たっても割れないように貝殻が厚くなるが、枝幸沖の砂地で育ったホタテの貝殻は薄く繊細。栄養をぎっしりと蓄えた枝幸のホタテは、貝柱の高さも群を抜いて高い。

 枝幸のホタテは旨味・甘味成分のグリコーゲン値が日本一高い。そして、なんと言っても貝柱の「シャキシャキ」とした歯ごたえが特徴的だ。地元の人に「枝幸のホタテってどんな?」と聞くと、みんなが口をそろえて「シャキシャキしている」と言う。歯ごたえのあるホタテの貝柱を食べたことがない筆者だったが、生の貝柱を食べて実感した。本当に“シャキシャキ”なのだ!。そして甘みと旨みがジワーっと口の中に広がる。

 水揚げされたホタテは、厳密に衛生管理が施された加工場に運ばれる。加工場では、カラを開き、不純物があれば取り除き、貝柱の形を整える。これらの工程はすべて手作業で、丁寧に行われる。そして貝柱は、鮮度保持・冷凍を行う施設に運ばれる。2011年4月から稼働する枝幸町の「水産物鮮度保持・加工処理施設」には、加工場から海水に入れられ鮮度を保持した状態の貝柱が次々と運ばれてくる。同施設では、ホタテの貝柱を「トンネルフリーザー」と呼ばれるシステムで瞬時に冷凍する。

 同施設のトンネルフリーザーはホタテの貝柱を15分前後で瞬間冷凍。その処理能力は1時間に約800kg、1日に6.5tの瞬間冷凍を行う。芯から瞬時に冷凍した貝柱は、風味と食感が失われることなく、とれたての味そのままの状態で、日本全国各地をはじめ、中国、台湾などに運ばれていく。

とれたてのホタテ貝柱は食感がシャキシャキ!!

■町が推し進める未来への戦略

 枝幸町も町を挙げてオホーツク枝幸ブランドを強力にバックアップする。「加工機能の強化」「水産物のブランド化」「基幹産業と連携した産業観光づくり」「観光客を呼び込む戦略を見据えた商品開発」「継続的な人材育成」などを地域と連携しながら進める。

 また、食品の安全・安心に対する国内外の意識が高まる中、枝幸町内の食品製造業者に対してHACCP(危害分析重要管理点)取得も支援する。そして、町内の各飲食店で旬の食材を生かした料理が提供できるような体制も順次構築していく予定だ。

 枝幸町の担当者は「地域資源、体験観光、産業観光なども進めながら、枝幸をブランド化しPRしていきたい」「ふるさと納税などを通して、おいしい水産物を食べてもらう事で枝幸を知り、ぜひ来てもらいたい」と語る。

 2017年度、枝幸町へのふるさと納税額は3億円を超えた。ふるさと納税の返礼品には、「毛ガニ」や「ホタテ」をはじめ、枝幸町の銘品が並びリピーターが多いという。一年で一番ウマいとされる春の毛ガニを目当てに、すでにふるさと納税の申し込みが多数きている。

オホーツク海から故郷の川に遡上するサケがジャンプ!!
野生のシカにも会える自然豊かな枝幸
天の川が肉眼ではっきりと見える枝幸の夜空:枝幸町提供

 近年、海水温の急激な変化により、日本中の漁場に影響が出ている。オホーツク海に面した豊かな漁場をもつ枝幸も例外ではない。北海道全域で秋サケが不漁など深刻な事態に直面し、我々の食卓にも影響が出ている。そんな困難な状況下にあっても、地域資源を活用しながら、水産物の高付加価値化や優良特産物を創出し続ける「オホーツク枝幸ブランド」は、一度食べればきっと忘れられない味となるに違いない。

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