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M&Aで成長戦略の実現を 中小企業の事業承継問題で大規模セミナー開催

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 企業の合併・買収(M&A)に関するさまざまな可能性を提案する大規模なセミナー「M&Aカンファレンス2019」が2月26日、東京都港区台場のホテルで開かれた。M&Aを支援する「日本M&Aセンター」(三宅卓社長)が主催。昨年に次いで2回目で、中小企業経営者ら、企業関係者を中心に2600人を超える参加者が、16人の講師の話に熱心に耳を傾けた。

 冒頭、三宅社長は「中小企業の事業承継は待ったなし。66%の企業は後継者がいない。2025年までに83万の企業が消滅していくとのレポートもある。成長戦略を実現していくためのツールとしてM&Aを使っていこうという企業が増えている。劇的に進化するM&Aを感じてほしい」とあいさつした。

六つのメガトレンド

 講演は分科会も含め四つの会場で同時並行して進められた。市場調査で知られる矢野経済研究所(YRI)の水越孝社長は「M&A未来予測」の題で講演。今の日本は大きく六つのメガトレンドがあり、その中で成長産業を考えるには何を理解するべきかについて解説した。要旨は以下の通り。

矢野経済研究所の水越孝社長

 ①日本の人口が減る一方で世界の人口は増加している。やがて地球の容量がいっぱいになる。新たに海洋プラスチック問題などが起きてきた。ビジネスチャンスはある。

 ②日本の高齢化は進んでおり、世界も次第に高齢化していく。日本は高齢化で先端を行っているので、世界が追い付いてくる前にどんなビジネスができるかどうかだ。

 ③日本企業が国内と海外で稼ぐ国民総所得(GNI)と外資系も含め日本国内で稼ぐ国内総生産(GDP)との乖離(かいり)が広がっていくことを認識すべきだ。キーワードは内需縮小、移民、都市間格差など。

 ④人工知能(AI)が進めば、取り残される人が出てくる。日本は覚悟しなければならない。

 ⑤YRIによる上場企業の経営企画担当者へのアンケートで、日本の成長を考えるための視点として「環境・エコロジー」が最も多かった。

 ⑥新興国の成長は続くが、格差は埋まらない。キーワードは中間層の拡大。貧困の固定化、テロの拡散など。

M&A未来予測

 M&Aセンターによると、中小企業を中心に経営者の高齢化が進み、後継者問題が深刻化している。2017年の調査で「後継者がいる」と答えた経営者(社長)は33.6%で、全国的に企業存続の危機が広がっているという。その中で、18年のM&Aの件数は前年比26.2%増の3850件と過去最高となった。

IT企業のM&Aが年1000件超に

 「業界M&Aセッション」と題した講演では、M&Aセンターの渡部恒郎・上席執行役員が、ベンチャーの起業家がM&Aによって上場企業の役員になるケースを紹介。4人の業界担当者から、IT企業のM&A成立が昨年、1000件を超えたことや、調剤薬局担当からは「街の薬屋が増え過ぎ、買収などで淘汰(とうた)が始まっている」ことなどの説明があった。

 「成長戦略型M&A」のセミナーでは、M&Aセンターの竹内直樹取締役が、ショッピングセンターなどで子どもに人気があるガチャガチャの専門企業「あミューズ」(愛知県刈谷市)が、株式交換の手法を使って成長を実現したケースを紹介した。

 セミナーは基調講演などを除き、16分野に及び、参加者から要望が強かったという「M&A法務」は、会場に入り切れずにサテライト会場でスクリーンを通して講演を聴く参加者も出るなど関心の高さを示した。

「M&A法務」のサテライト会場

時間管理と働き方の多様化

 各講演に先立ち、元東レ経営研究所社長の佐々木常夫氏が基調講演した。障害のある長男と、病気で入退院を繰り返した夫人など家族の話を紹介しながら「定時に帰宅して家族と過ごす大切さ」を強調した。仕事と私生活の両立ができない最大の理由は「長時間労働と非効率労働」と指摘。「ビジネスは予測のゲームだ」とした上で「先手、先手で仕事をすればきちんとしたタイムマネジメント(時間管理)ができる」と話した。

元東レ経営研究所社長の佐々木常夫氏

 最後に、国内グループウエア市場でトップシェアの「サイボウズ」の青野慶久社長が特別講演。離職率が28%だった同社が働き方改革で4%にまで改善した経営手法について話した。青野社長は「IT企業は残業が当たり前だった」と述べ、社長就任直後の05年には「4人に1人が1年後には会社にいなかった」と振り返った。新たな採用を繰り返し、社員教育などに時間がかかるので「効率が悪い。それなら辞めないように引き留めた方がいい」と発想を転換。時短勤務、在宅勤務、子連れ出勤、副業の自由化といった人事制度の多様化に踏み切った。青野氏は「日本の会社は労働時間と勤続年数を重視し過ぎている」と指摘し「〝わがまま〟は駄目ではない。モチベーションの源泉になる」と働き方の多様化が重要だと強調した。

サイボウズの青野慶久社長