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【コラム】国会議員のお盆休み

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 お盆休みが始まる。例年、永田町のセンセイたちにとって夏、とりわけお盆の間は“御用繁多”である。新盆まわりと夏祭りへの顔出しで、自分の先祖に手を合わせる時間もないほどである。招待されてなくても嫌な顔をされず、それでいて票に結び付きやすいから、センセイたちにとっては最も効率的な地元活動だといえよう。

 しかし、コロナ禍で今年はそうした光景は見られない。この半年間、身内だけでひっそりと済ませられる葬儀も多く、新型コロナウイルスの感染者数が増加の一途をたどっている中、たとえ相手がセンセイやその秘書であっても、弔問に来られること自体、迷惑に思われる。全国の夏祭りも、ほとんどが中止となっている。

 センセイたちが地元に戻って知り合いに会っても、このご時世、握手や長話は敬遠され、せいぜいで“エアタッチ”か“グータッチ”を行うのが関の山である。集会や会合を企画しても、声を掛ける方も、掛けられる方も困惑一色となる。フェイスシールドを着けて街頭演説をしても聴衆から気の毒がられ、まばらな憐憫の拍手に苦笑いをするしかなかったというセンセイもいる。

 もっとも、若い世代のセンセイたちは物心がついたときから近くにパソコンとインターネットがあり、これまでも会員制交流サイト(SNS)を活用してきた。だから「3密」を避けながらの地盤培養は全く苦になっていない。「従来の対面式の活動よりも、SNSを駆使した方が多様な支持層をつくれる」(若手議員)といった意見も聞かれる。

 だが、問題はネットが不得手なセンセイたちである。戸別訪問とミニ集会、握手と酌にエネルギーの大半を費やしてきたセンセイたちにとり、「3密」の回避はそのまま活動の休止を意味する。還暦を過ぎた衆院3回生議員は「今、やっている地元活動といえば、中元のお礼状を自分で書いていることくらいだ」とやるせない声で話す。

 それならば、この機会に夫婦で旅行でも、といった考え方もある。多くのセンセイたちは地元に妻子を置き、人知れぬ苦労をかけている。ご夫人方が喜々とするかはともかくも、公務も政務もない時期に奥さん孝行を試みても罰は当たるまい。日頃から地元の活動を一手に引き受けている夫人の労をねぎらうことも、間接的ながら、大事な地盤培養活動である。

 しかし、それもかなわないらしい。「こんな時期に旅行に行ってバレたら、『国会も開かずに何をしているんだ』と罵声を浴びせられるだろう。それに、たとえ全額自費であっても、『Go To トラベル事業』を使ったと思われる。国会議員は今、何をしてもたたかれる」(前出の3回生議員)という。

 例年なら、国内が駄目ならば外遊という方法もある。外国を訪れ、実際は何をしているのか分からないことも多いが、公用旅券を用い、それなりの日程を立ててもらえれば、もっともらしい「不在の理由」となる。しかし、国会議員といえども、コロナ禍で外国訪問もままならない。ゴールデンウイークのみならず夏休みも、国会議員の外遊は皆無だという。

 得てしてセンセイたちは回遊魚のように動き回るのが大好きで、じっとしていていたり、一人でいたりするとすさまじい不安に駆られる。かつては寸暇を惜しみ、書物を読みあさったり、座禅を組んだりするセンセイもいたが、今では昔話の類である。永田町でも確実に“読書離れ”が進んでいる。

 それぞれの地域のセンセイたちの「お盆の過ごし方」に注目してみると、意外に面白いかもしれない。そしてそれは、これから14カ月以内に行われる衆院選で票を投じる際の一つのバロメーターにもなるはずである。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。