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【コラム】耳をすませば衆参同日選の足音

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 「大もめ」と見られていた今国会だが、12月10日で閉会となる。新たな外国人材受け入れのための改正出入国管理法をはじめ、漁業法や水道法の改正案も、多少の波風が立っただけで成立した。とりわけ改正出入国管理法にはまだまだ多くの疑問点があるにもかかわらず、官邸の鶴の一声で強引に制定された。野党の主張にはそれなりの理はあったが、そもそも野党が国民から“正党”と見なされていないから、“正論”を唱えても高い支持を集めない。

 しかし、今国会でその野党勢力に決定的な変化がもたらされた。それは日本維新の会が「や党」から「ゆ党」になり、一段と「よ党」に近づいたことである。もともと維新の会は他の野党と一線を画してきたが、先の通常国会で統合型リゾート(IR)実施法が成立し、さらに7年後の大阪万博の開催が決まったことで、自民党との距離が一気に縮まった。自民党内には「総理と菅さんの努力が実った」(閣僚経験者)と持ち上げる声もある。

 維新の会との連携が強化されたのであれば、向かうところ敵なしで、臨時国会を延長してしかるべきであった。だが、与党は年末にかけて、税制改正や来年度予算案の編成作業があるものの、国会全体としては“冬眠”に入る。のみならず、来年1月下旬に召集予定の通常国会でも、新年度予算案以外に大きなテーマは見当たらない。「いよいよ来年は改憲論議」と豪語する者もいるが、まだ機は熟していないとの見方が多数である。

 与野党にとって来年の最大の課題は、7月の参院選で勝つことに他ならない。亥(い)年は統一地方選と参院選が行われるため、与党にとって“厄年”だといわれる。実際、12年前は自民党が惨敗を喫し、安倍晋三首相は惨めな退陣に追い込まれた。さらにその前の1995年は村山富市政権が逆風にさらされた。今回も参院選で与党が大敗すれば、安倍首相の悲願である憲法改正は夢のまた夢となるどころか、退陣の二文字が点滅することになる。

 そこでうわさされているのが、衆参同日選である。党執行部の一人も「あり得る。準備を怠ってはならない」と否定しない。参院選単独であれば、改憲勢力が3分の2を割り込む可能性は低くないだろうが、同日選ともなれば、与党の底力が発揮される。仮に自民党と公明党で3分の2の議席を持てなくても、「ゆ党」の維新の会の協力を得ることで、改憲発議の道は閉ざされない。

 もちろん衆院選にはそれ相当の争点が必要とされる。本来であれば堂々と憲法改正を俎上(そじょう)に載せるべきであるが、仮に安倍首相が解散に打って出るのであれば、6月に初めて日本で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議での成果、そして日露関係の方向性を国民に問うことが考えられる。そして野党が依然として「ボーっと生きていれば」、官邸の思惑はまんまと成功しかねない。

 同日選はまだまだうわさレベルである。マスコミが安倍首相に尋ねたとしても、「全く考えていない」との常とう文句が返ってくることは間違いない。たとえ安倍首相がそのような初夢を見たとしても、口にすることはあり得ない。しかし、通常国会が始まれば、同日選は徐々に信ぴょう性を帯び、議員たちは浮足立つのではないか。気丈に振る舞う安倍首相だが、12年前のトラウマは深く残っているはずである。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)