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〜DX/デジタル化はじめの一歩〜 DX/デジタル化のキモは業務部門にあり

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 さてこのコラムも4回目で後半戦に入る。

 前回はDXの本質である「人と組織・企業文化」について掘り下げた。

 そのなかで【DXに踏み出せない企業文化あるある】として「DXをやらなきゃいけない認識あるが、自分には関係ない」という例を挙げた。

 具体的には、「『自分は専門外』『ITは苦手』と恥ずかしげもなく発言する経営陣」や、「『DX=システム刷新』『DXはIT部門に考えさせればいい』と自分には関係のない話だと思っている業務部門」と記載したが、ドキッとした方もおられるのではないだろうか。

 ということで、今回は「DX、自分には関係ない」と思っている人が多いであろう「業務部門」にスポットライトを当てる。

 

今から始めるDX推進のカギは最前線で働く「業務部門」

 

 まずは現実を見てみよう。

 業務部門のあなた、こんなことはないだろうか。

 「今の業務、紙エクセルでなんとかしているけど、情報が散乱、管理も属人的で全体像や状況がスピーディーに把握できない。環境の変化が激しいので、このままだと他社から後れを取ってしまう、もうそろそろ限界だ。リモートワークもできないし。早くITでどうにかしたくてIT部門にお願いしているけど、あの人たちも忙しいから期待できないんだよな。システム作ってくれたとしてもなーんか思ってたんと違うし、変更したくてもまたリクエストしなきゃいけないし、業務の説明時間も結構かかるし。どうにかならないかなぁ。はぁ〜(ため息)」

 IT部門のあなた、こんなことはないだろうか。

 「『このデータを分析したい』『この業務を見える化したい』『このプロセスを自動化したい』…いろいろな部署からいろいろなリクエストが上がってくるけど、業務を把握できていないので、そのヒアリングをするだけでも相当な時間がかかるんだよなぁ。既存システムの運用保守でも手一杯だし、さらに上からはDX推進しろって言われているし、最新技術の勉強時間も欲しいし、そんなにあっちもこっちもできないよ。はぁ〜(ため息)」

 

 …これが悲しい現実である。

 これは健全な役割分担というよりも、お互いがわかり合えていない「分断」である。協創して同じゴールを目指しているとは言い難い。

 こんな状態でDXを推進できるだろうか? ここには厳しい未来しか見えない。

 「使う人」と「作る人」が分かれていることの弊害は想像以上に大きいのだ。

 この業務部門とIT部門の「分断」が「協創」の形に変わってこそ、DXにつながる新たな企業文化を育むひとつの要素となる。

 それぞれが得意なところを自律して進め、融合させることで真の協創が生まれるのだ。

 特に、覚悟を決めるのは業務部門だ。

 自分たちの業務は自分たちが主体となって自律的にデジタル化する。これが実は一番スピードが速い。外部環境の変化に合わせた修正も簡単だしコストも削減できる。両者悲しい「思ってたんと違う」がなくなるのも大きい。

 実際に自分でアプリケーションをつくってみて、スピード感を肌で感じ、インサイトを感じてさらに修正などを加えていくと、業務部門にもデジタルの勘所がついてくる。

 まさにこれが「デジタルの民主化」の第一歩。DX企業文化が育つ大きな第一歩だ。

 

大企業の業務部門が覚悟を決めて実際にやってみた「デジタルの民主化」

 

 ITは今や手段というよりも「前提」の世の中である。専門外、苦手、という言葉は通用しない時代なのだ。

 なにも怖がることはない。最初は「IT苦手」とおっしゃっていた方々が自律的にデジタル化を進めている例を何度も見てきた。

 実際に弊社が業務のデジタル化をご支援している業務部門の方々の「覚悟の想(おも)い」を紹介しよう。

 とある製造業の人事部課長さんのお言葉。

 

 「自分たちの業務ですから、自分たちで変えていかないと!」

 

 当時この企業では、従業員の家族情報変更や通勤補助など何十種類とある人事系の申請書はすべて紙だった。書類が回付されるのに相当な時間を要するだけでなく、不備があった場合は本人に電話確認。申請した人もどこで承認が止まっているのかまったくわからない状態だ。

 さらに紛失のリスクなど多くの課題を抱えていた。社員7000人のユニフォーム申請や在庫はエクセルのマクロを駆使して管理。いずれ破綻するのでは…と不安も抱えながらの運用だった。働き方改革が叫ばれるなか、ITを利用することで自分たちの業務を効率化できるのではないかとずっと考えていたという。

 しかし、IT部門は忙しく、業務部門のデジタル化は後回し。そこで、自分たちで開発できるノーコードツールを採用し、人事部主導で人事系申請業務のデジタル化に取り組んだ。そして若手メンバー中心になんと3カ月で20業務のデジタル化を実現したのである。

 

 もうひとつの事例。とあるメーカーの人事部若手女子。

 こちらも人事申請系の紙業務があふれていて、その運用は限界に達していた。いよいよトップからの号令で全社をあげてのデジタル化がスタートした。しかし彼女らはITに関してまったくの素人。だが、力強くこう言われた。

 

 「全社をあげてデジタル化を推進していくというトップの言葉で、私たちも自律的に取り組まなければ後がないと覚悟を決めました」

 

 実際に私も現場に赴いていろいろ話をうかがったが、彼女たちからは真の覚悟が感じられた。

 そして、繁忙期のなか、地道にデジタル化に取り組み、自分たちの力で数十の紙業務をデジタル化した。彼女たちの熱心さと開発スピードに私も驚いたものだ。

 人事関連の申請書類のデジタル化は人事部の彼女たちだけではなく、全社員の業務効率につながった。

 

業務部門の「真の願い」はDXにつながる要素

 

 この二つの事例に関して、彼らの真の願いは「本質的な業務や未来に対して時間を使いたい」である。ITはあくまで手段のひとつでしかない。彼らは、効率化された未来の業務の姿を見据えてモチベーションを上げていた。

 人事部などのバックオフィスだけではない。ビジネスの最前線で戦っているマーケティング、営業、商品開発の部署などもオペレーション業務は意外に多く、本質的な業務に十分な時間を費やせていない方は多いのではないだろうか。

 今、テクノロジーは進化しており、このような業務を簡単にデジタル化できるツールが出てきている。それがノーコードツールである。

 ノーコードツールはレゴを組み立てるような感覚で業務をデジタル化できる。0を1にしてしまえば、この後の変更もたやすい。外部環境の変化に合わせて業務プロセスを変えなければならないとき、わざわざIT部門にお願いすることもなく、自分たちで即座に変えられるのだ。これは大きなメリットだ。市場の変化に即座に対応できる柔軟性を得るだけでなく、コミュニケーションコスト、失敗のコストがかなり減るのだ。

 そして、上記の事例であげた人事部若手女子からは「最初は戸惑ったんですが、慣れてくると楽しいんです。今ではそこまで時間をかけずにアプリケーションをつくることができます」といううれしい感想をいただいた。一度覚えると楽しくなり、あれもこれも試してみたくなる。効率化のアイデアが生まれるだけでなく、ITを生かす考え方になるのだ。

 たまったデータを見て、どういう傾向があるのかの分析や、このデータが何か未来に使えるのではないか?という新しい発想。業務部門のデジタルマインドセットが醸成され、未来のDXにつながるのである。

 そして、忘れちゃいけないIT部門。上述の二つの事例についても、裏で業務部門を支えていたのがIT部門である。IT部門のサポートがあったからこそ、業務部門が「自律」して「継続的に」業務のデジタル化を進めることができるのだ。

 

  ×  ×  ×

 ということで、今回は業務部門にスポットライトを当て、DXにつながるための自律的な業務デジタル化について語った。

 次回はもう一方の「IT部門の役割」をお話ししたい。業務部門が自律的に自らの業務についてデジタル化を進められたとしても、実はそれだけでは組織は変わらない。IT部門の役割も重要なのである。DXにつながる真の協創についてお話ししたい。

 

【この記事の執筆者】

金井 優子(かない ゆうこ)

株式会社ドリーム・アーツ 社長室 コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャー

大手SIer出身。データ分析・活用をきっかけにシステムエンジニアからマーケティングに職種をチェンジ。現在はコーポレートマーケティング業務で自社のブランディング確立に奮闘中。

・企業サイト: https://www.dreamarts.co.jp/

 

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