ビジネス

振り切った多角化(?)にはこんな事例がみられます

振り切った多角化(?)にはこんな事例がみられます 画像1

信金中央金庫 信用金庫部 上席審議役 佐々木 城夛

 地域を問わず、わが国事業者にはかねてより「倒産・廃業・事業休止>創業・事業再開」の図式がみられていましたので、既に事業者の総数が減少していくすう勢が現れてきています[図表1]。こうした中で、創業・第2創業や事業承継だけでなく、新事業への展開によって競争力を高めることについても、改めて注目される向きが認められる模様です。

 図表1で示したとおり、わが国の企業の大部分を中小企業が占めますが、その中小企業での新事業展開の実施状況が2016年11月時点で調査され、中小企業白書にも掲載されています[図表2]。

 筆者の個人的意見では、①~④で示した値が大きくなるほど対応が難解になると考えるのですが、取り組んだ企業の比率は、①②が逆転しているのが特徴的です。③になると6社に1社、④では20社に一社とがぜん取組企業が絞り込まれてもいます。

 企業の新事業展開を支援するため、官庁・自治体からもさまざまな助成がなされています。12月現在で実施中の助成には、県単位のほか、市区町村単位のものもみられます[図表3]。

 そんな中で、今回ご紹介したいのは、図表2上では③に該当する多角化の事例です。具体的には、「ガソリンスタンド(給油所)」と「生鮮野菜製造販売事業」という、ちょっと聞いただけでは関連性がなかなか想像しにくいユニークな多角化を図った事業者についてです。

 神奈川県横浜市に本社のある鶴見油脂(株)は、1939年1月に創立され、横浜市内にサービスステーション(ガソリンスタンド)を2店舗構えています。その一方で、かねてよりサービスステーション事業に過度に依存しないよう不動産賃貸業などの新事業への展開が図られてきました。

露地栽培=6月12日、鶴見油脂提供
栽培用ビニールハウス内=8月5日、鶴見油脂提供

 生鮮食品事業は、横浜市の本社からアクアラインを経由して約78・6キロ走行した先にある千葉県市原市で行われています。2006年5月に開業・販売が開始されましたが、当初は赤字続きでした。現在では、多数の個人・法人顧客を抱えるなど経営が軌道に乗り、路地栽培のほか、10棟の栽培用ビニールハウスを抱えるまでになっています。

 取り扱っている生鮮野菜は唐辛子だけで、外国原産のハバネロ、ハラペーニョ、トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー、キャロライナ・リーパー、ブート・ジョロキア、プリッキーヌ、セラーノのほか、在来品種の青・赤唐辛子、鷹の爪、島唐辛子も製造・販売しています。

トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー=2019年8月19日、鶴見油脂提供
キャロライナ・リーパー=2019年8月10日、鶴見油脂提供
鈴なりに実る唐辛子=2013年8月8日、鶴見油脂提供

 ごく私的な話になり恐縮ですが、筆者自身はタコス用のサルサソースを自作するためにハラペーニョ中心に購入しています。7~8年前に、生で購入できる先を探していた中で販売ブランドである“ペッパーフレンズ”にたどり着きました。その後、何回か反復継続的に発注する中で製造販売元が「鶴見油脂株式会社」であることを気に留めるようになり、法人名に不思議な印象を受けたため検索したことが、今回の紹介の切欠です。

 限られた経営資源の中で事業の再構築を模索あるいは逡巡されている経営者の方は少なくないと思いますが、今回の事業者のように振り切った事例もみられます。こんなユニークな取り組みからは、産業アナリスト目線でも目が離せません。

青唐辛子も種類別に収穫・選果=2018年6月22日、鶴見油脂提供