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弱みを強みに、脅威を機会に 逆引き「SWOT」分析の効用

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 新型コロナウイルスの感染拡大で景気が大きく停滞しているが、このようなときこそ、SWOT分析の「強み」「機会」を追うのではなく、「弱み」「脅威」を「強み」「機会」に変換させる逆引き「SWOT」をお勧めしたい。あなたの「弱み」はもはや「弱み」でなく「強み」であり、同じくあなたの「脅威」はもはや脅威でなく「機会」となる。災い転じて福となすはまさに今、目の前で起ころうとしている。

 

 SWOTとは、米国スタンフォード研究所SRI)のアルバート・ハンフリーらが考案したといわれる経営計画や戦略策定の手法であり、組織の持つ強み(Strengths)・弱み (Weaknesses)、 組織の外的環境に潜む機会(Opportunities)・脅威(Threats)を分析することで、それぞれの頭文字をつづったものである。

 このSWOTと2軸で「田」の字で整理したものがSWOTを拡張させたクロスSWOT分析だといわれる。

 このSWOT分析を使うには注意が必要である。現状の「弱み」や「脅威」は本当に「弱み」なのか? 「脅威」は本当に「脅威」なのか?ということである。

 筆者は、青山学院大経済学部で「まちづくり」について講座を担当しており、今年はリモートでの授業を強いられている。授業に緊張感を持たせるため、こまめな小レポ―トを提出させることにしている。

 「商店街の再生について」をテーマに自分の好きな商店街を選んでこのクロスSWOT分析の手法で商店街の活性化を提案させた。

 そこで出された「弱み」「脅威」は以下のようなものであるが、果たして本当にそうなのだろうか? 学生たちの列挙した「弱み」「脅威」を角度を変えてそれを「強み」と「機会」に転換させてみた。

 なお、このようなSWOTの結果を逆に転換させることを、ここでは「逆引きSWOT」という。

 ビジネスを現状や変化の兆しをそのまま受け取るのは誰にでもできること。周囲と同じ行動をとることで競争が激しい分野に身を置くことになり、採算も徐々に悪化、撤退や廃業の可能性も否定できない。

 それよりも、「弱み」「脅威」を転換させた「強み」や「機会」を実行に移す方が現行の人的資源などを活用でき、実現可能性が高い。

 また自社などの「強み」や「機会」を列挙しようとしても意外と頭に浮かんでこないが、「弱み」や「脅威」となると結構浮かんできて、逆引き「SWOT」による戦略案にも厚みが増す。ここで、参考までに、学生たちにこの逆引きSWOTを教える前と後の事例を紹介しよう。

 【通常SWOT】

 私はSWOT分析を用いることで、商店街の課題を解決していきたい。

 この商店街の内部要因の強みは「歴史がある老舗が多い」、弱みは「店舗が老朽化している」、外部要因の機会は「オリンピックの競技会場に近い」、脅威は「地域高齢化による来客数の減少」で、内部要因の強み「歴史がある老舗」と外部要因の機会「オリンピックの競技会場に近い」を掛け合わせた戦略では、オリンピックにちなんだ共同ブランド開発により、商店街来訪者数の増加をねらう。

 【逆引きSWOT】

 私は今度は逆引きSWOT分析を用いることで、商店街の課題を解決していきたい。この商店街の内部要因の弱みである「店舗が老朽化している」、外部要因の脅威である「地域高齢化による来客数の減少」を強みと機会に変換すると、弱みの「店舗が老朽化している」は「共通の店構に改築」し統一感あるファサードの実現、脅威の「地域高齢化による来客数の減少」は「域外からの来訪勧奨の機会」となる。この共通の店構に改築し統一感あるファサードを実現させ、域外からも来訪者を誘導し商店街来訪者の増加をねらう。

災い転じて…

 この前者「通常SWOT」では、オリンピックが予定通りの開催となった場合、開催時のみの効果であり、一過性の戦略であるのに対し、後者の「逆引きSWOT」では商店街の長期的視点に立った戦略となり、後者の方が結果的に効果的だと判断される。

 コロナ禍による影響についても脅威といわれているものも、「来店客が減る」→「宅配・ネット販売の開始などと、「機会」に転換することができる。

 新型コロナの感染リスクを回避するために否応なく進められている対策、例えば「テレワーク」は、距離を離れても仕事が遂行できることが証明され、今後は勤務先近辺に住む必要がなくなり、空気の澄んだ生活環境重視の地域で生活も仕事も済ませることができるようになる。

 まさに「災い転じて福となす」時代の到来だろう。SWOT分析を行う際には「弱み」「脅威」を先ず押さえ、それらを「強み」「機会」に変換する。この手法を「逆引きSWOT」として、経営戦略策定に活用し、難局を乗り越えられることに期待したい。

[筆者略歴]

植嶋 平治 (うえしま・へいじ)

学校法人臨研学舎東北メディカル学院専務理事、東北医療福祉事業協同組合理事。1976年、大阪市立大商学部卒。青山学院大経済学部非常勤講師